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「ごめん、なんて?」


「ほのおのれいさんきじょ」



マキナは聞き取り易くするために一文字ずつ発音する。



「なんだそれ?」


「炎の魔術師なんだけど…冷徹で冷酷で冷血な性格+見た目がクールビューティーな美女なんだって」


「まるで正反対だな」



二つ名なのか通り名なのかアダ名なのか分からんけども…



炎と氷が一緒に入ってるっておかしくね?



明らかに矛盾してるだろ。



燃える水に冷たい火、みたいな。



「それに加え卓越した身体能力と類稀な統率、指揮力がある才女らしいよ?」


「それで更に頭が良かったらまるでお前かショコラかリザリーの生き写しだな」



話を聞いてる感じではとても身近な誰かさん達を思い浮かべるんだが。



でも属性が違うし…実はこいつらの姉妹でした!って可能性も低いハズ。



あれ?そういやマキナとショコラって一人っ子だったっけ?



いや…まあその女将軍が仮に俺の知り合いの誰かの姉妹だったとしたら、話の一つぐらいは聞いてると思うから違うな。



「ってか炎の魔術師なのに性格が冷酷なのか?」



基本的に属性は根本的な性格寄りになるハズなんだけどねぇ。



俺の身近な奴らで例えるなら…



マキナは変化した?性格→電波的な?=雷系


エルーはまあ主人公に近い性格→熱血?=炎系


ショコラはキレると怖い性格→地割れ?=土系


エリアは掴み所がないアホな性格→自由?=風系


リザリーはかなり刺激的な性格→ビリビリ?=雷系




的な感じで。



冷酷って言ったら基本的に氷系にならないとおかしいんだが…



もしかして炎と氷の二属性持ちか?



それだったら一応辻褄は合う。



「だよね、私もソコらへん気になるんだけど…もしかしたら炎と氷の二属性持ちかもしれないし」



あ、俺と同じ考えだ。



「まあ会ってみりゃ分かるか…つーかいくら強かろうが所詮は女、俺には勝てねぇさ」


「む、その言い方はどうかな?戦いってのはやってみないと分からないよ」


「普通は、な」



今回に限っては相手が女って分かってんだから楽勝だぜ、と言ったらマキナの顔が不機嫌そうになる。



「ああ、ごめんごめん…差別してるワケじゃないんだ、ただアノ薬を使うってだけで」


「アノ薬?」



不機嫌な顔から一転してキョトンとしたような顔になった。



「超強力で超即効性の媚薬」



アノ薬は俺でさえ鎮静薬を飲まないといけないほどのシロモノ。



息を止めようが布で口や鼻を抑えようが意味無し、皮膚から浸透していく。



なんせ生物のほとんどは皮膚呼吸をしてるし人間が防げる確率は0.002%…



つまりほぼ不可能なんだなー、これが。



…媚薬じゃなくて媚香に近いかな?



ともかく、疼く身体では集中出来ないから魔術の発動は無理。



更に力が上手く入らない状態でこの俺を相手に勝てるワケがない。



「…ちょっとズルくない?」


「戦いってのはなんでもアリだろ、それに縛りプレイなんてのは俺の性に合わん」



手段を選んでも勝てるってのは強者だけ。



俺みたいな弱者に手段を選ぶだけの余裕なんてねえんだよ。



あーあ、強者はいいなぁ。



縛りプレイで敵と戦っても勝てるなんて…すっげぇ羨ましいんだけど。



「縛りプレイってハードなアレみたいだね」


『…創造主……かめ……?』


「なんで俺が縛られる側なんだよ」


「じゃあ私を縛る?」


「縛るか!てかなぜにハードSM?ノーマルじゃダメなのか?」



結局会話が下の方に流れて行き、研究所に着くまで下ネタばっかりだった。

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