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「き、君!」


「いつでもいーっすよぉ」



審判?の言葉を全く聞かずに、くあぁ…とあくびしながら投げるのを待つ。



「…ふざけやがって!」



投手が怒ったように叫ぶとモーションに入り第1球を投げる。



「ほいっと」



俺がソレを打つと全く音が鳴らずにボールはバックスクリーンの更に上…天井にぶつかった。



「「は…??」」



このドームにいたみんなが何が起きたかを理解できずにいたと思う。



まあテニスのような振り方に似てるかな?



それでボールとバットがぶつかった瞬間に腰の動きと腕をほんのちょっと戻して、衝撃を吸収し…それから腰と腕を動かし手首の力で吹っ飛ばす。



結果、ぶつかった瞬間になるはずの音が鳴らずに吹っ飛んで行ったわけだ。



「コレがホームランってやつ?」



コンコン…と客席に転がったボールを見て審判に聞く。



「ほ、ホームラン!!」


「「「「う…うわあああ!!!」」」」



審判?が手を上げて言うとうっせえぐらいの大歓声が。



「た、たまたまだ!今のは出会い頭だ!」


「じゃあ本気で投げれば?」


「プロの本気を見て後悔するなよ!」























結果、5球全部音も鳴らずにバックスクリーン上の天井にぶつかった。



「な…なぜ…!」


「いや、遅すぎるからじゃね?」


「なんだと…!?」



俺の鍛え抜かれた動体視力を持ってすればゆっくり迫って来てるだけにしか見えないんだが…



球の回転も普通に見えるからどこに曲がるかも分かるし。



「ご…5球全てホームラン…!」



審判?も捕手も驚きのあまりバックスクリーンを凝視している。



「所詮は遊びか」


「お兄ちゃんすごーい!!」



バットを元あった場所に置いてベンチに向かうと愛梨が抱きついて来た。



「コレって景品は全部貰えるのか?」


「いや、ホームラン賞を5個だけじゃない?」


「ふーん…」


「あ、おい!!」



ベンチから出ようとしたところでなんか派手な格好のおっさんが出てきて道を塞ぐ。



「お前か!?あの田井から全球ホームランを打ったという化物は!?」


「名前は知らんけど多分」


「信じられん…!MAX157kmで多彩な変化球を投げる大型ルーキーだぞ!」



え?たった157km?…どうりで遅いわけだぜ。



「?なんか用ですか?」


「注目を集める前に逃げたいんだが」


「ちょっと、付き合ってくれないか?」


「ヤダよ、景品を貰わないといけないし」



おっさんの言葉に藍架がキッパリと断った。



「じょ、条件次第では景品を全てやる!それに更に追加しよう!」


「やったー!お兄ちゃん行こー!」


「…俺に選択権無しかよ」


「こっちだ」



愛梨にグイグイ引っ張られるまま、おっさんの後をついて行く。



「ココは…室内練習室?」


「最近ブルペンとして作った部屋だ、ココである人物と対戦してもらう」


「ある人物?」


「…誰っすか、そいつら?」



なんかマウンド的な所で投げ込みしてた一人の男がこっちを向いた。



「キャー!潮崎選手だー!すごーい!本物!?」


「うそ!あのアイドル野球選手の潮崎昌士!?本物!?」



愛梨と藍架は嬉しそうな悲鳴をあげて男の方に走って行く。



「あ、握手してもらってもよろしいですか!?」


「愛梨!…あのできれば私も…!」


「喜んで。…にしてもすごくレベルの高い女の子達っすね」


「お前にはあの男と勝負してもらいたい」



爽やかなイケメンスマイルで藍架達と握手してた男がおっさんに促され俺を見た。



イケメン死ね!!!と内心絶叫に近いほど叫んでるが、ポーカーフェースなため外面は変わらない。

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