27
「あ、起きた?」
目を覚ますとどアップな愛梨の顔が。
「…愛梨?お前危ないぞ…?」
内心少し驚きはしたが、上半身を勢い良く起こすと愛梨が危険だ!と瞬時に判断したため首だけ動かした。
「大丈夫、それより…何があったの?帰って来た時びっくりしたよ」
廊下には大量の血を流したお兄ちゃんが倒れてるし、お姉ちゃんは鼻歌混じりに包丁を洗ってたんだよ?と可愛らしく首を傾げる。
どうやら、俺が刺されて直ぐに帰宅したみたいだな。
…藍架が俺を刺してるタイミングで帰って来なくてよかった。
「藍架には聞いてないのか?」
「ん~…敵討ちとか、自分の仕事をしただけだ、って言ってた」
藍架も立派な忍者になったもんだ、私情を挟まず任務を遂行!の心構えをしっかり守ってやがる。
「お兄ちゃんを本部に連れてって解剖する、って聞いた時は耳を疑ったよ」
…マジか、愛梨があのタイミングで帰って来てなかったら…俺は今頃解剖台の上で目を覚ましてた、って事?
「…もしかして愛梨が庇ってくれたのか?」
「うん、妖怪とかは良く分からないけど…お兄ちゃんが悪者だとは思えないからダメ!って」
…ぐすっ、俺も良い妹を持ったもんだぜ。
「それで藍架は引き下がったのか?」
軽く泣きそうになりながらも必死に堪えて愛梨に聞く。
「お姉ちゃんは私に甘いから、上目遣いでお願い…って言ったら好きにしろって」
藍架はシスター・百合・コンプレックスの気があるからな…
近い将来愛梨が藍架に食べられないか心配だぜ。
「…なんにせよ助かった、ありがとう」
なんだろう、コレ…助けられた奴が助けた奴を好きになるパターンって兄妹でも可能?
命を助けられた、ってワケじゃないが解剖とか研究されるのは愛梨のおかげで回避できたわけで…
少なくとも俺の情報が相手の手に渡らなかったのはかなりありがたい事だ。
……コレは愛梨を女だと見て欲情しても良いパターンか?
助けられたんだから好きになっても仕方ないよな?
「愛梨、俺はお前を妹としてじゃなく女として好きになりそうだよ」
「…それは困るなぁ」
愛梨はちょっと目を伏せてぽりぽりと頬を掻く。
「1割の冗談はさて置き…今は何時だ?」
「1割!?って事は9割は本気なのお兄ちゃん!?」
ナイスツッコミをした愛梨を尻目に上半身を起こして時計を探した。
「ココは…二階の空き部屋か?」
「うん、お兄ちゃんの部屋だよ」
…何も無いのに俺の部屋なのか?昔はベットの一つぐらいはあったんだが。
因みに今は布団に横たわっている。
「…外が暗い」
「んーとね、今は21時39分だよ」
「だいたい5時間ぐらい寝てたのか」
体調に問題は無いし、寝てる間に毒はすっかり治ったみたいだな。
「そういえば廊下の血はどうした?」
「…聞かない方がいいと思う」
「?まあいいから話してみろよ」
「お姉ちゃんが…雑巾で拭いて、バケツに絞って、寝てるお兄ちゃんの口にロートを差し込んで全部飲ませてた」
…藍架め、なんて過激な事を…!確かに貧血にはならずに済むけども!
「知らぬが仏ってワケか…別に気にしないけど」
流した血のほとんどが戻ってきたと思えば…うん。
「あ、そういえば明日はヒマ?」
「…残念な事に俺は放浪ニートと言うやつでな、忙しい方が珍しいんだ」
「良かった!じゃあお姉ちゃんと一緒に遊びに行こう!」
「藍架も一緒に…?」
今日普通に包丁で刺されただけに、ちょっと躊躇うぞ。
「え?だって二人っきりはちょっと…恥ずかしいかな、って」
「違う違う…二人っきりになりたいんじゃなくて命を狙われないかが心配なんだよ」
可能性は極僅かではあるが…もしかしたら愛梨を人質にして俺を殺そうとするかも。
ソレか、他の忍者が愛梨を人質にするとか。
…まあそんな事をしたら藍架がぶち切れるだろうな。
あいつも結構、自分はイイけど他の人はダメ!って考えを持ってる性格だし。
…俺は仕方ないとしても愛梨は巻き込みたくねえ。
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