17

「…来る…」



みんなで辺りを警戒しながら進んでるとショコラがボソッと呟く。



当然俺はナニカが近づいて来てるのは分かってたけど。



ショコラにバレないように反応してない、気付いて無い振りをしてたんだよ?



…ホントだよ?



「クオオオォォ!!」



良く分からん咆哮と共に上から降って来たモノは黒い皮膚に覆われたでっかい魔獣。



そして図ったかのようにちょうど俺たちの目の前に着地する。




…んだこりゃあ…?超逆三角形のような変な見た目だぞ…



筋骨隆々の上半身にポニーのような下半身。

牛とカバを足して二で割ったようなまぬけな顔。

背中に絶対に飛べないであろう小さい羽。

極めつけは尻尾がうなぎみたいなニュルニュル。



上半身だけが異常にデカく、下半身が不釣り合いな程に小さい。



…魔獣のキメラか、こんなのは初めて見たぜ。



「ふふ、ようこそお出で下さいました」



急に魔獣の頭の上に灰色のスーツを着てる優男のような外見をした悪魔が現れた。



「「「!!?」」」



ショコラも含めた三人が優男の登場に驚くので一応俺も合わせて驚いたフリをする。



「おや…?あ…」

「俺の事をバラしたら殺すぞ」



優男が俺に気付いたようなので他の三人に聞こえないように囁いて脅す。



普通なら聞き取れないけど悪魔なら普通に聞こえるだろう。



「っ…!今ココでやり合うのはマズいですね…」



流石に七大魔王直轄の悪魔将軍ともなれば俺の実力ぐらい分かるか。



…もしかしたらデモゴルゴンのやつから漏れてるかもしれんし。



「?なにを…?」


「「???」」



ショコラも少年も女の子も…



状況が理解出来てないように不思議そうな表情で首を傾げた。



流石に…ねぇ?



灰色のスーツを着た優男が急に現れたと思えば目を少し見開いて驚き、顎に手を当てて考え始める…ってのは状況が理解出来なくても仕方ないと思う。



俺だって何も知らないでこんな状況になったら三人と同じ反応をするだろ。



「ふむ…とりあえずただの実験なので…」


「え?」



突然優男…アスモデウスがショコラの前に移動して手刀で攻撃する。



ショコラは状況が全然理解出来てないにも関わらず普通にココアを抜いて手刀を受け止めた。



そして剣と手が衝突した際にギィン!と鉄同士がぶつかったような音が。



「「っ!?」」



その音で戦闘が始まった事に気付いたのか少年と女の子は目の前の光景に言葉が出ないくらい驚いている。



…どうやらアスモデウスの移動しての攻撃も、ショコラが剣を抜いて防いだのも全く目で追えてなかったっぽい。



「貴女のような実力者では相手にならないので、この場から退場していただきます」


「…遊んでくれるの?」



アスモデウスの言葉にショコラは嬉しそうに笑うが目が獲物を狙う猛獣のようにギラついていた。



「ええ…少しの間ですが一緒に踊りましょう、ただし油断すると即お終いの死の円舞曲ですが」



…アイツ、いちいち言い方がアレなんだよなぁ…



まあ今の優男の外見に合わせたキャラの言い方だろうけど。



でも…ツッコませてくれ、死のワルツってなんやねん!



内心俺がツッコむと一人と一体はどこかへ移動して居なくなる。



…この場に残されたのは未だに状況が理解出来てない子供二人と俺、そして魔獣のキメラ。



「ブーゥモオオオオ!!」


「え?え?」


「…状況が、理解出来ない…!」


「…俺もだ、だが相手は待ってくれないらしい」



魔獣は天を仰ぐように吼えたのでとりあえず少年達に合わしつつ臨戦体勢を取った。



「クオオ」


「…来るぞ」


「…ああもう!とりあえずやるしかないか!」


「戦闘、開始…?」



ものっそいバランス悪そうな感じで突撃してくる魔獣を見て少年は剣に手をかけ、女の子は構える。



だがここで思わぬ事態に。



魔獣は突撃する際に前のめりになりすぎて俺らまでもう少し…って所でコケた。



「…うわぁ…」



そのあまりのマヌケっぷりに少年はその隙を突いて攻撃するか否か迷っている。



「クオォ!ブモォ!」


「……どう、しよう…?」



正面から地面に倒れた魔獣は立ち上がろうと必死だがいかんせん下半身が小さいからか…



立ち上がれずにジタバタともがいていた。



その哀れな様子を見て女の子も攻撃しようかどうか困惑している。



「…アレでも敵だ、一応倒すぞ」



立ち上がろうと必死にジタバタともがく魔獣を弱い魔術で攻撃した。

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