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報告は小まめにしないといけないのか、終わった後の事後報告でもいいのか。



どっちにしろ自分に合わないやり方ってのはあまり上手く行かないだろうが。



「さて…着きました、ココが自分が所属するレッドギルドです」



どうやらブルーギルドから街中に向けて歩く事10分ほどの場所にあるようだ。



建物自体はさっきのギルドのやつと変わらず、ただ看板が青から赤に変わっただけ。



この分だとイエローギルドってのも同じ建物で看板の色だけ違うんだろうよ。



「では…中に入りましょうか」


「うー、緊張するなぁ…」


「…少しいいか?」



ドアを開けた青年、自分の格好を気にしながらも中に入ろうとする少年…に待ったを出す。



「?どうしたの?」


「…どうせ自己紹介だけなら、一旦解散しないか?」



不思議そうな顔をしてる少年にそう提案する。



「え、なんで?」



突然の提案になぜか困惑する少年。



…会ったばかりでパーティになって日が浅いのになんでそんな風に俺と仲良くなった気になれるのか…



逆に不思議やわ。



「…街を回って色々と情報収集してみたくてな」


「…ああ、そういう事…うん、確かにナナシさんなら色々と情報を集められるかも」



少年は理由が分かってホッとしたのか俺の提案に賛成した。



「…明日の朝、またココに来る」


「あ、はい、お待ちしてます」



離れ際にそう言うと何故か青年の方が反応する。



さて…調停者にでも電話しますかね。



どうせ調停の使者がこの国に何名か紛れて情報収集してるだろうし。



街を回って話を聞くよりソイツから聞いた方が手っ取り早いだろ。



早速歩きながら小型無線機を手に着信履歴から調停者に電話をかけた。



「余だ」


「もしもーし、あたしゃだけどぉー?」



声を変えてあるので俺しか言わないような言葉での挨拶をする。



「…遠の字か?どうした」


「ちょいと事態が進展したから報告しようと思って、あとついでに情報が欲しくて」


「うむ、先に報告を」


「うい、ちょっと待って…」



俺は早足で街の端っこに移動して人が少なくなるのを確認して報告を始めた。



少年との出会い

魔術の練習

破壊者とかいう痛いお兄さんとの初対面

少年のパーティメンバーへの参入

他の結社メンバーとの遭遇

痛いお兄さんとの微妙な戦い

その後に現れた別の結社メンバー

隣の地方の街のギルドの手伝い



結社が絡む話題は街から離れて、今までの出来事を事細かに報告する。



「ふむ…話から聞くにゴーレムが突然現れた、というのは『操者』と呼ばれる奴の仕業だろう」


「そうしゃぁ?…操る方の?奏でる方の?」



普通なら『そうしゃ』と聞けば操る者、という言葉を頭に思い浮かべるだろう。



が、世の中には魔操ノ香炉という旧時代の遺物があるんだ。



音と香りで魔物を操るとかいうシロモノ。



まあ結局は奏者でも操者でもあんまり変わらないんだけどね。



どうせ最終的には操るんだし。



「操る方だ」


「ああ、やっぱり?で…どんな奴なの?」



通り名つーか組織ネーム?そんな系の名前を知ってるって事はソイツについて何かしら調べてあるんだろうよ。



「…名前はカルネーバ・ステリニグ、幼少の頃より魔導研究の才を発揮させていた…俗に言う天才博士と言う奴か」


「チッ、天才かよ」



どうして生まれ持った才能をこんな意味不明な使い方するのかねー…



って俺からしたら思う。



本人からしたら正当な使い方だ、って思ってるかもしれんが。



「って…んん?今、魔導研究とか聞こえたんだが」


「確かに魔導研究と言ったが?」



魔導研究っつったらリザリー達と同じ分野じゃねえか。



「…何かあるのか?」



急に黙った俺に何かを感じたのかトーンを変えて聞いてきた。



「ああ、いや…俺の知り合い達がそっち方面に精通してるから…」


「なに?」


「あれ?言って無かったっけ?まあ言わなくても調べが付いてるだろうけど、アイツら五大魔導博士とか言われてるらしいんだよね」



調停者の事だから五大魔導博士と言やぁ説明しなくても分かるハズ。



「五大魔導博士だと…?ルナ、ミリア、アイリス、デルタ、ヴォルグの事か?」


「そう、そいつら」



あ、デルタはエルーでヴォルグはハルトの偽名ね。

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