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「たった数十人を殺して得た知識で何千、何万もの命が救われるんだ…さあどうする?」


「だ、騙されるな!!こいつの言うことは嘘だ!」

「そうだ!証拠を見せろ!」

「だからと言って我が子が殺された事実を無かった事にしろと!?」

「でも…もし本当だったら…」



ポツリと呟いた人の言葉で民衆達は静かになる。



「もし、俺の言ってる事が真実で、それでもお姫様を殺した奴は…近い将来犯罪者として扱われ迫害されるだろうな」



俺の言葉に大多数の人がビクッと肩を震わせた。



「俺はココで大々的に発表した!お前らもその事実を知っている、テレビのニュースで伝染病が世界中で猛威をふるってる。と報道された時…」



あのお姫様を殺して無かったら今頃ワクチンが完成してて、感染した人達は死ななかったんじゃないか?



もしあの時殺してなかったら…感染被害は最小で抑えられたんじゃないか?



拡声器を置いて普通の音量でみんなに語りかけるように喋る。



「それでも納得できないなら言い方を変えようか?数十人の尊い犠牲により、何千…何万人もの病人の命が助かった!それでどうだ?」


「…信じられんぞ!!このペテン師め!」

「そうだ!俺はそいつに妻は殺されたんだぞ!」


「じゃあこのお姫様をココで殺すか?」



肩に担いでいたお姫様の体がビクッと跳ねた。



「当たり前だ!罪には罰を!死刑だ!」

「そうだ!殺せ!」

「私の息子を殺したんだから死んで然るべきよ!」



飛んでくるヤジが最初の1/10以下にまで減っている。



おそらく今ヤジを飛ばしてるのが被害者の遺族or関係者なんだろう。



「そうか…多分お前らも近い将来同じ事を言われるハメになるぞ?」


「なに!?」

「そんなわけあるか!」

「ふざけるな!」


「例えば…今黙ってる奴らの身内がその伝染病で死んだらどうなると思う?」



お姫様を生かしておけば治るハズだった、死ぬはずのなかった伝染病で身内が死んだら…



やり場の無い怒りや憎しみの矛先が真っ先に向けられるのはお前らだぜ?



身内を殺されて、復讐を果たしたら、迫害される…ははっ、まさに踏んだり蹴ったりだな。



「「ぐ…!」」



黙っていた民衆はヤジを飛ばしていた人達を一斉に見た。



おそらく俺の言葉でその未来を想像したんだろう。



「おっと!これ以上は国民同士の仲間割れを防ぐために撤退させてもらうぜ?」



ほら、通せよ。と台の上から下りて歩く。



民衆が左右に避け、まるでモーゼのように俺の行く先の人波が割れる。



「誰が逃がすか!」



俺の前に数人が立ち塞がった。



「おいおい、人の話を聞いてなかったのか?このお姫様はさながら水爆の発射スイッチのようなもんだぜ?」



扱いを間違えれば何千、何万人の命が消えるんだ。



「そんなの…!納得出来るか!」

「ただの詭弁よ!」


「…そうだな、詭弁と言えば詭弁だ、だからなんだ?」


「悪は…裁かれなければならない!」

「断罪よ!」

「「断罪だ!」」



数人の人達が声を揃えて断罪!断罪!と叫ぶ。



「断罪ねぇ………あ!」



全く興味の欠片すら持ってない目で目の前の数人を見てると良いことを思いついた。



「じゃあこんなのはどうだ?数十人を殺した罪の償いに、何千…何万もの命を助ける研究を手伝わせる。ってのは」



俺はドヤ顔で目の前の人達に告げる。



「ほら、人道的で良い考えだろう?悪人が善人に早変わりじゃねえか」


「償いだと!?ならば首を斬れ!」


「ん~?お前らホント分かってねぇのな…こいつの命=超多数の人間の命だぞ?」


「だからなんだ!俺たちには関係ない!」


「そうか、じゃあ俺はみんなの命を守るために鬼にでもなるかな?」



無名を抜いて目の前の数人に突きつけた。



「な、なんだと…!どうせただの脅しだろ!」


「その言葉…後悔するなよ」



一番前にいる奴を横真っ二つして剣を鞘に納める。



そして呆然として目の前の状況が飲み込めてない人達をかき分けて広場から走って離れた。

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