35

色々と準備を済ませ、主人公とされる少年のギルド試験当日。



俺は髪を全て右側に流した放浪者だか流浪人だかの髪型で腰に日本刀を差し、少年が居るとされる村に来ていた。



両手の中指にはリザリー達の研究である魔石を加工した指輪を着けて両手首にもシャープでシンプルな腕輪を着けている。



ちなみに腕輪には魔界産の魔力を吸収する魔石も付いてるよ?



ココでの戦闘スタイルは魔術師よろしく魔術に頼って戦うつもりだし。



声も髪型も変えて…更にあえて市販されてる日本刀(中々の業物らしい)を差してるから、俺だとバレる可能性は低いと思われ。



流石に無銘や無名を持ってるとソレでバレるからねぇ…



今回はあの斧同様小箱の中で待機してもらう事に。



一応服装はいつもと変わらないけど、見た目は東方からの流れ者…旅人的な感じ?



…多分。



とりあえず少年を監視しつつ…仲間になれそうな場面で接触する、っつーのが最善の策かな?



「ふむ…おっと」


「あっ…!」



村を観光するように歩いてると早速主人公たる少年が俺にぶつかってくる。



「すまないな少年、良く見てなかった…大丈夫か?」


「ああ、いえ…俺の方こそ前を良く見てなかったから…」



ワザとゲームや漫画のイベントを起こすようにさりげなく少年と接触した。



「…ここらへんに酒場とかあるか?」


「酒場…?ああ、この道を真っ直ぐ行って、あの角を曲がった三軒目に」


「そうか、ありがとう」


「いえ…あっ!やべぇ!じゃあ気をつけて!」



頭を下げて礼を言うと少年は焦って走って行く。



はぁ…なんか劇でもしてる気分だな。



俳優ってこんな感じなんだ…変な気分だぜ。



内心ため息を吐きながら少年に教えられた酒場へと向かう。



酒場に行けば多少は情報収集出来るだろ。



調停者は既に組織が動いてるっつーんだから何かしらが起きるのを待つのみ。



つーワケで酒場に入ると…中は結構広かった。



「適当にソフトドリンクを」


「分かりました」



とりあえずカウンター席に座り飲み物を頼む。



『村』なだけに人は少なく酒場の中には看板娘や店主、従業員を合わせても6名しか居ない。



客は俺を合わせてたった三人。



まだ昼前だから客が少ないのか、いつもこんなに少ないのかは分からんが。



…コレじゃ情報収集とか無理くね?



「お待ちどう、お兄さんはこの村に観光かい?」



オレンジジュースをカウンターに置くと同時におっさんが話しかけてきた。



「観光…いや、流れて来ただけだ」



ジュースを飲みながら少し考えてそう返す。



「流れて…?もしかして旅人さん?」


「…そうなるな」



キャラに合わせて一拍置いてから返事をする。



「へぇー…まあこんな何も無い辺ぴな村だけど、ゆっくりしてきな」



あ!鉱山があるから何も無くはないか!と俺が何か返す前にそう足して笑う。



「鉱山…」



ユニオン以外の国の鉱山っていったら国が管理してる場所以外は結構な確率で魔物の住処のハズだが…



この国の詳細を思い出しながらそう呟いた。



まあユニオンにも魔物が棲み着いて廃坑になった場所なんて何十ヶ所もあるけど。

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