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「いや~、ていとのソレは本当に便利だねぇ」



瀕死のエルーとリザリーの傷を治してから5時間後。



俺はショコラと共に標的の居る国、ラニギュアに来ていた。



えーと…昔はなんて名称だっけ………うーん………喉元まで出掛かってるのに………くそっ、もういい。



どうせ後から思い出すさ。



その前に何故ショコラと一緒に来たか、を説明しよう。



アレは遡る事もない3時間前…マキナに行き先を聞かれ国名を告げると、ちょうどショコラがその国の近くに用事があるとか。



ついでだから一緒に連れてってあげれば?とか言われしょうがなくアッシー君になって今に至る…っつーワケで。



…でもさっき研究所でショコラに会った時に、本当はその国に行くのは3日後を予定してたんだけどね…と言われ苦笑いされるっていう。



じゃあ別に一緒に行かなくてもイイじゃん!!とその場に居ないマキナに対して内心ツッコんだ。



「そりゃどうも…つーか3日後なら今来なくて良かったんじゃね?」


「いやー…予定が早めれたし、なにより移動時間と移動経費の節減は大きいよ~」


「その移動時間と移動経費が減った分俺の体力も減ったけどな」



今は昔に比べて遥かに燃費が良くなったとは言え影移動って結構な体力を消耗するんだぞ。



「えー、異国では時は金なりって言うんでしょ?」


「ソレとコレとどういう関係があんだよ」


「限りある時間を大切に使おうじゃないかって」


「ダメだ話が通じねぇ…」



言葉のキャッチボールを諦めてそのまま大通りを歩く。



おっと、一応俺は変装してるぜ?



顔も服装も声も何かも元とは違う。



ショコラも一応マスクを付けて茶髪のヘアーウイッグを被りその上から帽子を被るという簡易的な変装をしている。



「ソレにしても最近は随分丸くなったと言うか物分りが良くなったと言うか…どうしたの?」


「何が?」



ショコラの心配そうな質問に俺はすっとぼけた感じで返す。



「今回の暗殺の件、いつもなら上からの頼みなんて『面倒だからパス』とか即答で断るじゃん…この前の件も快諾してたし…」


「別に…あの元上司には色々と世話になってたからその恩返しだよ、ムダに丁度タイミング良くてな」


「タイミング?」


「あ、そっか…お前はまだ知らないんだっけ?」



俺は大通りの人波に流されるように歩きながら同じように歩いているショコラに昨日…一昨日?の事を簡単に話した。










「うっそー!?あの炎の冷三鬼女がぁ!?」


「…驚くのはいいけどもっと静かに驚けよ」



幸いな事にこの大通りは活気に溢れてガイガイワヤワヤしてるため目立つ事はないが。



「あ、そだね…誰が聞いてるか分かんないし」


「つーワケで今話した通り、恩返しされたから俺も恩返ししようかなと……タイミング良すぎて監視されてる感が否めないけど」


「確かに、でも流石にてい…んんっ! 今はデリトだっけ?の動きを監視って無理でしょ、私達でもかなり難しいもん」



俺らみたいな暗殺者は人の視線に敏感だからな…今はもはや5秒以上見られてたら視線に気づくぜ。



まあでもショコラ達も視線に敏感と言えば敏感だけどな。



しかも俺らは見張り、監視、尾行、追跡を撒く技術にも長けてるし。



養成学校時代の暗殺科や諜報科でそういった技術を磨いてたから。



「そりゃそうか…あ、そういや報酬の話…してなかったわ」


「え、恩返しなのに報酬を気にするの?」


「後々も関係を続けたいのなら成果に見合った対価を渡すのは当然だろ?」



恩だけで人を動かせるほど今の世の中は甘くない。



とは言え、俺は金なんて要らんし…国宝とかの品物も要らん…貴重な鉱石とか魔物やらの素材もほぼ持ってるんだがな。



「あの炎の…ミラリスだっけ?その人にも何かあげたの?」


「ああ、ドラゴンの肉で料理を作ってやったぞ」


「えー!うそー!いいなー!!…って、え?そのドラゴンの肉はどこから入手したの?」




…そこらへんは面倒だったから端折って説明したのに…



「ん~、まあ実はな…」



どうせマキナやリザリーと同じ反応をするんだろうなー、と思いつつあの魔導師とか言ったおっさんの事を話す。



「魔導師かぁ…操作系の魔術って凄くない?」


「そうか?雷属性だったら出来るだろ」



生物の脳…脳波さえ乗っ取れば操り人形のごとく意のままに操作出来るんだから。



「あ~、そう言えばデリトの研究に脳科学のヤツがあったねぇ…人間をラジコンのように操るリモコンの作り方だっけ…?」


「そんなんやったっけ?」



あの頃の俺ってマジでどんな研究してたんだよ…脳科学?ラジコン?リモコン…?



ちくしょう、全く思い出せねぇぜ。

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