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「~!き、さ、ま…!あれだけの事をしておいて!忘れたとは言わせんぞ!!」


「おっと」



俺の言葉にプツンとキレたのかいきなり斬りかかって来た。



テーブルに乗るようにして余裕で避けるとその先で女の子が薙刀を振り下ろす。



「おお」


「…!?」



ピョンとバックステップでジャンプするようにテーブルから下りると、ベンチとテーブルが真っ二つに斬られた。



「あーあ…器物損壊罪になるぞっと」


「黙れ!貴様を殺せれば安いものだ!」


「まあ俺を殺せたとしても殺人罪には問われないだろうよ」



身元的には既に死んでるし今は人間じゃねえからな。



殺した所で罪になんてなるわけない。



俺は法律に守られないが、縛られる事もねえ。



既に死んでる人間を裁ける法律なんてこの世には存在しないんだから。



万が一捕まったとしても直ぐに出れるさ。



怒りを露わにして俺に斬りかかってくる男と女の子の攻撃を避けながらとりあえず逃げる。



だって周りには子供とか一般人が多いんだもの。



「ちょこまかと…!鬱陶しいんだよ!」


「うおっと」



この二人は怒りで周りが見えてないのか子供や一般人など御構い無し!といった様子で攻撃してくる。



「…アレ、いくよ…!」


「分かった!」



女の子が男に薙刀を渡して剣を受け取り、ジャンプして薙刀の刃先に乗った。



「…ヤベ!」



テンプレートと言うべきか…俺の走ってる先には一人の子供。



「くらえ!」


「マジかよ…バカじゃねえの」


「うわあ!」


「…!?」



俺がヒョイっと避けたせいでもの凄いスピードで飛んできた女の子は子供に剣を突き刺す、という結果に…



「…くっそ、おらあ!」



ならなかった。



女の子が横を通り過ぎた時に足首を掴んでぶん回すように男の方に投げる。



「てっ」


「うお!」


「きゃ!」



無理な体勢で無理やりやったためバランスを崩して倒れたが…男と女の子もお互いにぶつかり合って倒れた。



ぶつかったのを見てラッキー!と思いながら立ち上がる。



「く…!待て!」


「…逃がさない…!」


「待つのはお前らだ!」


「あんた達…周りを見なさい!」



後ろから追いついてきた他のハンター達が立ち上がって走ろうとする男女の肩を掴んだ。



周りの一般人達がザワザワと騒ぎながら集まってくる。



「いやー、君たちハデにやり過ぎたね」



無抵抗の男を追い回して子供を剣で刺しかけた…という状況を見てた周りの人達はどう思うかな?



「貴様ー!!」


「お前のボキャブラリーはそれだけしかないのか?」



俺に斬りかかろうとした男を他の仲間が羽交い締めにした。



「…おっと、そろそろ警察か治安部隊が来るか…じゃあな」


「待て!くそ、離せ!誰が逃がすか!離せー!!」



ボソッと呟いて軽く手を振ると男が暴れ出す。



それを尻目に集まって来た野次馬に紛れながら公園を出て研究所に向かう。



ん~…このまま研究所に向かって居場所がバレたら面倒な事になりそうだ。



つーかあいつら誰だよ。



所構わずいきなり襲いかかって来やがって。



…しょうがねぇ、研究所じゃなく適当な宿屋で時間潰すか。



途中で行き先を変えて一旦スーパーに寄る。



飲み物と食べ物、観光雑誌の商業大陸マップをカゴに入れてレジに並ぶ。



「あ、村さん」


「ん?あー、その格好…研究所の研究員?」


「はい、買い出しですか?」



ちょうどと言うのか?同じレジの後ろに女子研究員が3名並んでいる。



最近は研究員達も馴染んできたのか普通に俺に話しかけるようになった。



呼び方は村人Bだったり、ソレをもじったような感じ。



「まあそんなとこかな…ってソレ、全部買って運ぶの?」



二つのカートに飲み物のダンボールケースが複数積まれていて、全部で8つある。



「え?あ、はい…いつもは男の人が買い出ししてくれるんですけど…」


「今日に限って風邪をひいたり、研究が最終段階に入って手を離せなかったりで…私達が代わりに」


「あ、一応台車を持ってきてるので大丈夫ですよ?」



台車って…一台だけじゃねえか。



缶やペットボトルのダンボールケースの重さを甘くみるなよ。



8つでも100kgを軽く超える重さだぞ…女の子だけで運べるわけないだろ。



あー…見て知ってしまった以上は手伝わないといけないよな…



ここでそのまま去ったら紳士として、いや…男として失格だろうし。



「はぁ…運ぶの手伝うよ」


「え!?いえいえ、私達だけで大丈夫ですよ」


「そうか?」



とりあえず会計を済ませて台車に乗せるのを手伝う。



「ありがとうございます…うっ!」


「どうしたの…?…んっ!」


「ええ?二人掛かりでも?」



女の子三人がかりで台車を押すがフラフラしてて危なっかしい。

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