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ただでさえ研究員は力が弱いのに…更に女の子だぜ。



着くまでに他の人に迷惑かけそうで怖いわ。



「やっぱり俺が運ぶよ…他の人達に迷惑かかったらアレだし」


「…すみません、やっぱりお願いします」


「代わりにコレ持って」



スーパーの袋を渡してよっこいしょ…と一番下のダンボールケースを持つ。



「「「!!?」」」


「うそ…」



おっとっと…中々バランスを取るのが難しいな。



しかも下手したら底が抜けるかもしれん、力の入れ具合にも気を使わないと。



店内にいる人達が俺に注目して驚いている。



やっぱり飲み物のダンボールケースを8つも持ってると目立つよなぁ。



「さっさと行こうか」


「「「あ、はい!」」」



写真とか取られる前に逃げねば…と早足で店から出て研究員に向かう。



腕を限界まで下げて腰の少し下辺りで持ってるとはいえ…



俺の頭を超してるためスーパーから出る際にはしゃがんで摺り足だ。



そうしないとドアにぶつかってしまう。



そして俺はあまり前が見えないため、女子研究員に先導してもらって早足で歩く事20分。



やっと研究所に着いた。



「んで、どの部屋に置けばいい?」


「すみません、休憩室までお願いします」


「はいよ」



こっちです!という言葉についていくように歩く。



「…うわっ!?…誰だ…?」



部屋から出てきた人が俺…というか積まれたダンボールケースが歩いてるのを見て驚いたように声を上げる。



「あ?その声…エルーか?」


「なんだテイトか、手伝うぞ」



エルーは上半分のダンボールケースをヒョイっと持ってくれた。



「あの、重くないんですか…?」


「ん?まあ少しは重いかな」



ダンボールケース4つを軽やかに取ったエルーに女子研究員が質問した。



ソレをなんともないかのように普通に返す。



「まあここにいる女の子よりは重いけどな」


「違いない」


「あ、あのそれほど軽くもないですよ?」


「絶対軽いって」


「きゃ!」



俺はダンボールケースを右手で持ち上げて左手で女子研究員を抱えるように持ち上げる。



「やっぱりあんたの方が大分軽い」


「なんでウチの研究員にセクハラしてるのかしら?」


「セクハラじゃない、ただ持ち上げただけだ」



女子研究員を下ろすと後ろから冷たい声が聞こえてきた。



…まあいるのは気配で分かってたけど。



「ソレをセクハラって言うのよ」


「女の子に触ったらセクハラとか…差別じゃねえか?」



その考え方でいくと男は女の子に何もできないぞ?



「女が嫌がる事をしたらセクハラでしょ」


「珍しくお前がバカみたいな事を言ってるな…まあ間違ってはないけど」


「元々セクハラ…セクシャルハラスメントは労働、教育の場で性的な嫌がらせをする事だぞ?今は労働の場では無い」


「エルーのに補足すると、女性に対して女性が望んでない性的な意味合いを持つ行為を男性がする事、だけどね」



どこからかマキナがやってきて輪の中に入り始めた。



「待て待て、じゃあ女性が望んでる事以外の…性別に関わる事をしたらセクハラか!?」


「そういう事になるわね」


「…男は学校や仕事の時にどう女性に接すればいいんだ?」



下手したら軽い挨拶でさえセクハラで訴えられるって事か!?



やあ、今日も可愛いね。とか、彼氏いるの?とか、スカート寒くない?とかもセクハラか?



男が女性に触ったとして、女性が望んでなかったらセクハラ?



転びそうになった時とか不意に触っただけで!?



「男女一緒に仕事とかできなくね?」


「そうだな…一緒に教育を受ける事も難しいな」


「なんで?普通にしとけばいいじゃん」


「そうよ」



俺とエルーの言葉に女性陣は理解できない。といった顔をする。



「お前ら男に性的な会話を抜きにして喋れるか?」


「性的ってのは性別に関わるアレコレもだぞ?」


「つまりは『男』と言う単語を使った…いやその意味が含まれた言葉が禁止されるんだぞ?」


「無理ね」



男なんだから!とか言えないし、男のクセに!とかカッコイイ!とかも禁止だぜ?



男なら女に可愛いとかの褒め言葉を使えないし、まず上手く喋れないから絶対に男女仲良くなれない。



「そんな気をつかうぐらいなら…と女性は社会進出できないんじゃないか?」


「そだなー、俺が偉い立場だとして…訴えられるぐらいならそもそも雇わない」



そんな面倒の種を誰が好き好んで抱えようか。



女性を守るための法律は同時に女性を社会から疎外するって事にもなりかねん。

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