15

「同士討ちとはエグい事を…」


『…その……が……く…』



アニーの言うとおり確かにその方が楽だよな…



このまま部屋を出れば俺たちの所為にならないし。



「見た感じ体だけ操ってるっぽいね」


『…違う…同士……ち…させ……れい……ら…』



同士討ちさせる命令ねぇ…でもそれじゃ意識がそのままってのもおかしな話じゃね?



あ、そっか…もしかして脳への伝達を切って身体に直接命令してんのか?



反射神経っつーか体に染み付いた習慣っつーかそんな感じで。



だったら無意識的な行動になるワケだ。



…うん、この光景を見てるとまるで幽霊に取り憑かれた人達の大惨事みたいだぜ。



「ありがとなアニー、じゃ行くか」



俺はアニーの頭を撫でてドアを開ける。



「た、助けて下さい!中で…中で!」



そしていかにも被害者です、って感じで黒服のお兄さん達に言う。



後は省略。



アニー曰くあいつらは周りの人たちを殺すと自殺するらしい。



万が一の確率でその場を生き伸びたとしても…



12時間後には首から下が壊死するとか言ってたから生き残れはしないだろ。



雷だか電気だか何の精霊か知らんが強すぎ。



「…なあアニー、さっきのアレって俺達にも効く?」



研究所に戻る最中の車の中で俺は眠そうなアニーに質問した。



『マスター…ち…効か…い……思う…ど…創造主は分からない』



なぜか最後だけハッキリと言われる。



え、それは俺がマキナ達に比べて圧倒的に弱いからって事なのか?



「そっか…なら気をつけねえとな」



あんな状態になったらどう切り抜けるか、の対策を練らねば…



『…違う…』



顎に手を当てて考えてると否定するように首を振った。



『…創造主…は、やろ…と……思わ…い…ら…』



あー、そういう事ね。



そもそもやろうとすら思わないんなら、効くか効かないかなんてどうでもいいわな。



ふむ、だから分からない…か。



俺は納得したようにアニーの頭を優しくポンポンと叩く。



ピルルルル…ピルルルル…



その直後に俺の小型無線機が鳴る。



「もしもーし」


「遠の字、予だ」



んん?この喋り方は調停者じゃねえか、なんで俺の番号を知って……まあいいや。



「はいはい、何が起きたんですかー?」


「今しがたイランで王が変わり、独裁者が新しい王となった」



イラン…?……ああ!ミュンラか!確かイランって昔の国名だったよな?



んで?そこで政権が変わったと……え、独裁者?



「それで?」


「明日には元国王が処刑される予定らしく、ソレを阻止しろ」


「えー…まあそうしろって言うんなら従うけど…」


「細かい事はイラ…ミュンラに居る使者に聞け…ああ最後に」



んあ?最後に…?



「独裁者が従える将軍は女だがかなり強いそうだ」



たっぷりと4秒ほど間を空けてからそう言われ電話が切れた。



…女将軍?で、かなり強いの?



…マジかよ、面倒くせぇー!



「誰からだったの?」


「調停者」


「ふーん、なんの電話?」


「ミュンラの政権?つーのが独裁者的な奴に変わって元国王が明日処刑されるから阻止しろだと」



なんで調停者が人間同士のイザコザに手を出すのか分からんが…



どうせ阻止しないと世界のバランスがほんの僅かでも崩れそうって事だろう。



「処刑の…阻止?」


「ああ、ってなワケで俺は研究所に戻り次第準備を整えて行かないと」



ゆっくりしてる暇もねえな、おい。



とは言え…コレも本来の役割だし、インポータントミッション的な?



今までのはプライベートな…やってもやらなくても全くどうでもいい事だったんだけど。



「しかも相手側にはかなり強い女将軍が居るとか」



ザックリ聞いた感じだから、多分一般市民から見たらかなり強いって事だろ。



だからどんくらい強いのかよく分かんねーんだよなぁ…



「ミュンラ…女将軍……なんか聞いた事あるかも」



マキナは額に手を当てて何かを思い出そうとしてる。



「思い出した!炎の冷三鬼女だよ!」



下を向いて3分ほど考えると急に顔を上げて手を叩いた。



…え?今なんて言った?炎?

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