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「うーし、肉焼くぞー!」



ドラゴンの肉をお土産として持ち帰った翌日。



当然そのままで生肉を食べられるワケが無いので色々と仕込んだ。



んで、ユリに手伝ってもらい一日間で完全に熟成させた完璧なる肉の完成。



ソレを昼ごはんとしてまたしても外で焼くことに。



美味い部位だけしか斬らなかったから全部で20kgぐらいしか無かったが…



ソレだけあれば十分だろ。



『早く早く!』


「ちょっと説明ぐらいさせろよ」


「説明?」


「この肉はユリのおかげで完璧な熟成肉に進化した」



持ってきた時よりは小さくなっているブロック肉を厚切りにして持ち上げ、リザリー達に見せる。



「進化?」


「この前の肉の旨さが100%だとすると…コレは145%ぐらい」


「前のよりも更に美味いのか…!」



俺の説明にマキナ達だけじゃなく研究員も生唾を飲み込む。



「ドラゴンの肉でも一番美味い部位を完璧に熟成させたからな…コレぞこの世で最も最上級の肉だ」


「御託はいいからさっさと焼きなさい!」



…ええー…まだもう少しあったんだけどなー…



リザリーに怒られたため、仕方なく焼く事にした。



醤油と溶かしバターを混ぜた調味料を生肉の両面に塗りながら焼くと、凄く旨そうな匂いが辺りに立ち込める。



「ホラよ、贅沢に厚く網焼きだ」



トングで肉を掴みリザリー、エルー、マキナの皿に移す。



『『『私達のは!?』』』


「今焼くから…」



精霊三体に催促され、肉を厚く切りまた醤油バターを塗って焼く。



「「「…っ…!?」」」



先に食べてた三人を見ると何も喋らず肉にかぶりついていた。



「はいよ、お前らの分だ」


『『『『いただきまーす!』』』』



皿に移すや否や素手で掴んで食べ始める。



…精霊の存在を知ってる奴らがこの光景をみたらさぞかし驚くだろうよ。



『うっっっ……まーーい!!ナニコレ!昨日食べたのと全然違う!』



研究員達の分も切り分けて焼いてるとユリが右に左に走り始めた。



「この世界では一番の肉だからな」



この肉を超せる肉なんてもう魔界にしか存在しないと思う。



まあたった一日で完全熟成させれたのはユリがいないと確実に不可能だったけど。



「「「おかわり」」」


「ダメ、研究員全員に行き渡るまで待ってろ」



エルー達が三人同時に皿を差し出してきたが俺は断る。



『『『『おかわり』』』』


「ダメ、お前らもあいつらと一緒に待ってろ」


『え~!人間なんてどうでもいいじゃん!』


「俺の言うことが聞けないならもう食べさせんぞ?」



並んでる研究員の前に出て我儘を言うユリに笑顔でそう返した。



『う…』


『ユリ、創造主が待てと言うのだから待とう』


『そうよ…逆らったらもう食べられないわよ?』


『…忍耐力』



とばっちりを受けるのを恐れてか、みんなでユリを連れて離れて行く。



「「「「う、美味い!」」」」



肉を食べた人達の第一声はみんな一緒だった。



ふーむ…やっぱり人間は美味い物を食べてる間だけはみんな笑顔になるのか。



世界にもっと美味い物が溢れれば…魔物も人間も関係なく美味しい物を食べれれば争いは無くなるかねぇ?



…無理か、どうせ更に美味しい物を巡って争うに決まってるし。



魔物はさておいても人間は所詮はそんな生き物なんだから。



現状に満足しとけばいいものを…更に上を目指すとかいう。



それで争って他を蹴落とすクセに平和を望む…意味不明だよナー。



「…!産まれてきて…良かった…!」



…なんかステーキ食って泣いてる人もチラホラいるんだけど…なぜ?



「ほら、今ので最後でしょ!?おかわり焼きなさい!」


「あー…コレで最後だ」



ショコラ達に送る物は別に取ってあるから…このブロック肉が最後だな。



やっぱり40数名もいたら17kgじゃ足りんか。



「程人君!でっかく400gで!」


「はいよ」



さっき焼いたのがだいたい250gぐらいだったからほぼ倍じゃねえか。



…残りのこのブロックが5kgだから…400g×7=2.8kg残りは2.2kgか。



「そらよ、注文通りだ」


「「「ありがとう!」」」



精霊達の分もマキナ達と同じ大きさで焼く。



「ほら、お前らも…待った分大きいのやるよ」


『『やったー!創造主大好き!』』

『…一生…ついていく…!』

『アニー…その言い方だと物で釣った、と創造主に誤解されるぞ?』



…誤解ってか明らかに物で釣ったみたいになってんじゃねえか。



『…コレは…改め…の、決意…だか…問題ない…』


「なんだよ改めてって…お前らにはマスターっていうアイツらがいるだろ」



俺はため息を吐きながら残った肉をサイコロのように切って網に乗せ、火種に桜チップを入れて蓋をする。

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