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「お姉ちゃん早くー」


「愛梨早いよ~」



翌日…翌日?



家に着いたのが深夜1時だったから正確には6時間後、だな。



そんな朝早くから愛梨が、遊びに行こう!と寝てる藍架を起こした。



…短い悲鳴が聞こえて見に行ったら、藍架が愛梨を脱がしてる場面だったのには驚いたが。



たまに寝ぼけて?ヤるらしい…けど、まだ本番的なアレまではいってないんだと。



いつもは愛梨の服を全部脱がした所で藍架は目を覚ますってさ。



流石はシスター・百合・コンプレックス予備軍だよ。



そろそろ予備軍から卒業してモノホンになるんじゃねえか?と心配でならないぞ…



まあ女の子同士ならまだ男同士よりは見た目的に大分マシだけども。



愛梨は藍架に襲われても特に気にしないらしい…そっちの気があるわけでもないのに。



妹は俺に似て心が広い方なのか。



因みに俺は寝ずに無名と斧を手入れしてたため今は眠くてしょうがない。



「今日は東ドで野球のイベントがやってるんだって!」



…東京にある野球ドームの事を今は『東ド』って略してんだ。



「へぇ、野球ねぇ」



一応ルールは知っているが見たことは無いな…



野球なんてこの国特有のスポーツみたいなモンだし。



「そう言えば他の国にはスポーツとかあるの?」


「あると言えばあるが…まあ卓球やバレーに近い室内球技だけかな」



外には魔物や魔獣が居るんだから大っぴらにスポーツなんて出来るわけねえだろ。



…言わないけどさ。



「そうなんだ…」


「昼間だけでも平和なのはこの国ぐらいだよ」



一部地域を除いたら、の話だけど。



そんなこんなで雑談しながら電車に乗って移動し、それから更に歩く事1時間35分。



何かしらのイベントがやってるという野球ドームに到着した。



「なんのイベントをやってるんだ?」


「現役の投手からヒットを打ったら景品が貰えるらしいの !」


「へー…何が貰えるの?」


「んーと…サイン入りの色紙やボール、バットにユニフォームとかだったかな?」



サイン入りねぇ…そんなん貰って嬉しいか?



俺は野球選手とか全然知らんから欲しくもなんともねえ。



きゃっきゃはしゃぐ二人を後ろからボケー…と眺めながらついていく。



あ、剣は竹刀を入れる細長いバッグに入れて担いでるよ?



小箱に入れても良かったんだけど…いざと言う時にはこの方が早いかな?って。



「ほら!もうやってるよ!」


「うわ!土井選手だ!中島選手もいる!」



…藍架って結構ミーハーだったんだ。



愛梨と一緒に盛り上がってる藍架を見ながら壁に背凭れる。



「ん?そのバッグ…もしかして君も野球をやってるのかい?」


「あ?やった事ねえよ」


「またまた!バットを持参するなんて気合いが入ってるねー!受付はこっちだよ!」


「…まあいいか」



おっさんに腕を捕まれ引っ張られるがままについて行く。



「いた、お兄ちゃんも参加するの?」


「なりゆきでな」


「やるからにはホームランをかっ飛ばしてよ」


「野球初体験なんだぞ?出来たらな」



ベンチに腰掛けて投手から投げられるボールを見た。



変化球っつーのがあるんだっけ?左右と下、斜め下か。



「愛梨、球種の名前は分かるか?」


「え?大体は…」


「じゃあ知ってるだけ教えてくれ」


「分かった」



自分の順番が来るまで投手の球を見て、愛梨に球種を教えてもらう。



「次は…消次さーん!消えるに次と書いて、しょうじさーん!」


「あ、俺だ」


「…雑な偽名」


「別にいいじゃねえか」



愛梨にバッグを渡して、ネクストバッターサークルっつったっけ?に落ちてる金属バットを拾った。



「5球勝負ね、景品は…」


「あー…はい」



審判?の言葉を受け流し俺はダルそうにバッターサークルに立つ。



まるでヤンキーのように右手で持ったバットを肩に乗せ、左手をポケットに入れたまま。

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