08

「言いたい事は分かるけど…」


「ホントに分かるか?ヴァンパイアが元人間って事が一番恐ろしいんだ、なんせこの世界の生き物のなきゃで最も残酷なのは人間なんだからな」



噛んだ…大事な所で、シリアスな所で噛んだ!



『中で』を『なきゃで』って言ってしまった…!



「ちょっと」


「ゴメン、噛んだ」


「せっかくシリアスな雰囲気で決めてたのにね」


「…返す言葉もございません」



なんも言えねえ…!な雰囲気な中、女の子が挙手した。



「なんだ?」


「えーと、私の親友は取り戻せるのでしょうか?」


「難しい質問ね…人間としてはほぼ不可能だわ」


「中身と外見は変わらないけど、ヴァンパイアのままだね」


「それってつまり…」



ちょっと考えて女の子が言い淀む。



「ヴァンパイアである事を隠し通す自信があるなら、今まで通りの生活を送る事は可能だ」



ヴァンパイアである事を曝け出すなら…今まで通りの生活は無理になる。



「でもまあ…周りの人が認めてくれるなら、普通の人となんら変わらない生活はできるが」



ほぼ不可能だろうけど…みんながみんな強いわけじゃない。



心も身体も。



弱い奴が一人いるだけで平穏な日々は無理になる。



「それでも取り戻すかい?」


「…少し、考える時間を下さい」


「いいぜ…良く考えろよ」



女の子はトボトボと公園の外に歩いて行った。



「実際どうなの?」


「…難しいだろうな、無理やりだったとは言え人間の輪からはみ出たんだ」


「…人間社会で暮らすには厳しい、かな」


「それも周りの人達次第だろ」



人間の心は醜く汚い。



自分を脅かすものは徹底的に排除したがる。



相手がなんであろうと受け入れる、なんて美しく綺麗な心を持つ人間は突然変異体と同じく何億分の1人しかいないだろう。



俺もショコラもリザリーもエルーもマキナもエリアもハルトも…醜く汚い心を持つ大多数の内の1人に過ぎないけどな。



「…もし、馴染めなかったら…」


「ヴァンパイア達の所に行くんじゃないか?」



同族だったらハーフでもなんでも受け入れるらしいし。



魔物は阻害、迫害する人間達とは違うからな。



「…言い返せないけど、その言い方はないんじゃないの?」


「ん?他の言い方があるのか?」


「でも…ヴァンパイア達は本当に受け入れてくれるかな?」


「心配には及ばねえよ、子孫を残し次世代に繋げるための本能があるんだから喜んで受け入れてくれるさ」



もし懸念があるとすれば一つ…



人間に復讐するために攻めてくるんじゃないか?って点だ。



「復讐…」


「俺たち人間は自らの首を絞めるのが大好きな種族だからな、ありえない事ではないだろ」



おいおい、エルーよ…笑いながら笑えねえ内容を喋るんじゃねえ。



つーかそれ、ただのドMじゃねえか!



「復讐なんて何が楽しいんだかねぇ」



俺には理解できないが。



「みんな程人君みたいな考えだったら戦争が減るかもよ?」


「その分一回一回の戦争はかなり激しいと思うけど」


「ま、お前らに聞いた所でやられたら殺り返す派だからな…俺の求める答えは得られんか」


「当たり前でしょ、やられっぱなしのままじゃただの負け犬よ」



リザリーの言葉が俺の心にグサッと刺さる。



「お前はなぜやり返さないんだ?」


「なぜって…世の中は弱肉強食の理で回ってるんだ、弱い俺が悪いんだから仕方ないだろ?」


「…ドM」



ボソッとマキナが呟いた言葉も俺の心にグサグサッと刺さった。



「いちいちやられた事全部にやり返してたらキリがないだろ…強くなって立場を逆転させれば良い話だし」



因果応報、自業自得…結局は人にやったら自分に返ってくるって事だよね☆



「ソレって結局やりかえしてる事にならないか?」



エルーの言葉にシーン…と静かになる。

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