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「なぁ、アレスの方はアレで力を抑えてるってのは本当なのか?」



戦いを見物しながら余計な事を考えてるとエルーがそう質問してくる。



「ああ、手首に銀のリングが付けられてるのが見えるか?アレが抑制具だ」


「一体どれくらい抑えられてるの?」


「ん~……本来の力の1/10ぐらいじゃね?」


「「なっ…!!?」」



少し考えていつもと同じ感じで言ったら物凄く驚かれた。



「アレで1/10なの!?」


「…流石は神、と言った所か…人間とは強さの次元が違う」


「つーても力の抑制具合って神や女神によって違うけどな」



神々によって特殊能力的な扱える魔法が違うし。



人間で言うならば魔術的な感じかね?



「抑制…具合?」


「表現はおかしいが、個人差がありますって事だ」



神の場合は人じゃないから個神差があります、か?



「個人差って…」


「話に集中するな、ちゃんと前を見ろ」


「きゃっ…!」



コッチを見て何かを考えるリザリーに忠告して腕を掴んで引っ張り、左側から右側に移動させる。



すると今さっきまでリザリーが立ってた所を木が縦に転がりながら通過した。



「ただの世間話だろ?あっちに意識を向けないと、下手したら死ぬぞ」



今転がって来た木だって4mはある普通の木だし。



ぶつかったらタダじゃ済まん。



「あ、ありがとう…」


「んで、続きだけど…力の抑え方ってのも色々あってだな…」



お前らが見た女神ユリスは癒しの能力で病気や傷を直す回復の魔法が使える。



酒神バッカスは触れた液体ならなんでも酒に変える魔法を使い、空気中の水素さえも酒に変えれる。



鍛冶神ウルカヌスは神器と呼ばれる武器や防具を直ぐに作れる。



大地神ガイアは大地や重力を操るといった魔法を使う。



「…という事は…アレスにはそういう能力が無いって事か?」



説明してる最中にエルーが質問する。



「能力でいえば見ての通りの卓越した身体能力だ」



1/10に抑えた力でさえ、人間が全く太刀打ち出来ない…恐ろしいまでの身体能力。



コレを特殊能力と言わずになんと言う?…ってのは言わないけどさ。



「戦の神には小細工は無用ってワケね?」


「そゆ事、己の肉体だけで数多の敵を蹴散らすって正に戦の神だろ」



でも、その妹である女神アテナには扇動的な心を動かす魔法が使えるんだが…



まあ同じカテゴリーでもやっぱり個神差ってのがあるよね。



「なるほど…身体能力のみだから1/10まで抑えられているのか」


「他の神はそこまで力は強くねえよ?それでも人知を超えた力ではあるけど」



今のこの世界で最強の人間(日比谷は除く)でさえ、天界で戦いが最弱の神には勝てんだろうよ。



「…なあ、もしアレスの力が抑えられてなかったら天界でも上位に位置するんじゃないか?」



改めて戦神アレスの動きを見たのかエルーが的外れな事を言い出した。



「なワケねーだろ…戦神アレスの強さって天界では中ぐらいだぞ?」



いくら身体能力が高かろうが大地神ガイアや時空神クロノスの前では赤子の手を捻るごとく負けるわ。



女神ガイアに超重力をかけられたら動きは鈍るし、時空神クロノスに時間を止められてもアウト。



全力の戦神アレスでも天界の上位に位置する神々達には指一本触れられずに負けて終わるぞ。



勝負にすらならない一方的な戦いで、な。



…そういうの言ったら色々とアレだから黙っとこ。



「アレでも中ぐらいって…本当に次元が違うわね」


「だけど昔の人達はその次元が違う奴らと拮抗してたんだぜ?」


「…冗談だろ?」


「どうだかな、でもそう考えると人類はどんどん劣化ってか衰退して行ってるよなぁ」



総界戦争時の人類最強と今の人類最強が戦ったら絶対に今の人類最強が瞬殺されると思う。



プルプル…プルプル…



「んお?…もしもし?」


「遠の字、待たせたな…コレより解決策を伝える」



やっとかよ、アレから30分以上は経ってるぜ。



「で?どうすれば良い?」


「とりあえず今から言う魔法陣を地面に書いて中心に戦神アレスを誘き寄せろ」


「…難易度高いなぁ」



あの一人と一柱の攻撃をかい潜りながら魔法陣を地面に描くなんて骨折れるわ。



…はぁ、だがやらないと状況は良くならないし。



しゃーねぇ、外側から書いて行くか。



「リザリー、エルー…俺はちょいと今の状況を解決させるために動くから、もしマキナが時間切れになったら電話してくれ」


「…なにか方法があるの?」


「分かった、観客は任せろ」



エルーが頷いたので俺は茂みに転がると同時に影移動する。

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