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「うおおお…!!!」


「うるせぇな…あんまり吠えると喉から掻っ捌くぞ」



切鬼は静かにしてるっつーのに。



…てかヤバくね?雑魚達の身体が治ってまた近づいて来てるんだけど…



あー…しゃあねえ。



俺はブンブン振り回してる剣を鞘に納める。



「ふほっ!」



笑う潰女を無視して小箱から斧を取り出す。



「じゃあな!」



身体が治りかけてる潰女と切鬼に思いっきり斧を振り下ろし地面ごと砕いた。



…ふん、さすがにソレ以上は再生すまいて。



妖怪と言えど生物、身体がグチャグチャになれば再生もできんだろう。



俺は女の子?達に迫り来る雑魚を斧で蹴散らす。



はぁ…回復能力がある雑魚ほど厄介なもんはねえな。



一体だけならまだしも多数だもんな~。



やっぱり人間と違うから戦い方も変えた方が良いか。



「いくぜ!」



とりあえず斧を振り回し横に真っ二つにしていく。



そして左手で剣を抜き、二刀流でバッサバッサと雑魚共を斬り裂いた。



「はぁ~…疲れた…」



妖怪は悪魔同様血も涙も無い生物で倒されたら文字通り消えて無くなる。



武器が血で汚れないので楽なのだ。



とは言え俺みたいな例外も居るんだが。



剣を鞘に納めて斧を小箱にしまい女の子?の所に歩く。



「君、危なかったね~…大丈夫?」


「あ、はい!ありがとうございます!」



女の子はスッと立ち上がり律儀に頭を下げてお礼を言う。



「え…?あんた…!」



頭を上げて俺の顔を見た瞬間…女の子?の顔が変わった。



「程人!お前…!」



急に俺の名を叫んで刀を抜刀一閃、斬りかかってくる。



「あれ!?良く見たら藍架じゃん!なんでこんな所に!?」


「あんた…いや、貴様こそ!なぜ…なぜだ、程人!」



鋭い太刀筋で襲ってくる刀を余裕でひょいひょい避ける。



「なぜって…俺も知らねえよ、ってかこの国に戻ってくる気なんて無かったんだよ」


「そうか…だけど、この国の決まりは知っているな?」



目の前の俺の姉、藍架は心を閉ざしたように冷たい声になった。



「いやいや…だから、なんで藍架が妖怪と戦ってんだよ!」



忍者でも無いはずのただの一般人がなんで妖怪と戦ってんの?



「忍者だからに決まってるでしょ」


「ええ!?いつから!?なんで!?マジで!?」



迫り来る刀を余裕で避けながらも驚く事しか出来ない俺。



「10歳の頃からで、私にはお前に無い才能があったからよ!」



口調が忍者のそれから藍架のそれに戻りつつある。



「マジかよ…!よくもまああんな苦しい修行に耐えたな!」


「え?私は才能があるって言われたから普通の人と内容が違ったけど?」


「!!??」



衝撃の事実!



忍者になるための修行って才能がある奴と無い奴では内容が違うのか!?



「私は基礎トレとコレを効率良く使えるためのトレーニングだけだった」



藍架はコレ、と刀を返す形で手首にある数珠のような物を見せる。



…アレは…!霊峰富士でしか採れないとされる魔力の宿る石じゃないか!



使える人が数少ないため、今はただのアクセサリーとしてしか使われないやつ。



いいなぁ…魔力無しでも魔術…いや、この国では忍術か。



ソレが使えるっていう。



「くそっ!やっぱり藍架は母似だったのか!」



美人で才能に恵まれたあの母の血を濃く受け継いでやがる…!



…そうか、だから俺は…



平凡で執念以外なんの取り柄もなかったらしい父の血を濃く受け継いでるからこんななのか。



「お喋りはここまでだ!妖怪は滅するのみ!例え元肉親であろうと例外は無い!」



そう叫んで距離を取ると刀の構えを変える。



「忍法、火車輪」


「うおっ!?」



藍架が刀を振ると凄いスピードで火のついたチャクラムのような物が飛んできた。



俺は驚きながらもひょいっと最小限の動きで避ける。



「避けられたか…ならば!忍法、火炎大蛇」



ザクっとアスファルトに刀を刺すと火柱が上がり蛇のような形になって俺に襲いかかってきた。



「へぇ…火遁ってやつ?」


「バカにするな、逃げ隠れするための遁走術じゃない…妖怪を滅するための忍法だ!」


「まあ確かに…火遁とか水遁って本当は火の中に入ったり、水の中に入って隠れるための技だからな」



どこぞの漫画は……おっと!非難するのは止めておこう。



それより避難するのが先だ…なんちゃって。



と言うか言葉の受け取り方は人それぞれだから何も言えねえよな…

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