21

そのあとかなり珍しくマキナとショコラが言い争ってたんだが…



俺は激しい自己嫌悪に陥ってる最中だったため内容は聞いてない。



なんか結構ヒートアップしててもうすぐで喧嘩になりそうだったって。



途中でエルーが止めに入ったらしいけど。



はぁ、妖怪になってから今までで理性が負けた事なんてなかったのに…



まさかの幼馴染を衝動的に襲うっていう。



つーか…


同じベットに

顔が可愛く

細いわりに巨乳な女の子が

全裸で

無防備な寝顔を見せながら

ギュッと抱き付いてた




そんなパーフェクトな状況で襲わない男なんてこの世の中に存在すると思うのか!?



…分かってるさ、ただの言い訳だって事ぐらい…俺だって分かってるさ…!



でも…!だが…!しかし…!



俺だって…俺だって男なんだ!!



まあ…うん。



でもアレであいつらが考えを改めてくれてたら良かったんだけどね…



ソレを期待した俺がバカだった。



…ってアレ?いつの間にかエルーがいなくなってる。



研究所に戻ったのか?



野郎の事なんてどうでもいいか、飲み物でも買ってこよう。



俺は公園から離れて近くのスーパーに寄る。



「バウ!バウ!」


「ん?なんだ?うるせえ犬だな」



飲み物を買って公園に向かってると一匹の犬が俺に向かって吠え出した。



「バウバウ!バウ!」



尻尾を振ってるわけじゃないのにずっと吠えながら俺についてくる。



…珍しいな、普通の動物なら本能的に恐れてなのか近寄ってこないのに。



こっちから近づくと凄い勢いで逃げてくし。



「シッ、うるせえからあっち行け」



犬を追い払おうと手を振るが一向に離れない。



「いたぞ!」

「こっちだ!」



犬の鳴き声を聞いてか数人の男女が走ってきた。



「バウバウ!」


「え…?」


「まさか…だろ?」



近づいてきた数人の男女は俺を見て不思議そうな顔になる。



「あのすいません…あー、と口を開けてもらってもよろしいですか?」


「は?」


「牙はない…人違いだ」


「すみません!ウチの犬がご迷惑をおかけしました!」



よく分からんが、女の人は犬の首輪を掴んで頭を下げた。



「バウバウ!」


「ちょっと静かにしてろ」


「クゥーン…」



男が犬の鼻先に手を置くと吠えるのを止めて静かになる。



「まさか人違いだなんて…おかしいな」


「違う土地だから感覚が狂っちゃったのかな?」



ヤベー、こいつらってまさか…ヴァンパイアハンター?



「もしかしてハンターの人達?」


「え!?なぜソレを?」


「あー、やっぱり…もしかしたら俺にヴァンパイアの返り血が付いてたのかな?」



とりあえず口からでまかせでも言ってお帰り願おうかな。



「君は一体…?」


「そこの公園で話しましょうか」



いつもの公園を指差して移動した。



いつものベンチの所ではなく、人目につきやすい公園の真ん中にある木のテーブルの所で歩くのを止める。



4つのベンチが木のテーブルを囲むように設置されていて、俺はその一つに座った。



「単刀直入に言えば、もうこの大陸にヴァンパイアはいないです」


「え?」


「なぜソレが分かるんだ?」


「なんでって…退治したからに決まってるでしょ」



それ以外にあると思う?とバカにしたように聞き返す。



「退治しただと?」


「君が?一体どうやって…」


「罠を仕掛けてちょちょいと」


「罠?」


「遅くなってすまない」



男が聞き返すとどこからか新手の男女が走ってきた。



「…!?」


「貴様は…!」



誰だか確認しようと振り向くと俺の顔を見た男女が目を見開いて驚く。



そして少し後ろに下がり剣と薙刀を手にして臨戦態勢を取った。



「一体何を…」


「今すぐそいつから離れろ!!」


「まさか…こんな所で会えるとは…!」


「誰?」



剣を抜いて構えた男は命令するように叫ぶ。



「待て、一旦落ち着け」


「落ち着けだと!?この状況で落ち着いてられるか!」


「その顔…!絶対に忘れない…!」


「…俺と面識あったっけ?」



うーん…顔を見ても全く思い出せない。

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