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「その考えに突き当たったのは程人君と再会した時」
「あの魔札と魔石の研究を…自分がやった研究を全く覚えてない事に違和感を感じたわ」
「あんな事をして記憶に残らないわけがない」
「程人の性格的に、あの記憶を封印するなんてもっての他よ」
「心の無いドライな程人君にあれが嫌な…忘れ去りたい記憶に該当するとは思えないし」
なんか言い返してほしくてエルーを見ると、壁にもたれかかって腕を組み何かを考え込んでいるようだ。
…さっきもだが、今日は本当に役に立たないな。
「そこで考えついたのが抑圧」
「感情を押し込めるのなら、きっと記憶にも残りづらいはず」
「途中で思い出したのは多分…研究の中でも比較的面白くて興味を持ってたからだと思うわ」
「知識欲だけじゃなく、おそらく好奇心もあったから記憶の片隅で覚えてたんだと思うの」
「だから他の研究に比べて比較的印象的だったのは頑張れば思い出せるハズよ」
…確かに聞いてたら思い当たらない事もないが…
俺がそこまで考えて行動すると思うか?
そんなに頭は良くねぇぞ。
「結果、程人君の先読みは大当たり」
「程人が死んだすぐ後…私たちに残した研究が世間を騒がせたわ」
「そのおかげで私たちは手っ取り早く金と権力…おまけに地位と研究所まで手に入れる事ができた」
ここでやっとリザリーの人差し指が俺の口から離された。
「何度も言うが…買いかぶりすぎだ、俺はそこまで考えれるほど頭良くねぇし」
「程人君は自分を客観的に見過ぎだよ」
「ええ、過小評価とも言える自信の無さね」
「いつも言ってる『俺ならできる』とか『俺を誰だと思ってんだ?』 とかは虚勢…ホントは強がりなんだろ?」
ココで初めてエルーが口を挟んだ。
「自分で自分を追い込み後をなくしてやるしかない!と無理やり自信をつける」
「背水の陣とも言える一人SMの極み」
「…とりあえず頭が悪いと言いたいのか?」
「でも、程人君は自分で思ってるほど頭は悪くないよ?」
「客観的にみたら…総合的にみたら確かに平均よりは低いわ」
…平均より低いって明らかにバカって事じゃねえか!
言い方変えても結局はバカになるとか…
バカにすんなよ!!
「数値に表せば分かりやすいんじゃないか?」
「そうね…頭の回転の速度が35、思考能力が35、記憶力が30…計100がだいたい一般人の頭の良さの平均値としましょう」
「程人君は頭の回転の速度が90で」
高っ!確かに頭の回転は人よりも早いと思うけど。
「思考能力が30、記憶力が-30…計90ぐらいだと思うの」
…思考能力と記憶力でプラマイ0…
「つーかやっぱり平均より低いじゃねえかよー!!」
「でも、頭の回転は普通の約三倍近く早い計算よ」
「思考能力と合わせて120…記憶力を外したら普通よりもズバ抜けてると思わない?」
「…確かに…でも」
「そうだな、これは単純に分かりやすく数値に表した結果で、実際はどうだか分からない」
俺の言いたい事を先回りしてエルーに言われた。
「もしかしたら程人はもっと凄いかもしれない」
「流石にそれより下って事は考えにくいからね」
マキナが離れて今度はリザリーが絡みついてくる。
「テイトが死んで色々あった…言い方は悪いがお前が死んだおかげで俺たちは成長した」
「私は身近にいる人がどれだけ大切だったのかを知った」
「私はまだまだ思慮が浅く、無知だった事を知ったわ」
「俺は自分の無力さを…力不足を痛感した」
「ショコラもエリアもハルトもみんなも…程人が死んでからはかなり頑張っていた」
だろうな…エルーに至っては昔とは見違える程に強くなっている。
「程人君は良く、俺は主人公の器じゃないって言ってたけど…」
「確かにテイトは主人公にはなれないかもしれない」
「でも、あんたが居なければ私はマキナやショコラ、エルー達とこんなに仲良くなる事は無かったかもしれない」
「程人君が居たからこそ、私達はこうして知り合えたし、今のこの幸せを掴めたのかもしれない」
…確かにエルーやマキナ、リザリーにショコラは天才だけどなかなか個性的な人材だ。
普通に考えたら自然に友達になる確率は低いだろうし。
「主人公にはなれなくても、縁の下の力持ちとして無くてはならない存在の脇役かもしれないわね」
「まあモブキャラではない事は確かだな」
「うん!程人君の頑張りが…努力が私達を結びつけたんだよ」
「そうね…あそこまで頑張って努力してたんだもの」
…コレって貶されてるの褒められてるの?どっち?
主人公にはなれない…脇役がちょうどいい、モブではない。
凄い微妙な事しか言われてないんだけども。
どうしよう、反応に困るんだけど。
…え?これなんて言えば正解なの?
内心困惑してる俺をよそにリザリーとマキナがソファから立ち上がる。
「程人君のおかげで私達は知り合えて」
「程人のおかげで今の私達がある」
「お前のおかげで俺は心身共に強くなった」
「…いや、別にエルーのは俺、関係なくね?」
俺がいなくてもエルーは強くなっただろうし。
「とりあえず俺はテイトに色々感謝してんだよ」
男に感謝されてもな…女の子だったら嬉しいんだけど。
うなだれてため息を吐いた俺の後ろにいつの間にかエルーが来ている。
そして三人で顔を見合わせた。
「「「ていと、ありがとう」」」
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