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「でも最近は凶暴な魔物が彷徨いてるらしいから行かない方が良いかもです」



いきなり看板娘?的な女の子が俺の隣の席に座りながら会話に割り込んで来る。



「まーた現れたのか…」


「また?」



ため息を吐いたおっさんの言葉に引っかかり、聞き返す。



「ああ、ギルドが定期的に魔物達を追い払ってるんだが…」


「何故か追い払えど追い払えど集まってくるんですよね~」



看板娘?の女の子がおっさんの後に続けて話し、手をヒラヒラと振った。



…そりゃ魔物だって雨風凌げる場所は欲しいだろ。



鉱山にはネズミとかの食料もありそうだから集まる条件は満たしてるわな。



「鉱山に凶暴な魔物か……それよりこの村の事を聞かせてくれまいか?」



情報収集をかねた時間潰しのための雑談が始まる。



3時間ほど話してるとカランカラン…と入口のドアが開く音が。



「「「いらっしゃーい」」」



客が来るや否や看板娘はすぐさま席を立って入口に向かった。



…あれ?俺の時は来なかったよね?



「あ、ミルディ!テストはどうだった!?」


「なんとか合格、ようやく見習いって所かな」



看板娘が親しそうに話すソイツの声と名前に凄く聞き覚えが…



「おう、ミルディ!どうだった?」


「あ、おじさん、ギリギリ合格してやっと今日からギルドの一員」



少年はへへーん…とギルド員の証であるバッチを見せる。



「おお!そうか!…あの小さかったお前がギルドの一員たぁな…」



おっさんは腕を組んで感慨深そうに頷く。



俺以外の客もおめでとう!とか喜んで手を叩いてるだけに居心地が悪い。



「今は見習いみたいなものなんでしょ?じゃあ当面の目標は低級への昇格なの?」



おそらく幼馴染か友達であろう看板娘が少年にそう質問した。



「ん、最初は下積みだってウル姉が言ってたから…出来る範囲で頑張るつもり」


「はっはっは!良い心がけだ!よし、今日は俺の奢りだ!村のみんなを集めてパーティだー!!」



小さい村の習性と言うべきか…



とりあえず何故か異様にテンションの高い人達に巻き込まれる前に俺はカウンターに金を置いて酒場を出る。



あ、因みにギルドの仕組みは世界共通で勲章?的な地位がランク付けされていて…



低級<下級<中級<上級<特級<マスターの順。



一応その中でも細かくいくとアルファベットで表されていたり。



D<C<B<A<S<MでAまでは更に+と-が付くという面倒くささ。



まあ軍人の階級よりは分かりやすいけど。



そんで、所属するギルドが変わる度にその勲章的な地位はリセットされるらしい。



だからそのランク付けってあまり意味無いと思うんだが…



世界ギルド連盟という胡散臭い組織が決めた規則だからねぇ。



ギルドに関わり合いの無い俺がどうこう言えた問題じゃねぇんだよな。



んで、当然のごとく…例外を除いて自分の勲章的な地位…ランクでいいか。



ランクに合った依頼しか受けられない。



例外ってのは…所属が変わった時とか、俺みたいに短期でバイトする時かな?



例外の場合は受付嬢がこれまでの経験とかを見てからどの依頼を受けさせるかを決めるんだと。



…つーワケで簡単だけどギルドの説明終了。



俺はとりあえず宿屋に泊まって日本刀の手入れと魔石の微調整をした。

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