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「いいわ、あの人に会わせてあげる…でも…」
何かを言いかけたお姉さんは顔は笑っていながらも目だけは笑っていない。
「で、でも…?」
「その当主とやらは媚を売るつもりなら何故直接ココに来ないの?」
いかにも疑ってます!みたいな鋭い目つきで睨むようにして俺と目を合わせる。
ほう、いつもとは違った切り返しだな…だからなんだよって感じだけども。
「ぼ、僕もそう思ったんですけど、当主は政府…いえ高官の方々とのパイプを太くするのが最優先だと…」
「なるほど…私らよりも先に上の好感度を上げておこうって腹か…」
お姉さんは俺から目線を外すと納得したようにうんうん頷いた。
ふん、反逆者のいる組織と政府の関係は資料に書いてあったからな…あの程度で誰がボロを出すかっつーの。
「どうやらあんたはスパイとかじゃないみたいね…疑って悪かった、コッチだ、ついて来て」
「わ、ちょっ…!」
ウインクして急に笑顔になるとまたしても俺の手首を掴んで引っ張った。
「デロギス、あなたにお客さんよ!」
お姉さんは部屋を出て廊下を進み一番奥の部屋に行くと、勢いよくドアを開ける。
「…客だと?」
部屋の中にはテレビやベット、ソファにテーブルに本棚しかない簡素な感じだった。
「客なんて呼んだ覚えはねぇが…」
ソファに座ってた男が立ち上がりこっちに向かって歩いてくる。
…おう、こいつかなりデカイぞ。
これ、身長が2m超えてんじゃね?
ガタイもかなり…俺と3回りほどの差がありそうな体躯だ。
いやー、こいつを見てると某大陸を襲ってた盗賊団の頭を思い出す。
あの力が強いだけだった木偶の坊よ。
だってこいつの腕、絶対に俺の脚よりも太いぜ?
首の太さが丁度太ももぐらいかも…
まあ戦いはガタイじゃねぇけどな。
「おい、このヒョロいもやしはなんだ?」
「あんたに用があるんだとさ、案内してあげたんだから私は受付に戻るよ」
「あ、ありがとうございます!」
ヒラヒラと手を振って出て行こうとするお姉さんに頭を下げてやたらデカイ男と向き合った。
「あの…!円卓の騎士さんですよね…!?当主からある物を渡すように言われて来たんですけど…!」
「元、だがな…あのクソ野郎共が俺から剥奪しやがった…!」
「ち、因みに称号の方は…?」
俺はイラついてる男にオドオドした感じで聞く。
「ボールスだ、今は青二才の若造だがな」
よっぽど後釜が気に入らないのか男は吐き捨てるに言ってソファをドカッ!と蹴飛ばす。
「こ、コレ…当主からです!中に手紙が入ってるそうなので!では失礼します!」
男の行動にかなりビビったような演技をして紙袋を男の側に置くと焦ったように部屋から出る。
…さて、コレでおさらばだな…頭の弱い反逆者君。
ポチっとな…
部屋から少し離れた場所で伏せてポケットに入れてあったリモコンを取り、ボタンを押した。
ドカン!!という爆発音の後に激しい衝撃があり、ガラガラ!と上から建物の破片が落ちてくる。
くっそ…近すぎたぜ、少しだが爆発に巻き込まれたか…
衣服は一般的なやつだったので爆発のダメージを軽減してはくれなかった。
俺はガラガラ…と建物の残骸を崩しながら立ち上がる。
チッ…服が少しボロボロになったか、まあそんな露出が多いってワケでもないからいいか。
辺りを見渡すと瓦礫が通りやら他の建物やら…周りに少し飛び散っていた。
やっぱりあの火薬量じゃこの建物を半壊させるのが関の山だな。
「いたた…一体何が…?」
どこで誰が見てるのか分からないので一応演技をしておこう。
「ちょっと!何があったの!?」
残骸の中でキョロキョロしてると受付のお姉さんが血相を変えて走ってくる。
「それが良く分からなくて…はっ!あの人は!?あの円卓の騎士さんは無事ですか!?」
とりあえず怪しまれない程度に焦った振りをして瓦礫を退けながら多分死んだであろう標的を探す。
「ち、ちょっと…!」
「あの人が…あの人が僕を庇ってくれたんです!!急に変な人が現れたと思ったら、逃げろ!って部屋の外に投げてくれて!それで…!」
真っ赤な嘘をあたかも本当のように大声で言い頑張って涙を浮かべる。
「変な人…?」
「はい!一瞬しか見えなかったですけど、黒いローブを被った人です!」
適当にそう言っとけば信じるんじゃね?
つーかコレで生きてたらやべぇよな…置いて爆発させるまで一分ぐらいしかかかってねぇんだから。
だってさ…油断してる状態で紙袋から取り出してラッピングを破って中身を見るまでってどんなに早くても一分ぐらいはかかると思うぜ?
逃げるとか防御とか回避できる時間は無いだろ。
もし生き残ってたらどうやって回避したのかスッゲー気になる。
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