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そんな勿体無い事を俺がするわけねーじゃん。
あ、言い忘れたけど…俺が能力を与えた奴らに魔力持ちなんて一人もいないよ?
だから女の子達には魔力を吸い取る魔石を改良したアクセサリーを渡してある。
魔力持ちに触るか近くを通れば少しづつ魔石の中に魔力が溜まっていく仕組みになってて…
女の子達はその溜まった魔力を使って能力を使う、って感じだな。
…で、実はそのアクセサリーを身につけてると常に身体に魔力を浴びる事になり…髪の色と目の色も変わってしまう。
と言っても急激にってワケじゃなく徐々にだが。
だから目の前のお姉さんもさっきのあの野郎も、俺が初めて会った時とは髪の色も目の色も違う。
「…あなたと戦おうだなんて微塵も思わない」
ミラリス将軍はぼーっと考え込んでた俺の目をジッと見てそう言い切った。
「そりゃありがたいが、俺の用を聞いても同じ事が言えるかな?」
このお姉さんは独裁者に従って戦い昨日までの国王を蹴落としたんだから…
その蹴落とした国王を助けようとしてる俺とは対立する立場だろ?
元々戦うために来たんだから戦いになっても支障はないが。
「どういう事?」
「俺は失脚させられた国王の処刑を止めるために来たんだ」
「そう、じゃあ明日の処刑は中止で」
……え、今なんて言った?俺の聞き違いか?
「えーと…は?」
ミラリス将軍の言葉を飲み込めきれずにマヌケな声が出る。
「明日の処刑は中止にする」
「…マジで?」
「マジで」
…う、うーん…今日は色々と衝撃的な事が多い日だなぁ。
まあ楽できるからいっか!
俺は混乱してきた頭を無理やり納得させた。
「いいのか?」
とは言え一応アレなので聞いてみる。
「私の意見に逆らう奴は殺すから大丈夫」
…お姉さんはいい笑顔で物騒な事を言った。
「でもそんなんだと将軍の座を剥奪されないか?」
「あなたと戦うぐらいならこんなの要らない」
将軍という中々凄い地位をこんなの扱い…
どうやら本当に俺とは戦う気が無いみたいだ。
………こんなの言うと見返りを求めて、みたいでマジでアレなんだけど…
救って良かった…
「なんなら今の王を殺してまた政権を戻す?」
「政権を戻すのには賛成だけど…とりあえず王を救うのが先だ、殺すか否かは後で決めよう」
「案内する」
そう言うとミラリス将軍…やっぱりもといお姉さんは俺の左腕に抱きついて来る。
「…まあいいか」
剥がすのも勿体無いのでそのまま一緒に行くことにした。
「そう言えば…あの時から何年も経つのにあなたの見た目、全く変わらなくない?」
「人間じゃないからな~」
「そうなんだ、でもその方が納得する」
俺の左腕に抱きつきながらニコニコ笑顔のお姉さんを見て、すれ違う人達は三度見ほどする。
まあ最初の…常に殺気と冷たさを纏ってる無表情的な感じの顔しか見てないんなら仕方ないよな。
俺だってあのキャラの変わりようにはかなり驚いたし。
あの炎の冷三鬼女がただの美女になってんだから…そりゃ三度見ぐらいするって。
いや、どの炎の冷三鬼女か俺には分からんけども。
「ココの下にいる、開けて?」
一階に下りて城の中央?の建物に入り暫く廊下を歩くとドアの前で止まった。
「「…?ハッ!お疲れ様です!!」」
ドアの前で見張りをしてるであろう二人の兵士はお姉さんを見て不思議そうな顔をする。
そして何かに思い至ったのか一気に顔が強張り全力で敬礼した。
「し、暫しお待ち下さい!」
震えた手で鍵を挿してドアを開ける。
「どうも」
「ちゃんと見張っててね?」
「「は、はい!!」」
兵士達はお姉さんの言葉に震えながら返事した。
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