18



ユサユサ、ユサユサ。



「…ぅ……?」



朝、まだ寝てから三時間程度しか経っていないのに誰かに身体を揺られている。



「…朝…」


「…もうそんな時間か…」



目を開けると何故か女の子が俺を起こしに来てた。



ふあ~…と出るあくびを手で覆い、眠気と戦いながらベッドから出る。



「…ギルドから、呼び出し…」


「…なに…?」



なんの脈絡もなしにいきなり珍しく俺を起こしに来た理由を説明した。



「…ミルディは、先に行ってる…」


「…そうか」



おそらくドアを叩いても反応が無いからわざわざ起こしてくれたんだろうな。



俺は急いで準備を済ませて女の子と一緒にギルドへ向かう。



「あら、これで全員ね?こんな朝早くに集めてごめんなさいねん」



ギルドに入ると俺と女の子を見た受付のオカマが周りを確認して謝る。



「かまへんで、それで?何か分かったんかいな」


「ええ…ついさっき他のギルドから連絡があって…どうやら廃坑の鎖が壊されてたらしいの」


「廃坑…もしかしてマーセル炭鉱かしら?」



オカマの説明にセクシーなお姉さんが顎に手を当てて何かを考えながら聞く。



「そうよ、昨日ミルちゃん達に調査依頼をお願いした場所」


「ジキミナ洞窟やない…やと…?」


「…あの炭鉱に何かあるのかしら?」


「昨日行った炭鉱に奴らが逃げ込んでるって事?」



おっさんとセクシーなお姉さんが考え込んでる最中に少年が質問した。



「ソレは分からないわ…でも可能性はあるわねん」


「…よっしゃ、ワイがこの坊ちゃん達とその廃坑を調べて来たるわ」


「なら私はその廃坑について調べておくわ…洞窟の方は他のギルドに任せても大丈夫かしら?」



…なんか知らんがとんとん拍子で話が進み、おっさんが少年のパーティに加わるらしい。



…流石は主人公属性、どんどん仲間が増えていってるねぇ。



果たして古代兵器に辿り着くまでに何人仲間ができるのやら。



内心軽く呆れつつも何も言わずに少年達についていく。



「ヨディさん、あの廃坑って何かあるの?」



街から出て廃坑に向かってる道中で少年がおっさんに質問した。



「いや…ただの潰れた炭鉱のハズや」


「じゃあなんでそんな所に…」


「「…人が居ないから、隠れるにはもってこいの場所…っ…!」」



俺と女の子の言葉が重なりお互いを見るも一瞬だけで直ぐに視線を前に向ける。



「…なるほど…ってか、ナナシさんとメルトってなんか似てるよなぁ」


「嬢ちゃんとこの……男がなぁ?」



おっさんは俺に何かしらの言い方を付けようとしたが失敗したのか普通の言い方になった。



「うん、二人共クールだし…頼りになる所とか」



…どこが似てるのか、を挙げるがほとんどの人に当てはまりそうなぐらい大雑把過ぎる。



「クール…なぁ…わてから見たら澄ましてる無口な奴にしか思われへんけど…」



なぜだかおっさんは俺だけを見てそう呟く。



「…澄ましてる…」


「ああ!嬢ちゃんの事やないで!嬢ちゃんはクールで可愛いし!なあ!?」



女の子が俯くとおっさんが必死にフォローして俺たちに振った。



「いや…確かにメルトってどこかすまし顔のような気も…」


「!?…あ、アホ…!…こういう時はなぁ…!」



何かしらフォローするだろうと期待していた少年の口から追い討ちのような言葉が飛び出し…



おっさんが慌てて少年を引っ張ってなにやらゴニョゴニョ耳打ちする。



「…ふふっ…賑やかに、なったね…?」


「…そうだな」



その様子を見て何故か俺に笑いながら言ってきたので軽く賛同した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る