07

「手遅れ…?」


「うん」



俺はさっき思った事を伝える。



「そんな…!」


「どうする?諦める?」



うーん、ダレ○シャンに似てるなぁ…



まあ実際のヴァンパイアと空想上のヴァンパイアは全然違うけど。



「元に戻す方法は無いんですか!?」


「一つだけあるけど…ほぼ不可能だ」


「…その方法、聞かせて下さい!」


「そいつの血液が人一人分あれば元に戻るよ」



普通の人をヴァンパイア化させる方法は一つ。



そいつの血液を全て吸い取って、吸い取った血液を全て戻すだけ。



だからヴァンパイアから普通の人に戻すには逆の事をすればいい。



ヴァンパイア化した血液を全て抜いて普通の血液を入れる。



そうすれば普通の人間に戻る。



俺はソレを女の子にそのまま伝えた。



ついでにベンチの裏で聞き耳を立ててる三人にも聞こえるように音量を上げて喋った。



「当然輸血で足りる量じゃないし、他の血液をそれだけ入れるとどんなに危険か分かるよな?」


「そ、んな…」


「ヴァンパイア化したらもう普通の人間には戻れない…やられた奴らはソレに絶望して自殺するか、そのままヴァンパイアとして生きるかの究極の選択を迫られる」



俺がベンチの背もたれの部分を蹴るとビクッと驚きエルーだけが尻餅を着いた。



「お前ら何してんだよ」


「あ、あはは…バレてた?」



ため息混じりに問うと、マキナが笑いながら立ち上がる。



「だから三人で行ったらバレると言ったでしょう?」


「完全に気配は消してたハズなのに…」



そのあとリザリーが呆れたように立ち上がりエルーを引っ張り起こした。



「それより…今の話はホント?」


「嘘言ってどうする」


「…伝染病や感染病、ウイルスの類いじゃないならワクチンは作れないし無意味ね」


「ウイルスだけで身体の仕組みが変われば世話ねえな」



そんな簡単に強くなれるんなら世の中全員ヴァンパイアになってるわ。



「まあ普通に過ごす分には問題ないけどな」


「え…?」


「世の中の人達はヴァンパイアを誤解してんだよ」


「どういう事…?」



俺の言うことを理解できない。と言う風な顔をしている。



「人の血を吸わないと生きていけない、って事はありえないんだよ」


「でも…」


「人の血を吸うのは栄養失調だからだ、要は食料不足だな」



兵糧攻めってーの?周りの人間達が森の動植物を奪うから、足りない栄養を補うためにしょうがなく血を吸ってるって感じ。



もちろん人間の血と一緒に栄養や生気を吸い取れるから、吸血の方が手っ取り早く合理的なんだけど。



「じゃあ普段はどうやって栄養を?」


「普通の人間と同じ物を食べてるに決まってんだろ」



中には当然変わり者も居て、人間の血を大好きになって人間ばっか襲う奴もいるが…



「そんな頭のネジが外れてる奴以外は普通の人間となんら変わらない」



ただ牙が生えて身体能力が人並み超えているってだけだ。



「よく表現される吸血衝動ってのはとどのつまり空腹の行き過ぎなんだよ」


「と言う事は…ちゃんとご飯を食べさせてれば害は無いのね?」


「人間と一緒だ、っつってんだろ」



害の有る無しなんて分かるけぇ。



それは人間性…いや、ヴァンパイア性の問題だろ。



「ふーん…ヴァンパイアのメカニズムって意外と人間と変わらないんだね」


「ヴァンパイア化して変わるのは人体の構造の二割だけだ」


「…つまり、ヴァンパイアが恐れられてるのは周りの人間たちの被害妄想から成るものだったのね」


「…まあお前らは強いからそう言えるんだよ、強者は弱者の立場にはなれないからな」



元…じゃないか今も弱者の俺にはヴァンパイア共を恐れた人達の気持ちは良く分かるぜ。



自分より強い者が近くにいるって事はいつ標的にされるか分からないって事だ。



強者の気分次第で弱者は消えるんだからたまったもんじゃねえ。



日々死の恐怖に怯えながらビクビクと暮らしていくなんて考えただけでも恐ろしい。

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