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「ぐ!うううおおお!!」



戦神アレスのいる空間がグニャグニャ歪み、大声で叫んだと思えば急に動きがピタッと止まる。



果たして空間固定の装置で何分保つか…とりあえず研究所に行こう。



「おう、悪いな…急に集めちまって」



研究所に影移動して応接室に行くといつもの三人がソファに座って待っててくれてた。



「一体何があったっていうの?」


「簡潔に説明すると…戦の神と呼ばれるアレスがこの世界で暴れ狂っている、理由は良く分からんが時期が関係してるとかなんとか…以上だ」



リザリーの問いに早口で答える。



「戦の、神…だと?ソレに暴れ狂ってるとは?」


「戦の神だから人間相手に戦いたいんだろ」


「神が人間を相手に…?なぜ?」


「さあな、最近はチート能力を持った奴だって最強のクセに戦ってんだろ?強すぎる奴は本来なら戦いにならないって事さえどうでもいいんだろうよ」



人間が猫と戦いたいからって蹴飛ばすのと一緒だ。



「さっき、戦いたいか?って聞いてたけど…その神ってどれくらい強いの?」


「力が抑えられてても一時間で大陸の半分を壊滅させるほど」


「あの大陸の半分を、たった一時間で…!?」


「おそらく一日経てばこの世界の半分は壊滅するかもしれんぞ?」



魔大陸にでも行かれたら魔王軍が半壊しちまう。



やっべ…いくら戦神とはいえ、魔王軍を相手に戦えば死ぬぞ!



そこらへん失念してたわ…マジでどうしたもんか。



「…そんなのと戦ったら間違いなく死ぬじゃん」



珍しくマキナが弱気な発言をした。



「お前一人だったら…な、ココにエルーとリザリーが居るワケだが?」


「…あっ!そうだ、忘れてた!」



俺がリザリーとエルーを指差すと何かを思い出したのかマキナは手を叩く。



「お前が4重の身体強化すりゃ今のアレスだったら対抗できると思うぞ」


「…4重かぁ…まだやった事無いからやってみたいかも」


「まあ私達も戦神アレスってのを見てみたいし…」


「たまにはテイトに利用されてやるのも良いか」



どうやら俺の考えはお見通しだったらしく、二人はため息を吐いて立ち上がる。



「んじゃ、頼んだぜ」



俺はそう言ってポーチからスタンを取り出してピンを抜き、爆破と同時にアレスのいる所に影移動した。



「うわぁ…凄い事になってるね」


「本当ね…まるで天罰後みたいだわ」



リザリーとマキナが瓦礫と死体だらけになってる周りを見渡しながらそう呟く。



「…もしかして戦神アレスってアレか?」



エルーが指差した先には空間停止してる戦神アレスとその周りを囲ってる魔術師達の姿が。



「ああ、今は旧時代の遺物で動きを止めてるがそう長くは保たないハズ」


「旧時代の遺物…?」


「スペーターっつー指定した空間にあるモノ全てを止めるやつ」


「ソレって…!伝説のL級!?なんであんたが!」



説明するや否やリザリーが驚いて詰め寄って来る。






…どうでも良い事だが…ココで旧時代の遺物っていう物を軽く説明しよう。



『旧時代の遺物』ってのは、その名の通り昔の人が発明した物だ。(早口)



魔獣や魔物を操る物、魔界や天界や冥界に移動出来る物、ナニカを召喚出来る物…とか色々存在する。



どういう技術でどういう風に作られたのか、またどういう目的で作られたか全てが不明。



ただ…今の科学でも証明しきれず常識じゃ絶対にあり得ないような効果の物も存在する。



そういう旧時代の遺物を専門的にしてる奴らが勝手にランク分けしてて…



伝説のようなL級

不思議なF級

魔術的なM級

武具的なE級

普通にありそうなN級



その中でもM級E級N級は更にS.A.B.C.Dと品質によって細かく分類されてる。(当然早口)



「ソレは後で説明するから今はマキナに身体強化をかけてくれ」



戦神アレスと一緒に空間停止してる箱状のがバチバチ…とショートし始めたのでリザリーを急かした。



「分かったわ…エルー、やるわよ」


「おう」



状況を見てヤバいと感じたのか追求する事無くあっさり折れる。



リザリーとエルー、マキナが身体強化の詠唱を始めると同時に戦神アレスの空間がグニャグニャ歪み出した。



「「「……!!?」」」



その光景に三人はかなり驚いていたが詠唱が途切れる事はない。

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