17
「はい、あーん」
「あーん…」
アレだけ嫌だ!嫌だ!と暴れてたくせにショコラのあーん、に嬉しそうに口を開けて薬と紅茶を飲み込んだ。
見た目は美女でも中身は男…どうやら男の悲しき性が発動してしまったようだな。
「…しまった!」
そして飲み込んだ後に自分の失態気付いたらしいが時すでに遅し。
エリアは両手で口を押さえてガクッと床に膝を着いた。
あ、薬を飲み込んだ時点で両腕は離してたよ?
「そういや何の薬なんだ?」
「リザリーとマキナが取り掛かってる性同一性障害を改善するための薬」
……ああ、アレか。
確かこの前エルーが飲まされてえらい事になってたな。
「なんか研究があんまり上手くいってないらしいから手を貸そうかな?って」
「ふーん…で、ハルトは?」
「…アイツなら正面玄関に行ったぞ」
なんでも弟子が帰ってくるらしい、と言い俺を睨みながら立ち上がる。
「正面玄関ねぇ…」
「テイトお前覚えてろよ」
俺はエリアの怨み言をシカトして正面玄関に向かった。
「?……!そこの少年、止まりなさい!」
廊下を歩いてるとなんか後ろから怒鳴り声?に近いような声が聞こえる。
…んだ?誰かなんかやらかしたのか?少年ねぇ…
辺りを見渡すも今の廊下にはコッチを指差すメガネのお姉さんと俺以外は誰も歩いていない。
…もしかしてあのメガネのお姉さん霊感が凄くて幽霊が見えたり?
「貴方です!全く…何処から入って来たんですか?」
メガネのお姉さんはツカツカとヒールの靴を鳴らしながら早足で俺の所に来ると腕を掴む。
「いや…」
「アポ無しでの見学は侵入と同義ですよ!」
ここに来てまさかの不審者扱い。
…この研究所では俺の事は知らされてないのか?
「いや、まあ確かにアポ無しと言えばアポ無しだけど…」
「正面玄関まで案内するのでついて来て下さい」
強い口調で有無を言わせぬ言い方をすると俺の腕を掴んだまま引っ張った。
ついて来いって言ったくせに強制連行じゃん。
「ちょっ…少しだけでも話を…」
「ダメです、話があるなら外で聞くので今は黙って脚を動かしなさい」
…なんだこの融通のきかない頭の固い女は…面倒くせえな。
ショコラ達の関係者だ、と言いたいが…口を開けば最初の言葉で遮られてしまう。
そして全く話を聞いて貰えないまま受付のある正面玄関に到着。
…まあ案内して貰ったと思えばいっか。
無理やりポジティブな考えに変えると自動ドアの向こう側にハルトを発見。
「さ、次からはちゃんと正式に見学に来るのよ」
「だから違うって…」
ため息を吐きながら追い出されるように自動ドアの外へ。
「お!テイト、久し振りだな!」
腕を組み壁に凭れてたイケメンクソ野郎ことサマハルトが俺を見て眩しいばかりの笑顔になる。
「ってか何で中から?」
「なんでも良いだろ、つーかお前ん所の研究員どうなってんだよ」
不思議そうな顔で聞いてきたハルトに今しがたの出来事を思い返し不満をぶつけた。
「研究員?…どうかしたのか?」
「たった今、そこにいるメガネをかけたお姉さんに追い出されたんだよ」
俺は受付嬢と何か話してるメガネのお姉さんを指差した。
「ああー…あ?追い出された?」
あいつなら仕方ない…的な納得をした後に何かが引っかかったのかそう聞いてくる。
「部外者がアポ無しで入るな、だと」
「はあ!?お前は関係者なんだからアポ無しでも普通にOKだろ!」
「知らんがな、とにかくあのお姉さんにそう説明しようとしたが全く聞く耳持たなかったぞ…どういう教育してんだ」
「……ソレはすまん、俺達の指導不足だ」
やっちまった…みたいに口を手で覆い気まずそうに謝ると研究所の中に入って行く。
俺も後をついて行くように研究所の中に入った。
…なんか受付嬢とメガネのお姉さんが言い合ってるんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます