21

階段を下りた先に更にドアがあり、ソコを開けると地下室のような空間が。



…やっぱり城の地下って宝物庫か牢屋になってるんだ。



こういう所を見るとクレインを思い出す…元気でやってるかな?



あの城と似たような造りになってる牢屋を見渡しながら奥に進む。



どうやらこの牢屋に入ってるのは一人だけらしい。



見た感じ15、6部屋はあるのに。



「ココ」


「…?誰だ?ココは立ち入り禁止だぞ」



唯一人が入ってる牢屋の前には屈強そうな兵士が三人立っている。



「…私にそんな事を言うなんて…死にたいの?」


「こ、これはミラリス将軍!!失礼しました!」



お姉さんが俺の腕から離れ殺気と冷たさを込めた声で言うと兵士は土下座して謝罪した。



「次は無い、肝に命じておけ」


「「「ハッ!!」」」



三人全員が戦慄しながら敬礼する。



「よう、あんたが失脚させられた王様かい?」



俺は兵士を押しのけて牢屋に近づき質問する。



「…誰だ?」


「生憎と名乗れる名前が無くてな」


「あ、そういえば名前まだ知らないや」



お姉さんは思い出したようにポンと手を叩く。



「聞いてもいい?」


「二つ名ってか通り名なら」


「えー?まあ本名は後から聞けばいいか…で、なんて言うの?」


「村人B」


「…え?」



聞きそびれたのか耳に手を当てて聞き返した。



「俺から名乗る際には村人Bって言ってる、俺らしくて良い名だろ?」



最初はそうでもなかったのに…最近ではこの名前が気に入ってきてるっていう。



「村人…B…?なぜそんな名に?」


「とある国の王女様を護衛した時に、第一声でそう言われたから」


「なるほど…村人B…確かに良い名かもしれない」



ボソッと俺の二つ名?を呟いてお姉さんは笑顔でそう言う。



「周りからは村さんだのBさんだの呼ばれてるよ」


「…じゃあ村さんって呼ぶね」


「ああ」



ニコニコ笑ってるお姉さんを兵士達や元王様は信じられないようなモノを見る目で見ている。



「さて、本題に入るか…あんたこの牢屋から出たいか?」


「…は…?」



俺の提案におっさんは目を丸くしてマヌケな声を出した。



「だから、ココから出たいか?と、別にもう処刑は無くなったから暫くそのままでも良いと思うけど」


「出たいに決まっとるだろうが!」



おっさんは怒ったみたいに力強く叫ぶ。



「おい、お前…明日の処刑が中止になっただと?そんな事は聞いてないぞ!」


「あ、処刑は中止にしたから」


「「「な…!?」」」



兵士の言葉を聞いたお姉さんが普通に伝える。



「なにか文句でもあるのか?」


「「「い、いえ!全てはミラリス将軍の意のままに!」」」



三人共声を揃えて敬礼を止めバッと胸の高さに腕を上げた。



…ふーむ、確かに統率力はありそうだ。



それが恐怖や畏怖によるものだとしても大したものだよ。



「お、お前は何者だ…?」


「良く聞かれるが…俺は俺だ、それ以外の何者でもない」


「ソレより出るの?出ないの?」



焦れったくなったのかお姉さんは鍵束を指で回しながら聞く。



「出る!出してくれ!」


「はあ?出してくれ?…おいおい、王様ともあろうお方が頼み方の一つも知らんのか?」


「助ける人と助けられる人、立場が同等だと思うなよ」



お姉さんと俺の両方でおっさんを責める。



「なに?お前は私を助けに来たんじゃないのか?」


「気が変わった、こんな礼儀も自分の置かれてる立場も知らん奴は助ける価値もない」



俺はゴミを見るような目と冷たい声でそう言い背を向けた。



とりあえず独裁者を失脚させて後はユニオンから誰かを派遣させるか。



それだったら調停者も納得してくれるだろうさ。



ってか良く考えたら俺の役割は処刑の阻止だったから達成してるじゃん。



「ま、待て!頼む!待ってくれぇ!!」



地下室から出ようとドアに手をかけるとおっさんが力の限り叫んで引き止めようとする。



「どうする?」


「処刑はしないんだからそのままぶち込んどけ」


「そうね」


「お願いします!!ココから出して下さいぃ!!」



ドアを開けるとおっさんが大声で叫びながら必死に懇願した。



「うるさいぞ!静かにしろ!」



大声で叫ぶから兵士に怒られてやんの。



…ここ地下室だから声が響くんだよなー。



「…はぁ、仕方ねぇな」



俺はため息を吐いて再度おっさんの所に向かう。



「どうした?立場を弁えたか?」


「…はい!先ほどは私が間違ってました!なんでもします、ですからココから出して下さい!お願いします!」



おっさんはプライドや意地を完全に捨てたらしくそう言った後に土下座して頭を下げる。

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