16
「ねぇ、ちょっとだけ、お腹に穴を空けて良い?」
脇腹を摩って立ち上がった俺にショコラは甘えるようにとんでもないお願いをしてくる。
「あ、片腕を斬り落とすだけでも良いよ?」
譲歩したようにココアに手を掛け可愛く小首を傾げるが、内容がかなりエグい。
「…俺に死ね、と?」
「ちょっ…!そんなんしたら死んじゃうって!」
顔をワザと引きつらせて返すと少年が焦ったように割り込んできた。
女の子も参加はしないものの若干引き気味。
「じ、冗談だよ…ヤダなぁ、本気にしちゃった?」
100%本気だったであろうお願いで自分が不利な空気になったからか、可愛い顔と言い方で誤魔化す。
「な、なんだ…冗談か…あはは」
「…つい本気かと…」
「そんなワケ無いじゃん……ちょっと試しただけだよ、どれだけ出来るのかな?って」
後半、良いこと思いついた!みたいな感じで少年と女の子にそう言う。
「そうなんだ!…ナナシさんって結構強いけど、どうなの?」
「…気になる…」
「ん~…まあそれなりに結構強い方じゃないかな?まだ戦い方とか知らないから見た…あっ、試した感じだけど」
ショコラは歩き始めた少年と女の子に質問され俺を見ながらなんとも言えないような感じで言い、さっきのやり取りを正当化させようとしている。
「へ~…ナナシさんって見た目強そうに見えないのに見破れるんだ…」
サラリと失礼な事を漏らす少年。
「……斬れば分かるんだけどなぁ…でも違ったら…うーん…」
ショコラはショコラで少年達に聞こえないような声でボソボソと呟き俺をまだ怪しんでいた。
…やっべぇなぁ、こんな所でコイツにばったり遭遇するなんて全くの予想外だぜ。
バレても大して問題は無いが…なるべくならバレたくない。
…コレが変装を極めた者のちゃっちいプライドってやつか…
そうこう歩いてる内に気づけば中々な場所まで進んでいる。
何故か知らんが山岳地帯に入ってから未だに魔物や魔獣に襲われてないっていう。
まあなるべくならショコラに戦い方を見せたくないと思ってるからありがたいが。
「…おかしい」
「…うん」
俺が辺りを見渡して呟くとショコラが賛同したように頷く。
「え?何が?」
「…魔獣、ですか?」
「…ああ、いくらこの辺りに魔獣が少ないとはいえ…ここまでなのは異常だ」
何かを察したような女の子の言葉に頷いて少年にも分かるようにあえて説明した。
…魔物はもっと奥に行かないと出てこないから分かる、だがいつもここら辺を徘徊してると聞いた魔獣が居ないってのは…
イベントの始まりを告げる合図なんだろうな…
はたしてどんなイベントが起こるのやら。
組織絡みか?それとも冥界絡みか?
どっちにしろ新種の魔獣が関わってる事だけは確実だろうよ。
実物を見ないとなんとも言えん…
けど、予想出来るパターンは三つ。
組織が新型の人造魔獣を送り出し魔獣を殲滅した。
魔獣達が共食いをした結果…進化して新種化。
魔獣達が合体して新種化。
あ、合体と共食いは違うよ?
共食いは自分を強くするために同胞を喰らって進化する事で、合体は悪魔が魔獣を強くさせる為に進化させる事。
進化すると進化させる…の違いね。
さてさて、敵は悪魔か魔獣か組織のメンバーか…
こればっかりは始まってみないと分からねぇな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます