第九期
01
三人揃って感謝の言葉を告げられ、俺は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
「は?待て待て、なんかの終了フラグか?」
「…なワケないでしょ…あんた死ぬの?」
「日頃の感謝を口に出しただけだよ……なんか照れるね///」
「そうだな、我ながらキャラに合わない事をしてしまった」
リザリーは呆れたようにため息を吐き、マキナとエルーは照れたように顔を逸らす。
「エルー…!お前…!」
俺はエルーに近づき、感極まったような…とても感動したぜ!的な声を出して右肩に手を置く。
「すっげぇ気持ち悪いんだけど」
そのあとにすぐ害虫を見るような目でかなり冷めた声で吐き捨てるように言う。
「は?」「「え?」」
俺の一連の行動の流れを見てたリザリーとマキナが素で驚いて固まる。
エルーに至っては状況を把握出来てないようなマヌケな声が出てた。
「はっはっは!どうだ驚いたか?」
俺はしてやったり!とドヤ顔でエルーから離れソファに座る。
「え、えーと…え?」
「???どういう事?」
「 …確かに。男にこんな事を言われても気持ち悪いだけだな」
困惑して?マークを浮かべてるマキナ達に対し、エルーがいち早く状況を把握した。
「お前らの望んでるようなBLな雰囲気になんてなるわけないだろ」
「「 ……あ!」」
「逆ドッキリ…に近い事をされたな」
実際はドッキリではないから逆ドッキリってワケでもないんだけど。
「してやられたわね」
「そうだね~」
悔しそうな顔をして二人は俺を挟むように座る。
「…なぜ挟むように座るんだ?」
「エルー」
「はいよ……悪いな」
エルーが部屋から出たと思うとガチャ、と鍵がかけられたような音が聞こえた。
あ!あの野郎!俺を見捨てやがったな!マジで使えねえ無能め!!
「ビッチの本気を見せてあげるわ」
「起きてる程人君だったら何分持つかな?」
リザリーに頬を指で撫でられ、マキナは舌舐めずりをする。
「いや、遠慮しとく…ビッチの本気なんて見たくない」
「遠慮しなくてもいいのよ?天国を見せてあ・げ・る」
「止めろ!ズボンを掴むな!」
ズボンにかけた手を掴んで制した。
「なんで?気持ち良くなりたいでしょ?」
「なりたいけど、女主導ってのが嫌だ」
「なぜ?リードされた方が楽でしょ」
「まあな、でも」
「まさか…初めては処女がいい。なんて思ってないわよね?」
ジトーっと二人ともジト目で俺を見る。
…そんな顔も可愛いなんて卑怯だろ。
「悪いかよ、男の夢らしいじゃねえか」
俺は別にヤれるんなら処女でも非処女でもなんでもいいけど。
「あんたにもその、いかにも童貞!な考えとかあったのね…私には理解できないわ」
「同じく、処女は好きな男の人に捧げたい!って思ってる乙女な考えも理解できないよね」
「夢があっていいじゃねえか」
「残念ながら、夢は見るものでも叶えるものでもない…覚めるものよ」
「そして夢から現実に引き戻されて落胆や絶望する…程人君がよく言ってた事だよね?」
夢なんか見るよりも現実を見ろ!って笑ってたじゃん。と言いマキナは俺の首筋を甘噛みした。
「噛むな、舐めるな、反応する…しちまったじゃねえか…くそっ」
「童貞が処女とヤるって無謀だと思うのだけれど」
「そうそう、最初は痛いんだからホントは技術のある人とヤるのが一番だよ」
「お前らの時はどうだったんだよ」
耳元で囁くように語りかける二人を手で押しのけるようにして聞く。
「「痛かった」」
「普通の怪我とは違う痛みだったよね」
「ええ、私の場合はマキナとショコラに手伝ってもらったもの」
「私もリザリーもショコラに手伝ってもらったよ」
…それってつまり…!処女喪失中、更にレズプレイしてたって事!?
胸を弄ったりディープなアレしたりして痛みを和らげてたのか?
「あの痛みはちょっとね…」
「幸いあの時は痛みに慣れるまでは動かなかったけども…あの痛みの中動かれたらきっと辛いわよね」
「うん、動かないでって言っても動かれたら気持ちが冷めるかも」
「そんなに?」
「あんたもお尻に無理やり突っ込まれたら分かるわ」
リザリーはゾクッとするような冷たい声で囁く。
またしても俺の背筋に冷たいものが走った。
「分かりたくない!つーか掘られたくないわ!」
「えー?もうてお……じゃなくて、やっぱり?」
「当たり前だろ、俺にMLを押し付けるな」
「そのわりに用語には詳しいのね」
いやいや、半分お前らの所為じゃねえかよ!
「ML、通称メンズラブ…主に成人男性の同性愛の事を言う、BLのような未成年同士とは…」
「説明は要らねえから、俺を引きずり込もうとしないでくれ」
「もう腰の部分までどっぷりと浸かってると思うのだけれど?」
「大丈夫、肩まで浸かってなければまだ戻れる」
俺は遠い目をしながら自分に言い聞かせるように呟く。
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