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「とりあえず逃げるか…」


「えっ?」



人目のある所で影移動を使えるわけも無く、少年の呟きを無視してただ適当に歩きだす。



「どこ行くの?」


「ユニオンに帰るんだよ」


「え!?ユニオンから来たの!?」



ついてくる少年に適当にあしらい歩くスピードを上げる。



「待ってよ!行商人以外で国外に出るのって大変なんだよ!?」


「知ってる」


「それに…このまま街に出たら銃刀法違反で捕まっちゃうよ?」



小走りでついてくる少年を鬱陶しいと思いながらも更に早足で歩く。



この国が異国と呼ばれる最大の所以…



それはこの世界から隔離されているような、そんな国だからだ。



文明は周りを置き去りにするぐらい発達し、軍隊以外は武器を持つことを許されない。



妖怪を抜いた表向きではかなり平和な国なのだ。



異国の小説風に言えば現代の日本…といった所か。



車は普通に道路を走り、小型無線機ではスマートフォンと呼ばれるケータイが存在する。



馬車は観光用にしか存在せず、家庭用電話機も普通に売られていて、陽がある時間帯は妖怪がいない。



スポーツも盛んでサッカーや野球、バスケと呼ばれる球技があるらしい。



更にギルドが存在せず、サラリーマンという謎の職業が…



サラリー…給料、マン…男。



給料男…?



さておき、文明がかなり発展してるだけに法律がかなり厳しい。



なんでも…車社会だから交通法規と呼ばれる法律があり、他人とかを一発殴っただけですぐに捕まるとの事。



海外旅行は禁止され、行商人以外はこの国に出入り出来ない法律もある。



俺は『妖怪を狩るために必要だ』と認定されたから、ユニオン兵士養成学校に入れた。



まあ俺の産まれ育った…一応故郷だから今更説明するまでも無いけどさ。



因みに宇宙に打ち上げた75個の人工衛星の内、20個は異国が打ち上げたそうだ。



その人工衛星により妖怪の出現場所が特定できるようになり、色々と被害が減ったんだと。



なんでも…妖怪が日本国内に現れると即座に反応し、本部に伝わるらしい。



あ、俺は例外だから。



今は能力も力も抑えてるから衛星には反応しないし。



「ねえ、どこ行くの?ねえってば!」


「うっせえ、男は俺に構うな」


「男!?僕を男として見てくれるの!?」


「ああ?女なのか?」



俺の早足にもはや走るようにしてついてくる少年を振り返る。



「違うよ!ちっちゃいけど付いてるし!」


「じゃあ話しかけんな、俺は女は大好きだが男は別に好きじゃねえんだよ」



とりたてて嫌いってわけでもないが…野郎はどうでもいい。



もはや好きとか嫌いとかの次元じゃない。



ふたなりは嫌いだけど。



あんなのを見る奴の気がしれねぇ。



女の子はアレが付いてないから女なんだよ!



アレが付いてる女なんてグレーだろ。



俺はグレーだのブラックだのに手は出さん。



ホワイトこそ正義!



「お兄さん…変わってるね」


「ああ?」


「ひっ…!ごめんなさい!」



少年の言葉にイラついたように睨むと怯えたように顔を隠した。



「だ、だって…今までの人は俺を性奴隷としてしか扱わなかったから…」


「…世の中には顔が可愛けりゃ男でも構わない奴もいっぱいいるからな」



身も蓋も無い言い方になるが…世の中は顔が全て。



結局ブスやブサイクとヤった所で薬を使わない限りは達せないだろ?



普通の女が薬無しでブサイクな男とヤって本当に達せるか?



普通の男が薬無しでブスな女とヤって本当に達せるか?



…まあでもブスやブサイクってのも人の価値観によるものだからこの表現はどうかと思うが…



俺の語彙力ではブスやブサイクじゃないと分かりやすく伝えられないんだ、許してくれ。



さておき、人間が本能的に快感を感じるのは五感全てだ。



女の匂い、肌の感触、アレとアレとアレの舌触り、女の喘ぎ声…



そして女の顔。



…目を瞑るってのはナシで。



だって目を瞑ったら視界の代わりに別の感覚が研ぎ澄まれんじゃん。



主に聴覚と嗅覚が。



実際に目隠しした状態で性フェロモンを嗅がしたり良い声の喘ぎ声を聞かせたらどうなるか?



おっと、当然椅子や台に拘束した状態でな。



結果は…鞭で強く叩いても達する、だ。



男女問わずね。



要は視覚を封じたら痛みでもなんでも…とりあえず刺激を与えれば達するんだよ。



だから薬や目を瞑るはナシで、ブスやブサイクとヤって達するか否か。



答えは否だ。



まあ俺が実験した結果だから世の中には例外もいるかもね。



だが例外を除いたら、否だ。

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