16
「程人、何してるの?」
「湯船に浸かってるんだよ、見たら分かるだろ」
「そこは普通、気をきかせて私の身体を洗うべきじゃない?」
「そうなのか?」
しまったな…じゃあ自分で洗わなければ良かった。
そしたら藍架に洗ってもらえたかもしれないのに。
「しゃーねえな…じゃあ洗ってやるよ」
ザバーと湯船から出て、お風呂用のちっちゃいイスに座ってる藍架の後ろに回る。
「にしても細く引き締まった身体だなー」
「……ありがとう?」
いつものごとく、風呂には湯気が充満してるため…
視聴者には例のごとく大事な所は湯気で隠れて見えないかもな。
だって仕方なくね?個室にお湯だぜ?
窓を開けても湯気で充満するのは当たり前だろ。
深夜だからな…一応汗もかいてるし、水で入るにはちょっとアレなんだよ。
藍架の髪をワシャワシャ洗いながら、アニメや漫画の風呂シーンについて考える。
「ん…なんでこんなに髪を洗うの上手いの?美容師みたい」
「あ?まあ女友達?的な奴らと風呂に入ったり、よく風呂に入れてるからな」
「チッ…リア充め…」
「ん~…確かにこうして美人なネーチャンと一緒に風呂入ってるから充実してるかも」
何もリア充って彼女やセフレがいる奴を指してる言葉じゃないし。
本人が、リアルが充実してる。と思えばソレでもうリア充の仲間入りだろ。
まあ逆に彼女やセフレがいるからってそれでリア充確定!ってわけじゃないと思うけど。
つーか…リア充の定義ってなに?
日々が楽しければそれでリア充?
「ちょっと、そんな丁寧にリンスしなくても…」
女にモテて仕事がバリバリ出来ても、日々が楽しくなければリア充じゃない系?
…世の中にはそんな奴もいるんだから人間ってホントに色々な意味で多種多様だよね。
はぁ…と溜息を吐きながらシャワーでリンスを流す。
「次は身体だな」
脱衣所からタオルを取って髪が落ちないように頭に巻く。
「この手慣れてる様子の手際の良さがムカつく」
「俺だって女にモテるために頑張ってるんだよ」
今の所はあんまり実を結んでないけどな…と悲しく呟いた。
「…もしかしてまだ彼女いないの?」
「年齢=彼女いない歴で悪かったな、ちくしょうめ」
「あれ?昔彼女いらない。って言ってなかったっけ」
「あれは、付き合うぐらいなら結婚する。って意味で言ったんだよ」
「じゃあ別に悔しがる必要なくない?」
確かにそうだけども。
頭では分かっているんだが、なぜかそんな感情が生まれてきてしまうんだよなー…
不思議ダナー、なんでカナー。
「ほら、股開け」
「なんか言い方がいかがわしい」
「どうせ誰にでも股開く淫乱女だろ?」
「違う!バカにするな!」
下半身を洗いながら茶化してると後頭部で頭突きされた。
それも結構な勢いで。
一応顎でガード?したが中々に強い一撃だ…
もしかして怒らせてしまったかな?
「ゴメンゴメン、いやもう非処女だったからつい…」
「…もしかして覚えてない?」
「?何が?」
「覚えてないんならいいよ、いずれ思い出す日がくる事を祈る」
よく分からない事を言いながら、藍架は俺にもたれるようにして背中を預ける。
「??まあいいや」
桶で湯船からお湯を掬い藍架の身体のボディソープを流していく。
「よし、これでいいだろう」
「ありがとう」
「おお、お礼を言うんだな」
「一応は」
そのあと一緒に湯船に入り、しばらく無言でお湯に浸かっていた。
「…あれ?藍架、なんか顔赤くね?」
「お湯が熱くて、ちょっと逆上せたかも…」
これ熱いか?大体42℃ぐらいだと思うけど…
「じゃあもう上がるか」
藍架をお姫様抱っこして湯船から出て、ぬるいお湯のシャワーを身体にかけながら徐々に温度を下げていく。
そしてバスタオルで髪と身体を拭いて服を着せた。
…やべ、俺の服無いじゃん……仕方ない、藍架が寝たら影移動で魔王城から服を取ってくるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます