6

「っ…!きゃ…!!」



威勢よく魔法陣から出たは良いが…



部下の突進からの一撃で気絶した模様。



そんで修行開始わずか10秒で瀕死に。



…気絶したら攻撃が止むなんてルールは無いよ?



「う……!…え…?何が…」


「速攻でやられた」



女の子の髪を掴んで魔法陣の中に入れると目を覚まして辺りを見渡した。



「うそ…!」


「ホント、ほら…ボーッとしてねぇで戦え」


「は、はい!」



戦い方も知らない一般人がいきなり強い魔物と戦うなんて普通なら無謀もいいとこだ。



ほーら、一撃食らったら気絶してどんどん攻撃を食らう。



…もう服もボロボロじゃねえか、随分パンキッシュなファッションだこって。



他の部下達も女の子にはあいつ一体で十分って事が分かったからか居なくなってるし。



大方森の中で遊んでるかのんびり過ごそうとしてるんだろうな。



あ、一応この森はかなり広範囲に渡って魔札で結界を張ってあるってば。



だから森の中は俺と女の子と部下達以外は弱い魔物か動物しかいないよ?



そんでこの結界に覆われた森に出入りできるのは俺の影移動とか、空間移動とかいったのでしか無理。



俺以外は出れないし入れないようにしてる。



だって修行の邪魔が入ったりしたら面倒じゃん?



部下達を狩ろうとする無謀なアホ共とか来そうな気がしないでもないからねぇ。



とかなんとか考えつつも、瀕死になった女の子を魔法陣に戻す作業を続けてます。



魔法陣から出る→攻撃食らう→気絶or吹っ飛ぶ→攻撃食らう→瀕死→回収→回復→最初に戻る…の繰り返し。



まだ5分ぐらいしか経ってないはずなのに回収は二桁を超えたぞ。



なんのために剣を持ってんだよ…と思いはするけど剣を触った事も無い一般人が急に扱えるワケもない。



女の子が持ってるあの剣でも刃の部分だけで2kgぐらいの重さだハズ。



まだ十何歳の訓練も受けてない子供なら持つ事さえも難しいだろう。



そんな物を振り回すっつー事も無理があるか…



…まあ俺は8歳ぐらいから刀を使わされてたけど。



とりあえずあの女の子じゃ鞘から刀身を抜くのも難しいかも。



ってかソレはさておき…この女の子の精神力?心構え?が凄い。



痛い思いって表現じゃ生温いぐらいの激痛を受けてるのに、良くもまあ直ぐさま魔法陣から飛び出せるモンだ。



複雑骨折、粉砕骨折、内臓破裂に、深い切り傷での重傷を負っての大量出血…とかの重体レベルの怪我だよ?



しかも約15秒毎に。



普通なら拷問って言われてもおかしくないぞ、マジで。



「…その持ってる剣でガードしたら?」


「え?」


「いや、こうやって両手で持って…受け止める的な感じで」



魔法陣に戻す作業を30回超えたあたりで見てられなくなったのでアドバイスを一つ。



「…なるほど、分かりました!」



女の子は剣を俺と同じ様に持って何かを確かめたのか直ぐさま魔法陣から出て部下の所に走った。



一撃目をなんとか受け止めるも衝撃に耐えられず剣を手放し軽く吹っ飛ぶ。



そして追撃を食らい瀕死状態に。



…やっぱり基礎が無いとスタートラインにも着けねぇよな…



とはいえ今から基礎を作るとしたら最低でも一年は必要になるからねぇ…



うーむ…やはりにやはりを重ねて努力って大事だねー、に辿り着くか…



ひたすら死にかけて死にかけて死にかけてもらって何百何千と実戦経験を積み重ねるやり方から変更は無し…っつー事で。



…おそらく三日目からは多少戦えるようにはなると予想。



「…おっと、そろそろかな…」



日が沈み始め空が夕焼けに染まりだす時間帯。



女の子の負け戦の回数が三桁をとっくに超えた頃に俺はある事を思いだした。



そろそろあの少年達の所に戻らないとマズイんじゃね?という事を。



「おーい、後は頼んだぞー」


「…え?どこか行くんですか?」


「ああ、ちょっと用事があってな…タンスにジャージが入ってるから明日からはソレを着けろよ」


「あ、はい」



下着姿でほぼ全裸に近い女の子にそう指示して俺はその場を離れる。



「んじゃ、とりあえず一週間頼んだぜ」



森の中を歩いてると部下の一体に遭遇したのでそう告げて木に隠れるようにしてある場所に影移動した。



…さて、声を変えて…服装も変えて…っと。



あ、影移動する際の血は女の子が大量に流した血を少しちょうだいしたよ?



つーワケで適当に準備を整えて俺が少年に技を授けた場所に影移動する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る