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「まあこの世界じゃ日本は異国って呼ばれてる神秘の国だからさ…日本って言葉じゃ通じないよ」


「…異国…?」


「夜は妖怪が彷徨ってんだ、この世界の妖怪は死んだ人間の負の感情が強かった魂の集まりで…人間を襲う事が存在理由だから仲良くは出来ないやーつ」



俺みたいな特殊な冥妖召喚術でなった妖怪は除いて…だが、別にソレは言わなくてもいっか。



この世界ではもう俺だけっぽいし。



「…この、世界…?」


「多分君は別の次元、別世界から来たんじゃないかな?実際は知らんけど」


「でも妖怪って…私達が、倒すべき…敵…」



なーる、この女の子が居た世界でも陰陽師的な争いが続けられてんだ。



「他にも神獣やら悪獣やら物の怪やらが居てな…科学では解明出来ない事が平気で起こる神秘的な国なのよん」


「…丁度良い所に居たわね」



女の子が何かを言おうとした時にリザリーが入ってきた。



「ん?相手は決まったのか?」


「…知ってたの?」


「いんや?あのやり取りからどうせあと一人増えるんだろうな、って思っただけ」


「勘が鋭いと話が早くて助かるわ…その女の子よ」



リザリーは俺らのやり取りを困惑してる様子で見ていた女の子を指差す。



「へぇ?俺としては拒否りたいんだが…まあ内容にもよるわな」


「そんなに大事じゃないから大丈夫…ただこの女の子ずっと黙秘を続けてて、たまに口を開いたと思えば日本とか意味不明な事を言うんだって」



舌を噛んで自殺を図ったり暴れるからしょうがなく拘束してるらしいわ、とリザリーは女の子の顎を持ち上げて顔を見る。



「…中々可愛いわね、どことなく東洋系の顔立ち…かしら」


「出身地は俺と同じ国だよ…ただし次元っつーか、世界は違うが」


「…どういう事?」



俺が肩を竦めて言うと、何言ってんだこいつ?みたいな目で見られた。



「異世界から来たって事だ、前のあの少年と一緒」



あいつまだこの世界に居んのかな…?



調停者は時間がかかるってだけで明確な時間は教えてくれんかったし。



「…ああ、なるほど…そういう事」


「…異世界…?」



リザリーは俺の質問に納得したみたいだけど女の子は不思議そうに首を傾げる。



「ま、ソレはさて置き…お前の飲み物余ってる?」



俺は女の子の拘束を外しながらリザリーに尋ねた。



「ええ…半分しか残ってないけど…」


「貰うぜ?…ちょっとこの薬飲んでくれる?ただの栄養剤だから心配しないで」



ひったくるようにリザリーからペットボトルを奪い、ポーチから取り出した丸い錠剤と一緒に女の子に渡す。



あ、薬はちゃんと小袋から取り出したやつだから衛生面は大丈夫だよ?



「栄養剤…?」


「ん、怪しいと思うなら無理に飲まなくてもいいけど?」


「…ありがとう」



お礼を言ってスポーツドリンクと一緒に丸い錠剤を二錠飲んだ素直な女の子に、チョロいな…と内心笑う。



「あ、コイツとの間接キスになるけど気にしないでね」


「何よソレ、私が汚いっていうの?」


「違ぇよ…お前らには分からんかも知れんが、世の中には同性同士でも間接キスを嫌がる人も居るっつーの」



あの錠剤が溶けるまでの時間は遅くても二分…もう少しかな?



外面ではリザリーと言い合いしながらも内心時間を計る。



「…仲が、良いん…です、ね…」



約二分後。



俺らの言い合いを見てた女の子がボーッとしながらそう言う。

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