18

「だから!何度も言うように今日は見学者は来てません!」


「こっちも何度も言ってるでしょ!実際に研究所内に入り込んでいた、って!」



…あれ?もしかして俺が原因でこうなってる系?



「何を揉めているんだ?」


「あ、ニルフレード所長…それが…この人がアポ無しで少年が見学に来てた、としつこいんです」


「しつこいとは何よ!あなたがちゃんと仕事してないからでしょ!」



またしてもギャーギャー言い合う。



「落ち着け、取り敢えず話を整理する」



ハルトはカウンターをバン!と叩いて二人を静かにさせる。



「お前の言うアポ無しの少年とはコイツの事か?」



そして俺を指差しメガネのお姉さんに質問した。



「あ、はい!その少年が研究所内を彷徨いていたんです!」


「…はぁ…やっぱりコイツの事か…いいか?良く聞け」


「テイトー!!」


「?…ぐおっ!?」



ハルトが説明してる最中にエリアがかなりの速さで走って来て俺に飛びついてくる。



…もはや飛びつくというよりフライングボディアタックと言った方が正しいかもしれない。



エリアのまさかの行動に面を食らって避け損ねた俺はそのまま壁に激突。



その衝撃で壁にビキビキ…!と亀裂が入る。



「「「は?」」」



普段ならあり得ないエリアの行動にハルトを含む三人の間抜けな声が重なった。



「僕じゃダメなの!男だから!?アレが付いてるから!?」


「ち、ちょ…!や、め…!」



そのまま俺に馬乗りになったと思えば意味不明な事を叫びながら服を掴んでガクンガクンと前後に揺さぶる。



「愛に性別は関係ないじゃん!アレがあっても関係ないじゃん!」


「だ、だれ…か…!たす…!」


「いた!勝手な行動しないで!」



俺の救難信号に気付いたのかなんなのか…ショコラがエリアを後ろから羽交い絞めにした。



「げほっ!げほ!」


「ショコラちゃん離して!」



咳き込む俺に暴れるエリア、押さえ込むショコラに呆然とするハルト達。



研究所のロビーがなんともカオスな雰囲気に。



「…やっぱりこの副作用が出るんだねー…もう!大人しくしてろ!」



ショコラは何かを確認した後に羽交い締めを解いてエリアの首にかなり強めの手刀を当て気絶させる。



「けほっ、全く…飲んだ直後に見た同性を一目惚れするとか要らん副作用だな」



これじゃ親兄妹が飲ませたら大変な事になるぜ。



あ、因みに同性ってのは逆転する前の性格から見た同性の事だよ?



エルーやエリアの場合は元が男の性格だったから俺を見て………うぇっ。



と、とにかく…普通の奴が飲めば性別的には異性に一目惚れする計算だ。



その原因的なのは恋愛物質であるフェネチルアミンの分泌が云々らしい。



…待てよ、エルーやエリアがアレを飲んでホモォな展開になったって事は…



リザリーやマキナとかが飲んでショコラを見たら逆の百合的な展開になるのか?



それでマキナやリザリー、ショコラが誰かに男らしく迫っていくのか…?



お、おお…なんだか面白そうだな!今度エルーをそそのかしてやってみよう!



「大丈夫?」


「まあな」



邪な事を考えてるとショコラが手を差し伸べてくれた。



俺はありがたく手を取って立ち上がる。



「えーと、見ての通りアイツは俺らの友達で…今はなんて名乗ってたっけ?」


「村人Bでしょ?」


「ああそうだった!名は村人Bだ、名前ぐらいは聞いた事あるだろ?」


「む、村人Bって、あの…!?」



ハルトが紹介するとその名前に聞き覚えがあったのかメガネのお姉さんが目を見開いて驚く。



「し、知らなかったとは言え、数々の無礼…大変申し訳ありませんでした!」



メガネのお姉さんは急に手の平を返したように頭を下げて謝り出した。



「ああ、うん…次からはちゃんと人の話は最後まで聞いてね?」


「は、はい!誠に申し訳ありませんでした!」


「…なんでこんな堅苦しくなってんの?」



…なーんか怯えてるっていうか恐れてるっていうか…結構ヤバい噂でも流れてる系?



俺はメガネのお姉さんの態度を不思議に思いハルトに聞いてみる。



「さあな、所長の助手だの右腕だのジョーカーだの言われてるからじゃないか?」


「聞くだけでは研究所でのNo.2…二番目に偉いって事だしね」



実質的にはトップと変わらない同じ立場だけど…と呟きエリアを引き摺って歩いて行った。



「いやいや…俺はそこいらの一般人と変わらないから研究者としての立場的には下っ端以下じゃね?」


「…相変わらず卑下してる言い方だな…まあとりあえず、俺の弟子はどこだ!」



かなり時間がかかって脱線に近い遠回りを経て…やっとココに来た本来の目的に触れる。

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