18


「お疲れ様ですー」「ご苦労様でーす」


「お仕事頑張って下さいね」「そちらこそ」


「おい!お前…見慣れない奴だな」



城内のメイドやらバトラーやら掃除業の人やら見回りの兵士やらとすれ違いざまに挨拶を交わしながら歩いてると、なんか変な男に話しかけられた。



「ちょっと当主の使いで…将軍様宛にお手紙を」



ポケットから封筒を取り出して男に見せる。



一応中身もちゃんと入っていて調停の使者に適当にそれっぽく書いて貰った。



だからもし見られてもバレる心配は無いだろ。



「当主?ああ貴族か、どこのだ?」


「すみません…当主の方から内密にしろ、と言われてるもので」


「…ふん、そんなお飾りの剣をぶら下げてる奴に警戒する必要もないか」


「警戒…ですか?」



お飾りの剣て…まあそう見えるんならありがたい事だけども。



「お前には関係無い、邪魔にならないようサッサと用事を済ませて去れ」


「…失礼します」



俺の質問に眉間にシワを寄せたため頭を下げて再び廊下を歩く。



「あの…!」


「はい?」



歩き出すと直ぐに気弱そうなメイドさんが話しかけてきた。



どうやら俺とあの男のやりとりを見てたっぽい。



「だ、大丈夫でしたか?」


「あ、はい」


「ち、ちょっと午前中に色々あって…今この城内はピリピリしてるんです」


「あ、そうでしたか…」



何があったが知ってるけども知らないような感じで少し驚いた振りをする。



「なので用事を済ませたら、直ぐに逃げた方がいいですよ…」



気弱そうな優しいメイドさんは俺に耳打ちすると小走りで去って行く。



あ…あのメイドさんに女将軍の部屋の場所を聞けば良かった…ちっくしょ。



…しゃーね、ちょい疲れるが気を張るか。



魔力持ちで強いんなら直ぐに場所分かるだろ。



適当に人が居なさそうな場所に行って目を瞑り集中する。



…………………………居た。



こっから20m先ぐらいか…近いな。



場所さえ分かればこっちのモンよ。



俺は早速小走りで移動する。



「ココだ」



部屋の前に着くや否やドアを数回殴った。



ドンドン!と強い音が辺りに響く。



「誰だ?」


「お手紙を届けに」


「…入れ」


「…失礼します」



中から入室許可の返事が聞こえ、ドアを開ける。



部屋の中に入って直ぐにドアを閉めて後ろ手で鍵をかけた。



「手紙とはなんだ?」



部屋の奥の方でナニカに座ってた美人なお姉さんが鋭い眼光で俺を睨みつける。



…美人なお姉さんの下着姿に気を取られて気づかなかったが部屋の中がえらい事になってんじゃん。



壁や天井に血が飛び散ってて床には人間の手足が転がっていた。



あれ?よく見ると美人なお姉さんが座ってるのって人間の死体じゃね?



何体か積み重なっているみたいだけど。



「…聞こえてないのか?手紙とはなんだ?」



美人なお姉さんは殺意を孕んだかなり冷たい声でそう言う。



「その前に確認したいんだけどあんたがシェリー・ミラリスで合ってる?」


「…そんなに死にたいか」



俺が問うと中々の殺気を放ちながら立ち上がる。



「どうやらニセモノじゃないようだな」



一応この部屋の中にお姉さん以外の気配はしないが…実は人違いでした、とか避けたいし。



「貴様…何者だ?」


「残念ながらあんたみたいに変な異名とかないから名乗れる名前が無くてね」



…この部屋の惨状を見ても殺気を向けられても顔色一つ変えない俺を警戒してるようだ。



ほう…無鉄砲に攻撃してないで先ずは様子見か。



確かにそこらへんの奴らとは一味違うようだな。



何も考えずに攻撃してきたらカウンターを食らわせる予定だったのに。



「…ただの雑草では無さそうだな」


「そりゃどうも…」



俺は被ってるローブを取りメガネを外して髪を適当に分ける。



…ただ単にいつもの見た目に戻ったわけだが。



「…!?あ、あなたは…!」



美人なお姉さんがなぜか俺を見て驚いた。



「?…あれ?」



驚いてるお姉さんの顔を見るとどこかで見た覚えが…………ああ!



多分この感じ…!間違いない、さっきの少年の時と同じだ。



…なんてこった。



まさか一日もしない内に二人目と会うとは。



人間の世界は狭いなー…

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