06

結局なにが言いたかったのかというと……






ただの負け惜しみです、はい。



俺に女の子から積極的に接触してくる、なんて事が無いし…迫られるのは肉体関係のみ。



しかも愛だなんだのの感情は一切無し。



打算に満ちた考えのみ。



つまりは、ただの道具。のようなもの。



人間扱いどころか生物扱いさえしてもらえない。



羨ましい?俺のこの状況は羨ましい?



セフレよりも格下の…女の子に性欲処理、もしくはただ子孫のために遺伝子が欲しいってだけの…



打算に満ちた考えで肉体関係を迫られる俺の状況が羨ましい?



まあ童貞からしたらそうだろうな。



…俺も童貞だけど。



手っ取り早くそうなりたきゃ、夜の技術を磨くか優秀になればいいんだよ。



努力して学力、権力、筋力のいずれかを手に入れれば女の子に振り向かれるようになるはず。



ぶっちゃけ夜の営みは技術さえあれば女を虜に出来る。



童貞の俺が言うんだから間違いない。



ふっ…童貞なのに何十人も女を堕とした事がある。と言う悲しさ…



…ぐすっ……なんで俺まだ童貞なんだろ。



…そしてなんでこんな悲しい気持ちになるんだろう。



最近、涙腺が緩くなってきたのかな?目から水が出そうなんだけど。



ベンチに寝っ転がって腕で目を覆う。



「はあ…はあ…良かった…!まだいた…!」



こっちまで走って来たのか、先ほどの女の子が息を切らしながら俺を見て安堵する。



「んあ?…さっきの…なんだ?まだ用があるのか?」


「はあ…はあ…!…は、い」



必死に息を整えながら返事をした。



「はあ…あ、の…」


「あー…焦らなくていいからとりあえず息を整えようか」



俺はベンチに座り直し女の子を気遣うように言う。



「はあ…はあ…ふぅ………あの、なります」


「は?」


「私、あなたの性奴隷になります…だから助けて下さい!」



う、うっそーん…マジで?え?こいつ性奴隷の意味は理解してるの?



「えーと…性奴隷の意味、分かってる?」


「はい、ただの性欲処理のための肉べん…」

「ストップ!いや、分かってるならいいから、声に出さないで!」



女の子は顔を赤らめながら意を決したように言う。



俺はそれを慌てて言葉の途中で遮った。



なんでそこまで分かってて了承するんだよ…



もしかして頭のネジが何本か外れてたりする?



それかドMとか?調教願望、強姦願望あり…?



うわー、俺が提案したとは言えヒくわー。



「お願いします!なんでもするんで親友を助けて下さい!」


「…まあ、うん…そこまで覚悟してるんならいいけどさ」



まさかだろ、この件に関わる気なんて全然皆無だったのに。



…これなに?女の子助けたら俺がただのゲス野郎になるって事?



助ける見返りに身体を差し出せって最低のクズじゃねえか。



…そして俺がそうなるの?



……まあいいや、考えるだけ無駄だ。



終わった後にゆっくり考えよう。



「で?俺に何をしろと?」


「攫われた親友を助けて欲しいんです」


「攫われた?」


「はい…どうやら攫ったのはヴァンパイアとかいうものらしいんですけど」



来ました、やっぱりヴァンパイア関連。



「ふーん」


「あの!ホントなんです!決してからかってるわけじゃなくて!」


「分かってるよ、ソレとはあんまり関わりたくなかったんだけどねー」


「え?」


「なんでもない、こっちの話」



俺は手をひらひらと振ってベンチから立ち上がる。



「攫われたのはいつ?」


「えーと…一昨日ぐらいです」


「あ、もう手遅れだ」



そんなに時間が経ってるならとっくにヴァンパイア化してるか吸われて死んでるかのどっちかだろう。

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