20

「お、この枝使えそうだ」



魔法陣の円を描くための外側で太い木の枝を切り落とし、地面に線を引きながら全力疾走した。



そして10分後。



「もしもし?二重の線は引いた」


「そうか、次は線の中に今から言うルーン文字を書くのだ」


「はいよ」



マキナの4重の身体強化はもって一時間…あと20分で完成させないと。



調停者が言うルーン文字を地面に書き殴りながら急いで円を一周する。



急ぎはしたものの、15分もかかってしまった。



残り5分でこんなデカい魔法陣を完成させるなんて無理ゲーなんですけど!



最低でもあと20分は欲しい!



「次は今から言う図形を書け」


「はいよー」



マキナの心配をしながら急いで魔法陣を枝で地面に描くが…



プルルルル…プルルルル…



半分ほど書いた所で俺の小型無線機が鳴る。



「チッ…くっそー、時間切れかよ!」



枝を持ったままリザリー達の近くに影移動した。



「程人!解決策ってのはまだなの!?」



戦神アレスから全力で逃げてる最中のリザリーが聞いてくる。



「あと15分だったよ…」


「15分…!15分時間を稼げばその解決策とやらは出来るのか!?」



マキナを背負って走ってるエルーがそう聞く。



「知らん、俺はただ言われた通りにやるだけだ」



それしか方法が無いからな!と一緒に走って逃げながら答えた。



「ぐおおおお!!逃がすかああ!!」



林の中をジクザグに逃げてる俺らを、戦神アレスはまるで戦車のように木々を薙ぎ倒しながら凄いスピードで追いかけてくる。



「はっはー!まるでリアル鬼ごっこだな、残念ながら捕まらせないが…エルー、リザリー、止まれ!」



俺は笑いながらポーチからスタンを取り出しピンを外して後ろに投げ、一旦止まるよう促した。



「「っ…!」」



スタンが爆発し、二人が止まった瞬間に研究所のトイレに影移動させる。



「ぐああおお!!」


「さて…いよいよ状況は最悪だな」



スタンの光で目が眩み両目を押さえてる戦神アレスを見てそう呟く。



…あいつらを逃したんだから俺一人でコイツの足止め+魔法陣を完成させないといけないとか…



コレ、なんていう詰みゲー?



はぁ…コレは脇役の損する場面だなぁ、とりあえず身体能力をフルにしないと…



「ぐおおお!!」


「うおっ!?」



リミッターを外そうとしたが、当然戦いの場でそんな事をさせて貰えるワケがない。



一瞬で距離を詰めてきた戦神アレスの攻撃をなんとか避けて距離を取る。



「き、さま…!天界の、領域を侵しモノか!おも、しろい…!さっきの奴と同じく楽しめそうだ!」



今まで吼える事しかしなかった戦神アレスが俺を見て笑う。



「あ、もしもし?やばい事態になっちまった」


「ぐおおお!!!」


「何が起きたのだ?…いや、聞かなくても今の声で理解できた」



今の最悪の事態を報告するべく調停者に電話すると戦神アレスが吼え、ソレを聞いた調停者が直ぐに事態を悟った。



「どうすっかなー?一応半分までは完成してんだよね」


「ならコッチから数人派遣しよう…それまで保ちそうか?」


「うーん…じゃあ俺がそいつら影移動させるから、ソレは調停者の力って事にして?」


「分かった、ではその数人を一ヶ所に固めよう」



戦神アレスの攻撃を一生懸命ギリギリで避けながらこの後の作戦を練る。



「ソレって…おうっ!…ぶな!…どれくらいかかる?」



危うく掠る所だったが…紙一重で俺の頭の30cm右を戦神アレスの拳が通過した。



…とりあえず風圧ってぇの?戦神アレスが攻撃する度に風の音がうるさくて、聞き取り辛い。



多分調停者側も俺と同じく風の音うるせぇ…って思ってるかもな。



一応まだ踏ん張れるレベルの風圧だが、普通の人だったら絶対飛ばされてるって。



超局地的だけど…体感的に風速30mぐらいだし。



俺のこの鍛え抜かれた強靭な足腰すげぇだろ!



「今集めた、場所は…」


「なんてぇ!?」



くそっ、風の音の所為で重要な所を聞きそびれたじゃねえか。



もうちょっと手加減してくれよ!



ハタから見たら電話しながら余裕そうに避けてると思うかもしれんが…



コレでもギリギリ紙一重のいっぱいいっぱいなんだぞ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る