03

「「「「お帰りなさいませ」」」」



別荘に入ると恒例のアレ。



わざわざ並んで頭を下げるっていう。



俺は貴族とかお偉いさんとかじゃないからなんか…居心地悪いというかなんというか。



とりあえず何十回言われても慣れない。



「ああ、うん…ライナは?」


「魔札である程度傷を治してます」


「まだ寝てる?」


「多分まだ目は覚めて無いと思いますが…」



ライナが居るであろう部屋に向かいながら状況を聞く。



「あいつらにはなんと?」


「一応大怪我を負ったとだけ説明しました」


「そうか…今から夕食だろう?あいつらには心配無いと伝えてくれ」


「かしこまりました」



部屋の前まで着くとメイドが頭を下げて食堂の方へ向かう。



「あ、お帰りなさいませ」


「おうただいま、状態は?」


「傷は全て治しましたので命の危機は無いかと」


「そうか…ありがとう、俺はライナと女の子に話を聞くからみんなでご飯食べて来ていいよ」


「かしこまりました、では後ほど…」



メイドが頭を下げて部屋を出るのを見てライナを担ぎ上げ、応接間に移動した。



「起きろ」



俺は応接間に入るや否やライナを投げる。



「!?」


「ああ、傷は治してもらったから大丈夫だよ」


「う…あ…」



ゴロゴロ…と転がってソファにぶつかったライナが呻き声を上げた。



「やっと起きたか…気分はどうだ?」


「…と、父さん…?…ここは…?」


「え!?お父さん!?」



女の子はライナの言葉にまたしても驚き俺を凝視する。



「……はっ!あの子は!?」



少しの間仰向けになってたかと思うとバッと上半身を起こす。



「…良かった…無事だったんだね」



そしてキョロキョロと辺りを見渡しソファに座ってる女の子を認識すると脱力した。



「安心してるところ悪いが、何があった?なんでそんなザマになったんだ?」


「こ、コレは…」


「わ、私が説明します!」



言い淀んだライナを庇うように女の子が立ち上がる。



「あー、君はいいよ…どうせ追われて逃げてる所を助けて貰ったーとかそんな系だろ?」


「な…!なぜそれを…!?」



やっぱりか…ま、巻き込んだって聞いた時から簡単に予想は出来たけどな。



「父さんの言う通り…3日前、成り行きではあったけど追われてるこの子を助けたんだ」



片脚だけで器用に立ち上がりソファに座ると話し始める。



「追っ手達は、この子が国の重要な秘密を知ってしまった…とかでこの子を捕まえて国に強制送還させるつもりだったらしい」


「重要な秘密ねぇ…」


「でも、俺がこの子を庇ってしまったばっかりに事態が変わった」



ライナは一旦言葉を切って女の子の方を見た。



「…私を取り戻す事を諦めてライナさんごと消そうとしたんです」


「ふーん、まあ良くある事だろ」



国家機密なんだから他の人に漏れたらそりゃヤバいわな。



「と言っても来たのは本当に殺す気があるのか?と思うような感じの奴らばっかりだった…」


「じゃあ誰にヤられたんだ?」


「…女の子」


「は?」


「俺よりも歳下…見た目14、5歳ぐらいの…ミーシャやニコと歳の近そうな女の子」



…はあ?女の子?マジで言ってんのこいつ。



「見た目は普通のどこにでもいそうな可愛い女の子だった…でも」



またしても一旦言葉を切り、握り拳を額に当てる。



「見た目とは裏腹にその女の子を見た瞬間…俺の直感が、本能が、ヤバいと騒ぎ出した」


「…ほう?」


「俺は勝てないと悟ってなりふり構わずこの子を抱えて逃げた」



…おっとぉ、その女の子にはなーんか心当たりがあるぞー?



「でも逃げ切れなかった、せめてこの子だけでも逃がそうと時間を稼ごうとした…だけど」


「んでそのザマか…分からねぇな、この子は逃げ切れたんだろ?だったらお前も逃げれば良かったんじゃないか?」


「あの女の子はなんて言うか…温度を感じさせない冷めた目をしてた、俺が逃げたら真っ先にこの子を追いかけて殺してたと思う」


「で?お前は死にかけた割にソイツを追い払えたのか?」



俺の問いにライナは苦虫を噛み潰したような顔になる。



「はっ、結局は相手が時間切れで退いたってワケね…無様に武器まで奪われて」


「そ、そんな言い方って…!ライナさんは私を逃すために!」



鼻で笑いバカにするように言うと女の子が怒ったように立ち上がってライナを庇う。

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