20

「…誰や?」



地下三階を歩き回っていると行き止まりの薄暗い場所で人が座っていた。



おっさんが話しかけるも返事はない。



「…昨日来た時、こんな人居たっけ?」


「…居なかった…」



まるで座って寝てるような人を見て少年が振り返って聞いてきた。



「なんや、死んでるんかいな?」


「…いや、死んではいない…」



微かに呼吸音が聞こえるのでただ休んでるか寝てるかのどっちかだろう。



「って事は寝てるだけか…もしもーし」



果敢にも少年が座ってる人の肩を揺らす。



「…ん…?あア、何か用カ…?」



バンダナを着けていた男は顔を上げると少年とその後ろにいた俺たちを見て尋ねた。



「なんでこんな所で寝てるんや?」


「…あア…いつの間ニか寝てたのカ…」



ちょいと威圧気味なおっさんの雰囲気を全く気にせずにバンダナはキョロキョロと辺りを見る。



「な、なんか呑気な人だなぁ…」


「…こんな所で、良く寝れる…」


「おっト…君達ハここら辺ノ人達かイ?」



妙な訛り方をしたバンダナは立ち上がってズボンの埃を払いながら聞く。



「え?いや…俺たちは違うけど…」


「そうカ…いやナ、下に降りル為のエレベーターを探しテるんだガ…」


「…それなら、あっちに…」



女の子は親切にも作業用エレベーターがある場所を指差す。



「そうカ、ありがとウ」


「待ちぃ!何で下に行くんや!」



歩き出したバンダナを制止するようにおっさんが質問した。



「何デ…?用があるからニ決まってルじゃないカ」


「用…?あ、そうだ!ここら辺で黒い鎧を着けた人を見なかった?」


「…黒イ鎧…?いヤ、君達以外の人ハ見てないナ」



バンダナはこっちを振り向かずに歩きながら応答する。



「他に人は見てない…?って事は、あの鎖は…」



…この少年、頭が良いのか悪いのか分からなくなってきた。



いきなり俺たちが考えついた事を察しよくバンダナに聞く。



「鎖…?あア、そう言エば…マスクを被っタ男達が何かしてたナ」


「マスクを被った…っちゅー事はやっぱりココで当たってたんか?」


「…あの、戦闘員達…?」


「…何カ心当たりデもあるよう……っ!?」



バンダナはため息を吐きながら振り返ると二度見するように俺を見る。



「youは…!ピエロ…ピエロじゃないカ!」


「「「「…ピエロ…?」」」」



急に小走りで近づいて来たバンダナに、俺を含めた全員が頭にハテナマークでも浮かばんがごとく首を傾げた。



「こんナ所で会うなんテ…奇遇だナ!」


「…えーと…ナナシさんの知り合い?」


「いや…人違いだと思うが…」



ピエロってなんだよ…一体どこのどいつと間違えてんだか…



いきなりフレンドリーになったバンダナに困惑しつつ少年の問いに否定で返す。



…つーか俺のどこがピエロなんだよ、東洋の顔だからって中華の雑技団の誰かと間違えてんじゃねぇ?



西洋の人達からしたら東洋の顔は見分けがつきにくいっていうし。



養成学校に居た頃は周りに東洋出身なんて居なかったから実際は本当か分からないけど。



「ナナシ…?…そうカ…イや、失礼しタ…人違いだっタ」



バンダナは何かを察したのか誤魔化そうとする。



「やっぱり…人違い…?」


「そういえば…前も間違われた事あったよね?」


「…そういえば、あったな…」



ショコラの時の事を言ってるのか少年が思い出したように聞いてきた。



「なんや東洋では珍しくない顔やからなぁ…量産型フェイスっちゅー事やでぇ」


「ヨディさんって東洋とか行った事あるの?」


「ああ、中華合衆国っちゅーとこに旅行でな」



なぜかおっさんの思い出話にシフトしてソレをペラペラ喋りながら作業用エレベーターに乗る。

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