19
「メルス、大丈夫か?」
あのゴミ…もとい少年を放置した部屋に案内すると入るや否やハルトは少年に駆け寄った。
「死んでは無いがそれでも瀕死だなー」
まあ俺が腹を殴った事にも少なからず原因はありそうだが。
「お前…こんな状態なのによく放置できるな…」
「えー?だって俺には縁も所縁も無い奴だから」
ホントにどうでも良かったから下手したら火口にポイされて跡形も無く死んでただろうよ。
しかもあのタイミングでのハルトからの電話といい…こいつぁ中々の強運の持ち主だ。
「まあでもお前、結構良いタイミングで電話かけてきてたよ」
「…どういう事だ?」
「俺はソイツをゴミとしか見てなかったから、もっとタイミングが遅けりゃ始末されてたかもな…と」
「俺の弟子をゴミ扱いしないでくれ」
まさかのハルトに睨まれるっていう。
ただ思ってた事を言っただけなのに…
「おお恐い…そう睨むなよ、コレやるからさ」
俺はバカにするようにそう言いポーチからエルー達が開発したあの傷薬を取り出して投げる。
「コレは……いいのか?」
「なに、どうせ会った時にまた貰えるしな」
「…ありがたく使わせて貰うが借りでは無いぞ?」
「はっは、別に貸しじゃなくてもいいぜ?ああ…どうせならお前に貸し10でその少年の傷を全部治してやろうか?」
あの傷薬をあげた程度じゃ友達的な行為としては当たり前だから貸し借りの内に入らないが…
傷を全部治してやる、ってのは明らかに友達的なのの範疇外だからねぇ…貸しでしょ。
「ぼったくりめ、これ以上お前に借りを作るワケにはいかん」
…痛い目にあう事も大事な経験だ、とハルトは俺の提案を断った。
「確かに」
「それに…今回の件でお前への借りは14だ!これ以上はホントに…!」
左手で顔を押さえ悔やむように呟き床を殴る。
「へぇ…お前にそんなに貸してたんだな」
ぶっちゃけもう6年ほど前の事だから誰にどんだけ貸しがあるか、とか覚えてねえよ。
ただ…誰からも借りを作ってない事は確かだが。
俺の場合は貸しを作ってからソレを消費する形でしか頼み事はしないし。
「まあとりあえず研究所の一室と器具を借りるぞ、俺にも都合があるんでな」
「…ソレを貸しとして使ってくれないか?」
「バカか、貸しを使うぐらいならショコラに頼むわ…ソレでも無理ならリザリー達の研究所に行く」
「だよな…無理なのは分かってたが…はぁ…」
俺は辛気臭いため息を吐いたハルトを無視して部屋を出て再度受付に向かった。
「すいませーん」
「あ、はい!なんでしょうか!」
受付嬢に話しかけると急に背筋をピンと伸ばし緊張した様子になる。
「……どっか空いてる研究室とか無い?誰も使ってなくて、これからも使わなそうな」
「え、えーとですね…!」
そう尋ねるとお姉さんは焦ったように手元のパソコンをカチャカチャ弄りだした。
「…そんなに緊張しなくてもいいよ?」
「い、いえ!所長達の助手ですので…!」
助手でもないけどな…ったく、誰だよ…んな変な噂を流した奴は。
「俺とあいつらはただの友達で助手じゃない」
「…へ?助手じゃないんですか?」
「研究を強制的に手伝わされてるだけで…見た目通りのモブキャラ的一般人だよ」
あんな風に偉い人扱いされるのは苦手なんだよな。
研究員達に警戒とか緊張されると後々色々な面倒事がうんたら…
とりあえず普通に接してもらった方が精神的にも楽だ。
俺はショコラやリザリー達と違って、上の立場とか偉い人扱いされるのは精神的に苦痛なだけだし。
「そ、そうなんですか?」
「あ、いたいた…何してるの?」
受付のお姉さんの緊張感が解れてきた所でラグイーズ所長の登場。
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