第12期

1

「なぜ今になってそんな旧時代的な事を…?」



いや、そんな事よりも…おかしいぞ。



あのドラゴンの肉を捌いたのは俺だ。



養成学校の生徒達や俺達以外にあの肉がドラゴンのだって分かる奴がいるはず無い。



俺はバーベキューのコンロで牛肉や豚肉、野菜などを焼きながら考える。



「…ちょっと待て、まさかお前…」


「…今回は私達では無い…と思う…多分…」


「多分って…」


「あの肉を売る時はただの極上肉ってしか表示してなかった…でも…」



後半何かを考えながらリザリーはマキナ達の所に歩いて行く。



『…マスターは少し負い目を感じてるようね』


「まあお前らに分かり易く伝えるなら…精霊を乱獲する手伝いをしたかもしれないって事だしな」


『…それは、仕方ない』



野菜や肉を串に刺してタレを付けて焼く。



「にしても…どうすっかね」


『ドラゴンの事?』


「そ、怒って復讐しに街とか襲われたら困るし…なにより個体数が希少だから」



全部人間に狩られたりしたら肉が食べれなくなってしまう。



『なぜこうも…人間は、エゴイストなのか…』


『まるっきり共存する気が無いわよね』


「アニーには返す言葉も無いが、ニーナのは同感だな」



アニー達と喋りながらも3つのコンロで肉や野菜をそのまま焼き、一つのコンロで串焼きを作り…残る一つの蓋付きコンロで肉や野菜を煙で燻す。



5つのコンロを使っての料理?を一人でやらされているっつーね。



誰も手伝いに来させないとか鬼の所業だろ、鬼畜もいいとこやわ。



…なのに一人で熟せるっていう技術が今だけ憎い。



出来なかったり間に合わなかったりしたら誰かが手伝ってくれるんだろうが…



出来るし間に合うっていうこの磨き抜かれたスーパーな技術力!



「あ、やべ…タレが切れた」


『創造主、焦げる…』


「おっと…ありがとな」



タレを作る作業を追加したら他が疎かになってしまった。



アニーが言ってくれなかったら確実に焦がしてたな。



『それにしても…創造主の動きには無駄無く素晴らしいわね』


「料理も戦いも似たようなモンだからな、料理を極めたおかげで戦いも楽になったよ」



逆に戦いの技術が上がったおかげで料理の方にも無駄な動きとかが減って技術も上がったんだけど。



俺の戦いの真骨頂は、無駄とも思える技術でもとりあえず身につけてたらいつの間にか戦いに活きてるって事。



料理のスキルも紅茶やコーヒーを淹れるスキルも鍛冶のスキルも掃除や洗い物のスキルも全て戦いに活かせる。



それらの技術を上げようと努力してると思わぬ身体の動かし方や使い方を発見して、動きのムダが減ったりするんだよね。



世の中ムダなスキルなんて一つも無い。とは言い切れないけど…



なんでも努力すりゃ思わぬ発見をして思わぬ所で活きてくる…って感じかな。



『…みんなが美味しそうに食べてるのを見ると私たちも食べたくなるわね』


『…だけど、現世の……は無理』



ニーナとアニーは文字通り指を咥えて網の上に焼かれてる物を見ている。



…女の子が人差し指を咥えるのなんて初めて見た。



因みに天界に存在してる奴らは神や女神以外この世界の食べ物を食べられない。



精霊も妖精も天使も神獣も魔力や精気を栄養として生きる糧にしてるので、食べ物を食べる必要が無いから食べれない…みたいな。



「食べたいか?」


『『え?』』



だがこいつらが依り代にしている俺の剣は普通なら不可能な事を可能にしている。



「俺の剣に取り憑いてるお前らなら食べる事が可能になってるぞ?」



その剣を作る過程で、斬りつけた相手の血や肉を吸収して魔力に換算できるっていう仕組みを組み込んでるし。



ありゃなんだったかな…昔?元々は魔界にしか存在しないハズの食虫植物が何故かこの世界にいた。



ソイツの材料を使ったからこの剣が完成したワケだけど。

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