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「あんさんのソレはほんまですかぁ?赤に無理やり言わされてるのと違いません?」


「なんで俺が式部ごときに無理やり言わされるんだよ…」



明らかに疑うような質問にため息を吐きながら返す。



「ぶっちゃけさぁ…昔からウザかったんだよね、式部の奴」


「その気持ちよぉ分かりますわぁ…」


「式使のお姉さんのココが良いだの、顔も良いだの、性格も良いだの…んな見た事も無い人の話をされてもだろ、と思ってた」


「赤がそんな事を…//」



式使のお姉さんはちょっと顔を赤らめて手で口元を覆う。



「つーワケだ式部!今もう告白しちまえ!」


「!?あ、赤がそこに…!?じゃあ今の会話…!…きゃ!」



俺は階段を下り焦ってる式使のお姉さんを持ち上げて式部の所に連れて行く。



「な…!え、はあ!?」



どうやら式部もパニックに陥ってるようだ。



…なんだろうこの無駄な恋愛劇は…



式部と式使のお姉さんに貸しを作るため、とは言えなんかアレやわ~。



「ち、ちょっと待て!急に告白と言われてもだな…!」


「どうせ近い内に告る予定だったんだろ?だったら早いか遅いかの違いじゃねえか」


「そうだが…!心の準備と言うものがあるだろう!」



…こいつバカだ。



しかも救いようの無いバカ。



お前の目の前の式使のお姉さんだって突然の事で心の準備が出来てねぇんだよ。



お互い心の準備が不十分…そんな中でお前が情けない姿を見せたらどうなると思う?



「…赤…あんた…幻滅やわぁ…」



俺の予想通り式使のお姉さんは式部の情けない姿に愛想を尽かしてスタスタと階段を下りて行く。



「式部よ、チャンスってのはいつでも突然だ…そのチャンスをモノに出来ないようじゃ終わってるぞ」



呆れたようにため息を吐いて式使のお姉さんを追いかける。



一応できる限りの協力はした、後は式部の問題だろう。



「あんさん…なんでついてきてはるんですかぁ?」



一定の距離から付かず離れずで後をつけてると歩いたままため息混じりに聞いてきた。



「え?ほっとけないから?」



シレッと半分くらい嘘な言葉で返す。



「…何がしたくてあんな事を?」



式使のお姉さんはしばらく無言で歩いた後に歩みを止めて振り返る。



「式部に協力して欲しいって言われたから貸しを作るのも良いかな?って…ソレに今のお姉さんだったら俺でも落とせそうだし」


「何をバカな事を…」


「多少なりとも傷付いてるっしょ?見た感じ軽く両思いっぽかったよ」



俺は呆れたように返した式使のお姉さんに少しずつ近づきながら笑いかけて言う。



「そんな事ありまへんなぁ」


「くくっ、心を隠すのが…消すのが下手だねぇ、まあ可愛いから良いんだけど」


「…あんさんはいったいあてのなにが分かるというはるんですか?」



ちょっと動揺したのか、言葉使いが乱れたような気がした。



「何も?俺は読心術が使えるワケじゃないからさっき会ったばかりの人の心の中なんて読めない」



もちろんお姉さんの人柄も考えも性格も…何も知らないよ?と言って人差し指で式使のお姉さんの顎を上げる。



「何を…!」


「お姉さんの事は何も知らないけど、こういう状況下での人の考えや行動は大体分かるんだよね」



小説、漫画、ドラマ…どれに置いてもほとんどの人が同じ行動、言動、思考をするんだから…



この人も多分例外じゃないだろう。



俺はワケが分からないって感じの顔をしてるお姉さんにチューした。










…ほっぺにだけどね。



「イヤっ!」



突然こんな事をしたら当然突き飛ばされるワケで。



とは言え一歩後退しただけだけど。



「あんさん…今自分が何したか…!」


「分かってるよ?当然じゃん、だからほっぺにチューしたんだよ」



本気で落とす気だったら口に直接してるし。



「な…!なんでそんな…」


「俺がシたかった、ってのもあるけど…まあ別の理由」



コレでおそらく式部のさっきの悪印象は消えただろう。



俺が親切にも悪印象を上書きしてあげたんでな。



「別の…?」


「それにしても式使のお姉さんは中々常識人だねぇ」



小説のヒロイン?的なのだったら思いっきりビンタするか、殺す!とか言って武器を振り回すのが基本なのに。



ああ、アレは主人公が相手じゃないと起こらないイベントだっけ?



…どっちでもいっか。



「…あんさんが何が言いたいのか全く分かりかねますなぁ」


「電波キャラ+不思議キャラだからな」



普通の人にはおおよそ理解出来ないだろうよ。

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