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「…げっ」



地面に書いた魔法陣を足で消しながら小型無線機を開くと…



ディスプレイに表示されてる着信件数を見て思わず顔が引きつる。



表示されてるのは藍架から5件、メイド達から1件…



そしてリザリー、マキナ、ショコラ達から計22件。



この短時間でどうやら合計28件の着信があったらしい。



リザリー達はさておくとして、メイド達と藍架からというのは…



特に藍架からかかってくるとか超珍しいぜ。



だがとりあえずメイド達からだな。



「あー、あー…んんっ、あー…よし」



足で消しつつ声を元に戻しながら電話をかけた。



「もしもしー?」


「あ、お忙しい中すみません…」


「今は大丈夫だから、で?用件は?」



更に謝ってきそうな雰囲気だったので次に口を開く前に用件を聞くことに。



「あ、お恥ずかしながら、忙しい時間を割いていただくほど大した用ではありませんけど…」



現メイド長だと思うメイドが躊躇ったように変な前置きをする。



「へえ?」


「…一昨日、ミーシャちゃんのお友達の女の子が家に来まして『私も鍛えて下さい!』と頭を下げられたのですが…」


「は?」


「当然丁重にお断りしてその日はお帰りになられました…ですが昨日、そして先程も来られまして…」



一昨日と同様に『私も鍛えて下さい!』と頭を下げられたのですが…如何致しますか?と困った様子で聞いてきた。



「いや、如何致しますかって…普通に考えて鍛えるのは無理じゃね?…とりあえず才能と素質が無いと無理って本当の事を言っとけば?」


「分かりました、この程度の事で煩わせてすみませんでした」


「いや、まあ…うん、一応聞けるなら事情とかも軽く聞いといてくれる?」



おそらく電話越しに頭を下げてるんだろうな…と思いつつその女の子の事がちょこっとだけ気にかかったのでお願いする。



「…分かりましたでは…」


「あ、出来たら今日そっち行くから」



切られる前に焦って早口で伝えて電話を切った。



さて…次は藍架だなぁ。



魔法陣を消し終えたので更に人気の無さそうな山の奥へと進みながら電話をかける。



「もしもし?」


「もしもしー?あたしゃだけどー?」


「…程人…か?今、大丈夫なの?」


「ん、さっきはちょいと立て込んでてねぇ…直ぐに出れなくて悪かったな」



とりあえず好感度を上げとくために先に謝った。



「立て込んでる?あんたニートなんじゃないの?」


「いやまあ、ニートでもトイレ中とか買い物中とか…日常で立て込んでる場合もあるじゃん?」


「じゃあ今はヒマって事でいいの?」


「ん~…そだなぁ…先の事は分からんが今はヒマ」



流石に家族旅行に出かけるから二~三日家でお留守番してて?とか言われるとキツイので曖昧に濁す。



「今は?…まあいっか、ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど…」


「手伝って欲しい事…?お前ら忍者の倒すべき敵である、妖怪の、この俺に…か?」



…この状況で誘き寄せられて罠に嵌められたんじゃ面倒くさい事この上ないから皮肉混じりに聞く。



「…それってどういう意味で言ってるの?」



藍架はムッとしたような…怒ってはないが、少しキツめのSボイスで聞き返してくる。



…おう、こういう声が好きな俺って実はマジなマゾなのかもしれない。



「どういう意味だと思う?…つーのはさておき、今ちょこーっと面倒な状況でさ…誘き寄せられて罠に嵌められるのは勘弁願いたいんだよ」



前半はニヤニヤしたような少し意地悪するようにふざけた感じで言って中盤から真面目に話した。



「…そんな事してどうするの?誰が好き好んで火の中にダイナマイトを放り込むと思う?」



はぁ…とため息と共に呆れられたように言われる。

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