04
「まあ仕方ねーわ、その子とお前じゃモノが違うんだ…この結果も当たり前だ」
でもコレで納得いったぜ…疑問が解消された。
あー、スッキリした…っと。
「モノ…?」
「ああ、お前が戦ったその女の子は間違いなくスレイヤーだ」
「スレイヤー?なにそれ?」
「戦うために産まれてきたような人間の事」
スレイヤーは普通の人間と身体の造り自体が違う。
筋肉の質は常人のおよそ二倍、しかもしなやかで強靭。
一般人と同じ全く体型なのに身体能力は倍。
そして骨の硬度もほぼ倍、新陳代謝も活発で傷の治りも常人の倍以上に早い。
しかもスレイヤーの存在は稀で確率にすると10億人に一人産まれてくるか否か。
と言う説明をライナ達にする。
「モノが違う…」
「モノが違うってのはソレだけじゃないんだなー、これが」
「どういう事?」
「スレイヤーってだけなら結構いる、ウチの一番目と三番目に拾った娘もスレイヤーだしな」
未だに名前を覚えれねーんだよなー。
まああいつら合わせても今のこの世界に5人は居るんじゃね?
当然魔王軍に居る日比谷は除いて…だが。
「一番目と三番目って…ナノとサーリャ!?」
「そうそう、そんな名前…あいつら歳の割に身体能力高いし体術系は直ぐにマスターしてただろ?」
「確かに…そう言われたら不思議だったし、納得がいくような…」
「とにかく、あの女の子はスレイヤーってだけじゃない」
いや、もちろんスレイヤーってだけでも物凄い希少な存在なんだけどさ。
「す、スレイヤーだけじゃないって…」
「あの女の子は類稀なんだよ…スレイヤーで、尚且つ内向的な身体強化が使える」
6、700年に一人の逸材で、人類の宝の中の宝…人類の至宝と呼ぶべき存在だ。
俺は少し間を開けてそう言った。
「人類の至宝って…」
「世が世なら勇者と呼ばれて崇め奉られてるだろうよ」
完全に魔物や悪魔、天使らと人間が対立してる世界だったら、だけども。
「残念ながら今の世の中じゃただの兵器扱いだが」
人間vs人間、魔物vs魔物、天使vs天使、悪魔vs悪魔
人間vs魔物、魔物vs天使、天使vs悪魔、悪魔vs人間
同種族でも争うこの世の中に本当の勇者なんて存在しないと思う。
「とにかく…あの女の子と今のお前じゃスペックに圧倒的な差があるからどうやっても勝てねぇよ」
一般人のおよそ4倍だもんなぁ…どう贔屓目に見てもライナとは倍の差がある。
「…確かに、でも『今は』って事はこの先は分からないって事でしょ?」
「どうだかな…お前次第ではあるが、その前にその身体でどうやって戦う気だ?」
「あ…」
俺がちょっと考えてそう聞くとライナは自分の身体を見て今の状態を再認識した。
「コレがお前がヘマした結果だ…でも丁度良いかもな、今の内に後悔して精神的な苦しみでも味わっとけ」
「あなた…本当に父親なんですか!?普通なら慰めてあげるべきじゃ…!」
「どうやって?俺らの教えに背いたんだぞ?自業自得でこうなった奴を慰める言葉なんてある?」
お前は俺らの教えに背いてまでも…片腕片脚を失ってまでも『一人』の女の子を助けたなんて偉いぞ。とか言えばいいのか?
今のコイツには俺が何を言っても皮肉にしか聞こえんだろ。
「それは…」
俺の問いに女の子は言葉に詰まって視線を泳がせる。
「…おっと、俺とした事が大人げなかったか」
スマンな、と謝り肘を乗せて凭れてたソファから離れた。
「どこか行くの?」
「あ?お前の奪られた剣を奪り返しにだよ」
あの魔界製品である剣が人目に晒される前に奪り返さねば!
「いいか、今度は気をつけろよ」
部屋を出る前にそう言ってドアを閉める。
「お出かけですか?」
部屋を出るとメイドがいて俺に笑いかけた。
今日の夕飯であろう食事が乗ったお膳を持って。
…やっぱり話を聞いてやがったか、気配は感じなかったが予想はしてたさ。
「おう、あ…お前らには言う必要は無いと思うけどライナに優しくするなよ?」
「承知しております、ライナ君の今後のため…ですよね?」
あいつにはどうも危機感っつーモノが足りねぇんだよなー。
まあ主人公属性にありがちと言えばありがちなんだが、明らかにあいつの将来的にマイナス要素だ…
今回の件でソレに気づけたらイイんだけどねぇ。
「念のためメイド達全員に伝えておいてくれ」
「かしこまりました、あの女の子は今日はお泊めしますね…お気をつけて」
お膳を持ったメイドに見送られて別荘から出る。
そして俺はポーチから…(以下略)あの女の子か居るであろう場所の近くに影移動した。
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