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「なんと」
「なんと」
「ある筋から手に入れたドラゴンの肉よ」
「「あのドラゴンの肉だよー!」」
マキナが右手をショコラが左手を肉に向かって伸ばし、リザリーが説明する。
「へぇ…珍しいモンを手に入れたな」
「入手するのがかなり困難だったらしいわ…早速焼いてくれる?」
「へいへい」
まな板にドラゴンの肉を乗せて包丁で切り分けた。
「ん…?」
「早く!」
「早く!」
切った時に違和感がしたがマキナとショコラに急かされたためそのまま焼く。
「…??…はいよ」
焼いてる最中にもやはり何かしらの違和感が拭いきれない。
一応トングでひっくり返し両面良い感じに焼いてマキナ達の皿に移す。
「「「いただきます」」」
三人同時に合掌してドラゴンの肉?を食べ始めたのを見て次のを焼く。
「テイト、俺のも頼む」
「はいよ」
「「なにコレ!?」」
エルーの皿に肉を移すとリザリーとマキナが大声を上げた。
「どうした?」
「肉が固いわ!」
「ソレにあんまり美味しくないよ!」
「…確かに、前のと比べると天と地ほどの差が…と言うかそっちの普通の肉の方が美味い」
俺に向かって怒る二人の隣でエルーは冷静に分析している。
「焼き方を間違えたんじゃないの?」
「なワケないだろ…じゃあお前焼けよ」
「…期待してたけど…ドラゴンの肉ってあんまり美味しくないんだね」
「いや、この前のはかなり美味かったぞ」
期待を裏切られたからなのかリザリーとマキナは憤慨していた。
どれ…俺も食べてみよう。
…
……
………あ、これダメなヤツだ。
倒し方とか捌き方がマズかったんだ。
勿体無い事に肉の柔らかさや旨味が全部パーになってる。
きっとドラゴンを解体した奴が下手過ぎたんだろうな。
だって最低限でも牛の肉よりは味が美味いんだぜ?
柔らかさは倒し方だから仕方ないとしても、解体を失敗しちゃあ…ねぇ?
「コレ本当にドラゴンの肉なの?もしかして騙されたんじゃ…!」
「違う、コレはドラゴンの肉で間違いない…ただ倒し方や捌き方に失敗してるけど」
「倒し方?」「捌き方?」
俺の言葉を聞いたマキナのショコラの呟きがハモりそうになった。
「…どういう事?」
「ドラゴンの解体ってのはな、実はかなり難しく…マトモに解体出来る人間はこの世界に三人いるかいないかぐらいなんだ」
当然俺とあの魔王城の料理長を除いて…だが。
その三人も料理長の昔の側近だった弟子ぐらいだと思う。
「三人…いるかいないか…?」
あの料理長と一緒に人間料理を極めようとしてた人達だから今生きてるか分からないし。
もし生きてたとしても…捕まって牢屋にいる可能性が高い。
「更に…この前やったみたいに完璧な肉の状態に出来るのはこの世界では俺を合わせて二人のみ」
この世界では俺と日比谷だけじゃないかな?魔界の魔族さん達なら何人か居そうだけども。
「ソレは…マズイわね」
「まあ味は仕方なくねえか?」
今の世の中ドラゴンの存在は知ってても実在するのを知ってる奴なんて少ないし。
ソレにほぼ全ての人間にとってのドラゴンの認識は素材であって食べ物では無い。
そんなのを捌こうなんて誰も思わないだろ。
「味のマズイじゃなくて、事態のマズイの方よ」
「事態?」
「この前世界中に出回ったあの肉、アレがドラゴンの肉だって気付いた貴族が数名いるの…ソレでこの肉も…」
「…!まさか…ドラゴン狩り…?」
リザリーは目を伏せて気まずそうに言い、俺の漏らした言葉を聞いて緩やかに頷く。
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