22
「だとさ」
「…こんなのにも情けをかけるなんて…やっぱりあなたは優しい」
「本来は女の子にしか優しくしねぇんだがな」
肩を竦めて鍵を受け取り、おっさんを牢屋から出した。
「ふぅ…どうなる事かと思った…」
「…コイツが出たって事は見張り必要無くね?」
「確かに…これより見張りの任務を解く、次の任務を言い渡すまで自由にしてて良し」
「「「ハッ!了解しました!」」」
つーワケで、入って来た時は二人だったのに…出る時には6人に増えてるっていう。
あ、外の見張りも含めたら8人だな。
「…数時間振りの外の空気がこんなにも美味いとは…」
「よーし、じゃあこれから今の王を失脚させよう」
「今の時間は…王の間に居ると思うけど」
兵士達を解散させてこれからの簡単な予定を立てる。
「実際問題、失脚させるってどうすればいいんだ?殺す以外の方法って初めてでさ」
「議会の人達を取り込む方法が一般的かな?今回もその方法だったし」
「…ミラリス将軍、貴様は先ほどまで国家転覆を狙っていた側ではないのか?」
おっさんが訝しげにお姉さんを見た。
「そんなのはどうでもいい、私は村さんに従う」
「いやいや、従うとかじゃなくて協力でいいよ?」
「じゃあ協力って事で」
「…本当にあなたは何者なのだ?あの炎の冷三鬼女と呼ばれたミラリス将軍がこんな…」
まるで別人だ、とおっさんは呟く。
「今はただの放浪ニートだよ、んで何処にでもいる感じの村人Bさ」
「確かに見た感じは何処にでも居る平凡な一般人のようではあるが…どうやってミラリス将軍を抱き込んだのだ?」
「あんた、せっかく助かった命をムダにしたいの?」
お姉さんは初見の時のような殺気と冷たさを込めて言う。
「い、いや…済まなかった…ではなく、ごめんなさい」
おっさんは大量の冷や汗をかきながら後退り頭を下げて謝罪する。
「今の内に言っておくが…あんたが王に返り咲いた所で立場は俺ら以下だ」
俺は自分とお姉さんを指差したあと、おっさんに向かって親指だけ上げてた手を下に向けた。
いわゆる喧嘩を売るジェスチャーだな。
「…そ、そうだな…」
「死にたくなけりゃキモに命じとけ、まああんたが死んでもユニオンから派遣出来るから後釜には困らねぇけど」
「…!思い出した!」
おっさんを脅しにかけてるとお姉さんが急に声を上げる。
「?何を?」
「あのオーストラリアの王族を護衛をしてたとされる凄腕の名前が確か、村人B…!」
「…は?」
…え?なにか噂が流れてる系?
「宮殿に押し寄せた250人以上ものテロリストを円卓の騎士と一緒にたった二人で撃退し、しかも一人で国際テロ組織を潰したと噂されていた…あの…!」
「なんだと!?こいつがあの凄腕の護衛だとでも言うのか!?」
「!?待って、確か…オーストラリアの街を襲った何千体と言われる数の魔物を一人で退治したって噂になった人の名前も、村人Bだったような…っ!?」
…ありゃまー…結構噂って流れてんのね。
二人は俺を見てこれでもか、と驚いた顔をした。
…お姉さんは可愛いけどさ、おっさんはキモいわ。
「…ま、まさか貴様…いや、あなたがその村人Bだと言うのか…?」
「あー、まあ…うん…間違っては…無い、かな?」
おっさんの言葉に歯切れ悪く答える。
「そんな奴が実在するなら是非とも戦ってみたいものだ、と嘲り笑ってたけど…まさか本当に実在したなんて…」
しかも、ソレが目の前にいる…と呟いて俺の身体をペタペタ触った。
「うーん…火の無い所に煙は立たない、的な?」
「そうか…!そんな伝説のような事を残す人だからミラリス将軍は…」
お姉さんは触るだけに留まらずギュッと抱き締めてきたよ。
前から後ろから右から左から…何がしたいんだ?
「ソレはさておき、サッサとあの独裁者を潰さないと…女の子が犠牲になる前に」
男だったら犠牲になろうと構わないけども。
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