19

「で?何で今更協力なんて求めるんだ?」



単身防衛省に戻って来た俺は式部と一緒にパーティー会場を抜け出して階段の所に移動した。



もちろんテンプレな事が起こらないように気を張り巡らせてる。



「実は最近…黒に彼氏が出来るかもしれない、という噂を耳にしてな」


「ふーん、別に彼氏を作る作らないは個人の勝手だろ…つーか24にもなって彼氏がいないってのが恥ずかしいとか思ってるんじゃないか?」


「そうだが…他の奴に取られる前に黒を手に入れたいのだ」



…コイツが本気で式使のお姉さんLOVEなのは分かるが…



気の引き方がえらく間違ってるんだよなー。



常に女を模した式神はべらせて、ヒマさえあれば式神とヤって…それで好きな女の気を引こうだなんて笑止千万だろ。



しかも元々式使のお姉さんと初めてヤった時に痛くしないように、と式神で練習した所…かなりどっぷりハマったらしい。






それこそ依存症だか中毒者レベルで。



「手に入れたいって言われても…肉体関係を結ぶ手伝いぐらいなら簡単にできるけどさ」



あーでも式使のお姉さんの初めては式部が貰ったって…俺がまだ15だか16だかの時に聞いた気がする。



その事を報告するためだけにわざわざ港で待ち伏せしてたような事が記憶にあるようなないような。



酒飲まして酔わせて雰囲気で押したんだっけ?



まあソレは置いといて、初めてを貰ったんならその流れでセフレぐらいにはなれると思うんだけど。



だから手伝いもクソもないと思われ。




うーん…と頭を捻ってると式部が俺の肩をミシミシ音が鳴りそうなぐらいに掴む。




「それは真か!?」


「は?」


「ソレは真かと聞いている!あの黒と…肉体関係が…!」


「ちょ…!お……こ、ら…!」



かなり興奮してるのか俺の両肩をガクガク激しく揺さぶる。



「や…めろ!バカ!」


「おぐっ!?」



俺は揺さぶられた勢いを利用しての頭突きを食らわせた。



見事狙い通り額に当たり、予想外の攻撃だったのか式部は仰け反る。



「っつ~!」


「興奮し過ぎなんだよ、一旦冷静になりやがれ」



額を押さえてしゃがんでるのを見てため息を吐きながら言う。



「つーかお前、式使のお姉さんとセフレとかの関係じゃねえの?」


「違う、俺達の関係は今でもただの幼馴染みだ…」


「処女貰ったんだろ?その流れでイケたんじゃね?」


「アレは黒の中では失態の内にカウントされてる出来事らしく…しばらくの間、顔も会わせてくれなんだ」



くれなんだ、て…くれなかった。って意味か?



言葉の流れからして多分そうだよな?



「だったら会った時にヤれば良かったじゃねえか、二度目からは痛みが少ないんだからよ」


「そんな事して…万が一にも黒には嫌われたくない」



…なんだコイツ、ヘタレか。



「式神と色々ヤってる時点でもう半分以上嫌われてると思うけど」


「完全にじゃなけばソレでいい」


「どのみち半分以上嫌われてるんだから最初にセフレにするために襲えば良かったじゃねえか」


「そうだな…言うとおりだ」



かなり凹んだように床を殴る。



「つーか話が逸れてるような気がするが…お前は結局なに?セフレにしたいの?彼女にしたいの?」


「…できれば彼女が…いや!セフレも捨てがたい!だが…!」



うおおー!と頭を抱えて悩む式部を呆れたように見てたら誰かが俺の警戒網に引っかかった。



…はぁ…テンプレ的なアレだな、式使のお姉さんがコッチに向かって歩いて来てやがる。



噂をすれば影っつー事か。



「おい式部、式使のお姉さんが来るぞ」


「なに!?くそ…早く決めねば…!」


「何しに来たのー?」



俺は階段を下りながら式使のお姉さんに質問した。



「あんさんは…遠間のお兄さん?あんさんこそ、ココで何を…?」


「式部の野郎がさぁ、式使のお姉さんの事を今も変わらず好きみたいで…ずーっとその話を聞いてた」


「赤が…?…どうせ身体目的でしょうなぁ」



少し考えた後に何かを思い出したのかため息混じりに答える。



「まあソレもあるかもね、式使のお姉さんは式部の事嫌い?」


「…嫌いではありまへんけど…身体目当て、と言うのは気に食わないですなぁ」


「なんで?自分の身体に自信が無いから?見た感じイイ身体してると思うけど…」


「あて…私は男のヤれればイイ、と言う考えが嫌いなんですわぁ」



笑顔ながらも目だけは笑っておらず、睨むように俺を見た。



「本質を見られて無いから…的な?ソレだったら式部は丁度良いんじゃない?アイツ式使のお姉さんの顔も身体も性格も全てが好きだ!って豪語してるし」



ちらっと斜め上の階段を見ると式部が力強く親指を立てている。

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