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『そ・う・ぞ・う・しゅ~!!』


「ぬおっ!?」



研究所に入ると同時に人化したニーナが飛びついて来た。



なんとか押し倒されまいと頑張ったため尻もちを着く程度で済む。



その頑張りのおかげでアニーを潰すという事態は回避。



「あれ?ニーナ起きてたの?」


『アニーが創造主の所に行くって聞いたから起きたの』


「だからっていきなり飛びついてくんな」



マキナに手を貸してもらい立ち上がる。



背中にアニーを背負い、右腕にニーナが絡みついてるっていう。



女の子に囲まれるとは…なんとも至福な一時よ!



「おお、羨ましい状況だな」


「ならお前も体験してみるか?」



研究所の廊下を歩いてるとエルーが研究室から出てきた。



「…いいのか?」


「じゃあ背中向けろ」



俺の言葉にエルーは速攻で振り返る。



「ほら、ニーナ…少しの間エルーに絡みついておけ、アニーも背負ってもらえ」


『…創造主が言うなら…』


『エルーシャなら…まあいいかしら』



ニーナ達は俺から離れてエルーにまとわりついた。



「おお…これぞ男の夢!」


「同感」


「だが…予想以上に歩き辛いな」


「慣れたら普通に歩けるようになる」


『『飽きた』』



結局二人…二体?共なぜか俺の背中と右腕の所に戻って来る。



「そういや飯誘われたんだけど晩飯なに?」


「ん?ああ、バーベキューとか言ってたぞ」



バーベキューねぇ…つーかエルーと喋ってる間にマキナがいなくなってるのは準備しに行ったからか?



「よし、準備手伝ってこようぜ」


「そうだな」



おそらく庭にいるであろうと予想してソコに向かった。



「おー、いたいた」



庭で何やら準備してるショコラ達を発見。



「あ…れ?なんでニーナ達もいるの?」


「知らん、それより何か手伝うか?」


「丁度良かったわ、コンロを取って来てくれないかしら?」


「オッケー、あるだけ全部持ってくるよ」



エルーと共に倉庫へ移動して台車に箱5つ乗せて庭に運ぶ。



「んじゃ組み立てだな」


『私も手伝うわ』


『…ん、私も』



アニー達と一緒にコンロを雑巾で拭いて綺麗にしながら組み立てる。



『そういえば…最近火の精霊のミイリちゃんと創造主が会ったって聞いたんだけど…』


『…言ってた』



作業も終わりにさしかかった頃にニーナが思い出したかのように聞いてきた。



「火の精霊?最近そんなのと会ったかな…?」


『マスターからはそう聞いたわよ?』


『ミイリからも…そう聞いた』



うーん…火の精霊ねぇ……って言っても天界には最近行ってないし、この前行った時も聖域までは行ってないしな。



この世界で精霊に会ったってんなら覚えてるハズだけど………



「おーい、コッチは終わったぞー」


「コッチももうすぐ終わりだよー」



火の精霊ねぇ…うーむぅ……



「どこで会ったか聞いた?」


『この世界の屋内って』


「屋内?じゃあ覚えてるハズなんだけど…」



屋内ねぇ…火の精霊…屋内…最近…火の精霊…屋内…最近………あ!



思い出した!あの貴族の坊ちゃんの使い魔だったアレか!?



「もしかして使い魔の?」


『…確か、今は』



あ、じゃあ会ってるわ…すっかり忘れてた。



「準備完了!それでは点火しまーす!」



もう日が暮れ辺りが暗くなったぐらいに準備が終わった。



研究員が集まる中、ショコラは細長い形のコンロにマッチを擦って火を点ける。



エルーにやってもらえばいいのに…なんでわざわざマッチを使うのか。



結局マッチでは火力がいまいちだったのかエルーが無詠唱で火力を調整した。



俺は十分に熱を帯びた網に次々と食材を乗せて焼いていく。



実はコンロの中の一つには蓋が付いていて煙で燻製のようにも出来る。



「ココでメインの食材の登場だよ!」



マキナがホテルの厨房などにありそうな料理を乗せる手押し車を押しながら近づいて来た。



上にはクロッシュと呼ばれる鉄製で丸型の蓋みたいなのが乗っている。



…あの料理番組や漫画とかで使用してる料理に覆い被せてる銀色のアレね。



「ジャーン!」



得意げに擬音を口で言ってクロッシュを持ち上げた。



…俺には皿の上にただの四角い生肉が乗ってるようにしか見えないんだが。

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