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お、この国って…………ラッキー!



確か災いの種になった少年が居る国じゃん!



すっかり忘れてたけど、標的をサクッと殺してアポでも取ろう。



…女神ガイアに言われてからかなり時間が経ってるような気がするが…



まあ寿命が果てしなく長い天界の奴らからしたらこの世界でどんだけ時間が経ってようが気にしねぇよな。



いやー、思い出せて良かった。



この元円卓の騎士っつー反逆者に感謝だねぇ。



「表向きはその国で最高と言われるギルドに所属している」


「はっ、ユニオン以外のギルドなんてたかが知れてるだろ」



弱小国のギルドなんて弱小に決まってらぁ。



元上司の言葉を鼻で笑い飛ばして資料を捲る。



「元とは言え円卓の騎士の称号を持ってた男だ…油断するなよ」


「別に俺がミスった所でユニオンに被害はいかねぇよ…それに俺には秘策があるし」


「秘策?」


「そ、まあソレでも失敗したらドンマイって事で」



もしかしたら予期せぬ事が連続して起きる可能性も無きにしも非ずだろ。



「お前が男の標的を相手に暗殺を失敗すると?」


「世の中何が起こるか分からねぇじゃん…もしかしたら可愛い幼女が『パパを殺さないで!』とか泣きながら標的を庇うかもよ?」



可愛い幼女に泣きながらそう言われたら殺せねぇ。



養成学校時代にもそんな前例はいくつかあったし。



「…そう言えばお前はソレで標的を見逃し、何回も懲罰房行きになってたな」


「美人な奥さんが『主人を殺すなら先ず私を殺しなさい!』とか言って標的の前に立ちはだかったり」



あんなんされたらもうどうしようも無いわ。



怒られるの覚悟で帰還するしかねぇよ。



「…安心しろ、標的は独身で彼女もいない」


「こういう時に限ってムダに美人系または可愛い系のギルメンもしくは受付嬢が暗殺の邪魔したりと…不測の事態なんて挙げればキリがないぞ」



まあ家族や恋人が居ない奴でそういうケースになった場合は日を改めればいいだけだけど…



女の影が見える男を暗殺するのが一番骨なんだ。



どうやったら女が一番悲しまない殺し方をするか、で悩むし。



ま、基本的にそういう奴らは毒殺してるけども。



女装して標的と接触してからの誘惑。



そしてワザと街中で彼女や奥さんに見せつけるように手を組んだりベタベタとイチャつきながら部屋に誘う。



その場合は彼女や奥さん側の行動も把握してなきゃ行けないから面倒なんだがな。



そんで部屋に入り手料理を作って毒を混ぜ食べさせる。



当時のユニオンの新薬で、無味無臭で溶けやすく摂取した5分後にはお陀仏。



心筋梗塞とか脳梗塞では無いから怪しまれはするけど…



救急車が来る頃にはもう別の変装して国に戻ろうとしてるから捕まらないし。



んで去る前に現場に適当にでっちあげた手紙を置いておけば完璧。



内容は浮気した相手に永遠に自分の物にするために毒殺した、って書けば普通に殺すよりは奥さんや彼女の精神的ダメージも少ないだろ。



…はぁ…戦場だったらそんな面倒な事考えなくてもいいのになぁ…



暗殺だからしゃーないと言やぁしゃーないか。



「…お前のような暗殺者は今まで…いや今現在もだがお前以外見た事無い」


「程人君はかなり特殊過ぎる部類の人間だからね」


「うるせ、お前らもかなり特殊過ぎる部類の人間じゃねえか」


「同属同士は磁石のように惹かれ合う、と言うことか」



いやいや、ソレを磁石で例えるんだったら同属嫌悪だろ。



SとSは反発し合ってSとNがくっ付くんだから反対の属性…反属か?



例えるならサディストとマゾヒストの相性が良い、みたいな感じじゃね?



四字熟語にすると『反属愛好』ってやつか?



…そんな言葉あったっけ?あったような無いような……どうでもいいや。



「お、終わった」



たった今、エルーがリザリーの腹に剣をぶっ刺した。



あの激しい戦いの末に勝ったのはエルーだったか。



「じゃあ、この資料は覚えたから返す…期間は?」


「あと5日ほどだ」


「まあイケるな…多少は安心して帰っていいよ」



俺は元上司に手を振り先に歩いて行ったマキナを追うように歩き出す。



























































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