37
「はァ…報酬がパーになル」
「しょうがなくね?」
「おい、お前…抑制剤はどこにある?」
言わないとこいつに使うぞ?と明らかにバカみたいな事をほざいた。
「ん?これから死ぬ奴に教えた所で無意味だろ」
「ふん、弱そうな見た目でずいぶん強」
男は最後まで言い切る事なく消える。
いや、消えたと言うのは正確じゃないな。
両腕を残して…急に、突然、何の前触れも無く、喋ってる最中にペチャンコに潰れた。
元男がいた地面には何かが落ちてきたのか、球体状に凹んだ跡がある。
「「「「は???」」」」
俺を含めてその場に居た全員が状況を飲み込めずにいると、向こう側…包帯グルグル男の後ろ側から絶世の美女が歩いて来た。
「ここか…探した」
「…ああ!やっと分かった!」
絶世の美女の顔を確認すると同時に俺は状況を、今起きた事をやっと把握する。
重力で押し潰したのか!
どうりで一瞬で消えたように見えたワケだ。
「な、何ガ…?」
混乱してるみんなを他所に俺は包帯グルグル男の近くに寄り血が噴き出した腕を掴む。
「バンダナ、ホイよ」
「あ?あ、ああ…ハ?」
俺が投げた新型の注射器を受け取るもまだ混乱が解けてないようだ。
「久しぶりだなー…でも、もうちょっと待ってくれないか?」
「アレは潰して良かった?」
「ああ、めっちゃ助かった」
「ちゃんと状況を見て判断したつもりだけど…間違えてなくて安心」
まさかの天界の女神、大地神ガイアがこんな所に降臨するっていう。
銀髪ロングで絶世の美女。
大地に関する魔法を操り、その実力は天界の中でも5本の指に数えられる。
クロノスと結婚してるらしいが一度も同居した事が無いんだと。
クロノスが昔俺に愚痴ってた。
俺はポーチから紙とペンを取り出してバンダナの背中で地図と名前を書く。
「ゴメン、俺にはまだやる事があるからこの場所で待っててくれるか?」
「私を待たせる?…なんて悪いヒト」
「頼むよ…誰かにこの紙見せたら分かると思うからさ」
「分かった、必ず来て」
女神ガイアは俺が差し出した紙を渋々受け取って歩いて行った。
「おイ、未だに頭の収拾ガつかなイんだガ」
「あー、なんて説明したものかな…」
まさかこんな場面でこんな場所に大地神が来るなんて誰が予想できる?
…しかもこいつら、神を目撃できて生きてるとか…人間の中では超稀じゃね?
多分確率にしたら百億分の一ぐらいだぜ?
かと言って神と説明しても信じないだろうし…賢者あたりだったらいいか。
「アレは賢者の一人だよ、超美人だろ?」
「あア、今まで見たどんナ女性よリも美しかったヨ」
「どうやら俺に用があったらしく、まあ助けてくれた?っぽい」
賢者である事以外の嘘はついてないからソレでいっか。
「あ、とりあえずお前の目的は無事達成できたな」
アレを取り返せるのって、確率的には7%ぐらいしかなかったんだぜ?
まあ何が起こるか分からないのが現実だけども。
確率ってのも所詮は分かりやすく伝えるための目安にすぎないし。
「なんか釈然としナいんだガ…」
「俺も同じ気分だ」
「デ、こいつラどうすル?」
「どうするって帰ってもらうしかないんじゃね?」
男が消えた瞬間を見たんだ、俺と戦う気なんてないだろ。
「そうカ」
「なあ、お前らももう故郷に帰るだろ?」
「え…あ、え?」
「俺を追い回してもいいんだけど…あの男みたく一瞬で死ぬよ?」
だってアレをした奴が近くにいるんだぜ?
一応あの技を説明をすると…人差し指を男に向けてクイっと下ろすように曲げただけだと思う。
力を抑えてたのかは分からないけど、この世界にいる以上は力を抑えて貰わないと困る。
多分だけど、意思を持ってちょっと力を入れた攻撃をしたらこの世界の街一つなんて軽く消し飛ぶよ?
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