19

…こんな感じで外からやりとりを見るのも久しぶりだ…



養成学校の時以来だから……約7年振りぐらいか。



あの時は訓練やらカリキュラムやら暗殺やらで大変だったけど充実してたなぁ…



二人してゴニョゴニョと話し合いをした後に女の子を元気づけるためのアレコレを話してるのを見て、少し昔を思い出す。




…そんなこんなでたまに襲ってくる魔獣どもを4人で蹴散らしながら進んでると廃坑に到着。



「…報告通りやなぁ…」



網が張られた鉄のドアが少し開いており、刃物で切られたのであろう鎖が地面に落ちている。



「…この切断面は…」


「?どうしたの?」



切られた鎖を拾って綺麗に斬られた切断面を見て呟くと少年が覗き込んできた。



「…いや…どう思う…?」


「…コレは…」



少年には適当に返して女に鎖を渡して聞く。



「??鎖がどうかしたの?」


「…コレはおそらく…チェーンカッターかワイヤーカッターで、切られている…」



良く分かってない少年に鎖を見せて説明する。



「え?それがどうかしたの?」



…説明した所で少年は事態を察してくれなかった。



「なるほどなぁ、あの黒騎士の仕業では無いっちゅー事か」


「…もし、あの黒騎士なら…引きちぎるか、大剣で斬るハズ…」


「ああ!そういう事か!…って事は誰が?」



女の子とおっさんの言葉でようやくわかったのか、少年は首を傾げる。



「…どう思う…?」


「…罠、かも知れない…」


「撹乱させるためにワザとカッターで切ったって可能性もあるでえ?」


「罠?撹乱?」



また少年は俺らの話について行けずに置いてけぼりだった。



「…ココには何が…?」


「ただの炭鉱のハズなんやけど…撹乱なのか隠れて傷を癒してるのか分からへんなぁ…」


「…撹乱……なら、本命は…?」



敵の動きを予想しようとしてるのか女の子が顎に手を当てて考え始める。



「ジキミナ洞窟やと思う、あの洞窟には鍵が必要な封印された宝が隠されてるっちゅー噂があんねん」


「…なるほど…」



鍵ってのはあの黒騎士が奪って封印を解いた物だろう。



…そうなると封印された宝ってのが気になるな。



鍵にも封印が施されてたらしいし、宝にも鍵+封印っていう厳重さ。



しかもただでさえ厳重なソレを更に隠すっつーね。



とはいえ噂は噂。



もしかしたらそんな仰々しい物は存在せずにただの噂だった…で終わるかもしれない。



それか実際に存在してても隠されてる場所が洞窟じゃない…とか。



「…つまり、どういう事?」



うーむ…と、この先どうするか…をおのおの考えてると少年が聞いてきた。



「…ココにいるのが、黒騎士かどうか分からない…という事だ…」


「あー、なるほど!…でも行ってみないと分からないんじゃない?」



こういう時にこの単純さが羨ましくなる。



「そうやなぁ…洞窟の方はカーラちゃん達に任せてあるし」


「よし、じゃあ俺たちはこの廃坑を調べよう!」



もしハズレだったらどうするんだ?と喉まで出掛かったがなんとか呑み込みついていく。



女の子も俺と同じ考えなのか少年の言葉に賛同はせずについて行った。



「…昨日も来たけど…何度入っても不気味だな…」



廃坑内を歩き回りながら少年がボソッと呟く。



「長年使われてへん場所やからなぁ…わいが子供の頃から廃坑やったし」


「…だから骨が見えたり、ちょっと腐ってたりする魔獣も多いのかな?」



周りで襲おうか否か探ってる魔獣達を見ながら歩を進める。



「…ここは異常なしだ」



地上?一階を歩き回り異常が無い事を確認して作業用エレベーターで下に降りた。



…なんで廃坑になって長いのに機械が動くのか謎だが…



多分、ギルドの人達が定期的に巡回しているんだろう。



地下一階を歩き回るも異常は無いらしい。



俺は初めて来たからどこがどう普通なのか分からないが。



魔獣達も様子見をして襲って来ない中、地下二階へ降りた。



「…もしかして、ハズレ…?」


「いや、まだ分からんでぇ…廃坑は地下四階まであるんやから」



地下二階を歩き回ってる最中に女の子が呟くもおっさんが微妙に否定する。



…地下四階まで降りて何もありませんでしたーじゃ単なる時間の無駄だな。



結局地下二階にも異常は無いらしく…そのまま地下三階へ。

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